5 戦闘開始
とうとうバトル展開になってしまった…
自信のない部分ですが、読める程度には昇華した(はず)。
ぜひ、最後までご覧ください。
「さて、と」
ジルはアンノウン共に向き合った。敵の数は十。隣のクリスタも臨戦態勢に入る。
「来るなら、容赦はしません」
普段アンノウンと共に過ごしているジルだが、意外にもこのアンノウンの群れに対して手加減する気はないようだ。自分達を襲おうとしているアンノウンに対しては敵対も仕方ないと割り切っているのだろうか。
さっそく向かってくる十体を前に両手を広げ、魔法陣を二つ生み出した。属性は光。
(ホーリーライト)
無詠唱で放たれた二つの光線は的確に標的の核を打ち抜いた。核を失ったアンノウンはもやが薄れ、灰のようにさらさらと散ってゆく。元が凶悪でなければ幻想的に思えるのかもしれない。
残り八体。
「どっせーい!」
クリスタが異形の腕を纏い、助走をつけて大きくジャンプをした。そしてその勢いのまま腕を振り下ろし、アンノウンを上から叩き潰した。地面にすさまじい衝撃が走り、びりびりと震える。そのまま襲い掛かってくるアンノウン二体の胸元を横なぎにえぐる。
残り五体。
「グルアア!」
「あ、やば!」
一瞬無防備になったところに腕を振り上げながら迫ってくるアンノウン。攻撃をくらうわけにもいかないので、バックステップで距離をとった。
「ジルねぇ、いま!」
「任せて」
アンノウンは仲間が一瞬で半分倒されたことなどまるで気にしていないかのように、後方に下がるクリスタを追いかけるが、ジルがアンノウンの頭上に魔法陣を出現させた。
(ホーリーレイン)
光の雨がアンノウンに降りかかる。怪物の存在を許さない範囲攻撃がアンノウンをハチの巣に変えてゆく。
それでも一体残ったが、クリスタが強力な一撃を浴びせにかかる。
「これでおわり!」
最後のアンノウンも上から押しつぶされた。勝者となったジルと異形の腕を解いたクリスタは無言でハイタッチをした。
するとタッタッタとこちらに走ってくる音が一つ聞こえてくる。
二人が音のする方向を向くと、ちょうどリザが門をくぐって通りに出てきたところだった。リザは二人を見つけると心配そうな表情をしながら駆け寄ってくる。
「何があったんです? マザーからは非常事態としか聞かされてなくて」
ジルはこの言葉に違和感があるのを感じた。なぜリザはここにいるのか。自分達の様子を見ようとしたのだろうか。しかしそれならば、マザーことマチルダがそれを許さないだろう。
ともかく、質問に答えようと地面に落ちているアンノウンの核を目線で示した。
「え? アン……ノウン? なんで」
「まだたくさん敵はいるでしょうね。ほら……まだ街中から喧噪が聞こえてくる」
「アンノウンが……そんなに?」
いつの間にかリザの様子がおかしくなっていた。目は濁り、何も映していないのかと思うほど。
「リザっち、どうしたの?」
クリスタの問いかけにも答えない。
「アンノウンは……殺さなきゃ」
唐突にそう言ったかとおもうとリザの左手が光り、収まった手元には透き通った青色の短剣が握られていた。その短剣には魔法陣が描かれており、魔道具だと簡単に予想される。
「リザちゃん!?」「りざっち!?」
リザに戦う気があるということよりも、唐突なリザの変化に戸惑ってしまう。しかし、そんな二人を置き去りにするかのように、
「まだ向こうにいる。殺ってやる、です」
そう言うが早いか地面を蹴り、一瞬で遠くまで駆けた。
残されたジルとクリスタは顔を見合わせるしかなかった。しかしやるべきことはただ一つ。
「追いかけましょう」
「うん」
結論から言えば、リザの戦闘能力はとても高いものだった。それを支えるは輝きを放つ短剣。この魔道具である短剣に備わっている魔法陣は「加速〈アクセル〉」。これにより、瞬時の移動速度を何倍にも引き上げることができ、敵を翻弄することができる。
「死ねよ、です」
機械のように、淡々と核を貫き続ける彼女。決して群れの中には入らず、外側からじわじわと敵の数を減らしていく。
敵が振るってくる腕を短剣で受け止め、即座に「加速」で背後に回り、そして貫く。バックステップしたかと思うといつの間にか懐に潜り込み、貫く。少女らしい小柄な肉体を活かしたヒットアンドアウェイの戦法にアンノウンはなすすべが無かった。
「まだまだ! 足りないですよ!」
あっという間に群れを殲滅した彼女は次の獲物を探しに駆ける。駆ける。
「リザっち、どっちに行ったのかな?」
「さあ……そろそろ合流したいわね」
リザを追いかけていたジル達だが、完全にリザを見失ってしまっていた。というのも、追いかけようとしているのにアンノウンに何度も遭遇するのだ。
「ホーリーライト! それにしても敵の数多すぎない? もしかすると数百はいるかもね」
「そんなの疲れちゃうよー」
クリスタがげんなりした顔をジルに向ける。前衛として連戦連戦で体を酷使しているので無理もない。もっとも、後衛で魔法を打ち続けるのも疲労が蓄積するはずなのだが、ジルにはそんなそぶりが見られなかった。
「まあ傭兵や騎士団も動き始めているからかなり楽になるよ、きっと。ほら」
と、ジルはあたりを見渡した。旅の途中だった傭兵や小規模ながら町に駐留している兵士達。だれもが町の人を守るため、アンノウンと戦っている。
「せっかくだから、被害は抑えてあげないとね」
劣勢になっていた兵士に相対するアンノウンに光線を打ちこみながら小さく呟くジル。その声は隣のクリスタに聞こえることなく空気に溶けて消えていく。
そんな戦場を大きく変える爆発が、突如響いた。正確にはそれと同時に、複数の人の悲鳴が聞こえてきた。おのずと二人の足はそこへと向かった。
そして、二人が見た光景。それは、倒れている兵士たちと、アンノウンを肥大化させた怪物だ。
次回、対中ボス。




