ゲームのNPC少女はどうにかしてこの村から脱出したいのですが、他の村の人たちがそれを許してくれません...。
「ねえねえ!外に出ていい?」
「いいよ。だけどこの村から出ては行けないよ」
黄色い服にとんがった頭の子供がそう聞くとその子の母親はそう言う。子供は不思議そうに「どうして外に出てはいけないの??」と尋ねると外には危ないものがいっぱいあるからと説明される。それを聞いて子供はわかった!と元気よく返事した。
村と言っても小さめの村で家が8軒ほどしか建っていない小さなこの村でこの少年は日々を過ごしている。ここはゲームの世界でこの少女はいわゆるNPCという奴だ。「NPCが出るというのはおかしい」と言ってもおそらくわかってくれないだろう。なのでこう言うしかない。
「何して遊ぼうかなあ」
「おや、1人で遊んでいるのかい?」
「うん!!」
話しかけていた老人に元気よく返事をする。この老人はよく遊んでくれるこの子供にとって良い人なのだ。時々お菓子をくれたりする。老人はニコニコと笑顔を浮かべながら子供の方を見ている。
「よし、今日も飴をひとつあ...う。お母さんにはいわ...でよ?」
「え?」
何だかノイズのような音が聞こえてたまにこの老人が何を言っているのか聞き取れなかったが子供は気にしなかった。飴をもらい袋を開けると青い飴が入っていた。それを口に入れると甘さが広がってくる。子供は大満足しながらお礼を言った。
老人と別れると緑と赤の服の男の子達がかけ寄ってくる。この子達はよくこの子供と遊んでくれるのだ。
「おー何する??」
「鬼ごっこ!!!」
「ねえ、外って何があるの?」
子供が聞くが2人とも外に出たことは無いようで首を傾げる。
「さあ?」
「うーん、わからないな」
「行ってみようよ!」
「でも怒られるぞ」
この子供は一度出ようとしたことがあった。するとそれを阻止されとてつもない剣幕で叱られた。だが子供は怒られても「むしろそんなに怒るなたまにがあるのだろう??」という好奇心だけが湧いてくる。
子供は2人に外に行くと言い別れて出口に向かう。その出口は閉鎖されていて簡単には出ることができない。
「ちょっと!ちょっとちょっと!!」
その出口に向かっていたのをたまたま見ていた小太りのおばさんが子供の方へと駆け寄ってひょいと簡単に持ち上げるそして出ないようにと注意された。
「何で、でちゃいけないの??」
「それは....」
そう聞かれて口籠る。毎回そうだ。この子供がそう尋ねると危険がいっぱいだの何だのと誤魔化しなかなか教えてくれない。それはむしろこの子供の好奇心を刺激してしまう。
「えーいつもそうじゃん!!」
「とにかく!出ないことこと!いいねね??」
何だか声が一瞬二重になった気がしたが子供は気にせずつまらなそうに「はぁーい」とだけ返事をした。
その日の夜。子供はベッドから起き上がった。そしてドアを静かに開けるとギギ...と少し音が鳴ってしまった。周りを見渡すが気づかれてはないようだ。
「よし!」
子供はそう言いながら外に出た。真夜中というだけあって外は真っ暗で何も見えない。段々と見えてくるようになると勢いよく出口へと向かった。出口のフェンスに辿り着くと、外には誰もいないのを確認してそのフェンスをよじ登る。そして勢いよくジャンプをしてその先へと向かった。ここが村の外...一体どんなものが待っているのか。
期待しつつ歩き出すと突然視界が真っ暗になった。子供の姿は見えるので背景が真っ黒の世界に入り込んでしまったのだ。後ろを向くと先ほどまで居た自分の村が丸ごと消えている。何が何だかわからないでいると目の前に白衣の研究者風の男が近づいてきて子供を眠らせる。そして子供を抱き抱えてその黒い背景になっていた部屋の外に出た。
「また逃げたしたのか?」
「ああ。子供というのは好奇心旺盛で困るな。でもこのままでいいのか?本当の事を伝えなくて」
「もうこの子の村は無くなって家族も村人も全員死んだと言えるか?」
「それは...」
その質問をした研究員は口籠る。この子はまだ8歳というばかりでそんな現実を突きつけるのはあまりにも残酷だ。だったら今の仮想で創り上げた偽物の村と偽物の村人と一緒にいた方が幸せだろう。
「この子の村は少し前に青い流星で破壊され何も残っていない。だからこうやって実際に触れられるバーチャルな村を作って記憶を消して過ごさせているんじゃないか」
この村も人も全て機械から投影された偽物だ。だが触れたりすることができて普通ならば本物だと気づかれない程ので気になっている。それもこれも、先ほどの研究員が言っていた子供の村が無くなり行き場がなくなったからで、こうやって外に出てしまったこの子供の記憶を消してはもう一度投影した村に送り込んでいる。
「ああ、そうだったな」
「よし、またこの子の記憶を消してくれ。もう、この子に悲しい思いはさせたくないんだ。だからこそ、このバーチャル空間で、永遠に楽しく暮らしてほしいのだから...」




