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4 孤児院



「ねえねえ、リザっちって呼んでもいい?」

「好きに呼んでいいです」 


 リザとクリスタが打ち解けている後ろでジルは考えこんでいた。リザはシスターの恰好をしているがシスターにしては幼い、ならばシスター見習いであるだろう、と予想がついた。シスター見習いというのは教会に孤児院が付随する形のときによく見られる制度のようなもので、年長(といっても10、11歳くらいだが)の孤児が引き受けるものだ。まあ、内職で忙しいシスターの代わりに年少者の世話をするだけで、勉強もしっかり受ける必要がある。だからこそスイーツ店にてあのような鎌かけをしたのだが。


「リザっち、10才なんだね。つまり私より3才も年下……よし、これからクリスお姉ちゃんとで呼んでくれたまえ」

 リザから年を聞いたクリスタは、どれほど姉と呼ばれてみたいと思っていたのか、そんなことを言い出す。お姉ちゃんというワードに反応してジルも思考を放棄してしまった。


それに対してリザはたどたどしくクリスタを呼んだ。

「えーと、クリスお姉ちゃん?」

 クリスお姉ちゃん、おねえちゃん、おねえちゃん……

「はぅぅぅ……響きが最高すぎる!」

「ふふっ、妹ぶんができてよかったね」

 一人悶えているクリスタを祝福するジル。姉と呼ばれている身からすれば、確かに慕われることは心地のよいものだと共感できた。


 せっかくなので、ジルは本人に疑問を聞いてみることにした。

「それにしてもリザちゃんはいつからこの町の教会にいるのかな? シスター見習いなんだよね?」

 つまり孤児なんだよね? と暗に問いかけているようなものだが、ジルはそれに気づかなかった。ちなみに5年前、ジルが一人で訪問した時にはリザはいなかった。


 リザの顔に影が差したことでジルは失言を悟ったようだ。

「ごめんなさい。聞くべきじゃなかったわね」

「いえ、気を使ってもらわなくても大丈夫です。親の顔を見たことないからあまりわからないです」

 リザは意外にも気丈にふるまったのでジルはほっとした。

「2年前からこの町の孤児院にいるのです。その前には別の孤児院にいたんですけど 無くなってしまって……」


 しかし、孤児院が無くなったというのもおかしな話だ。よほどのことがない限りそんなことありえない。だが、すでに失言をしてしまったばかりなので、これ以上の質問は諦めた。


「でもここの人達は皆優しいし友達もたくさんいるです。だからこの町に来てよかったです!」

「リザっち、私達ももう友達だからね」

「ありがとうです」

 最終的にはクリスタが上手くまとめてくれた。そしてジルの耳元で囁く。

「ジルねぇ、気を付けなよ」

「ええ、ありがとう」


 そんな話をしていると、前方に大きな建物が見えてきた。てっぺんに教会のトレードマークである十字架が飾られている。

「ここです。着きました」

「私たちの教会よりすごい大きいね、ジルねぇ」

「そうね」

 やはり栄えている町だけあって敷地がジル達のところとくらべて圧倒的に広い。孤児院もセットになっている分なおさらだ。


 門をくぐったたところでリザが口元に指をあてた。

「ここから先はしーーっです。勉強はボランティアの方が見てくれます。だから、勉強がちょうど終わったばかりの今なら上手く紛れこめば……」

「その必要はありませんよ」


 突如、横からしわがれた声が聞こえてきた。その方向を向けば、老婆が一人、三人を見つめていた。

「ま、マザー!?」

 不意を突かれたリザは思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。ジルはこの老婆に見覚えがある。そう、確か孤児院の主で親代わりの存在。

「ようこそいらっしゃいました、ジルさん、そして……」

「クリスタです」

「クリスタさん、はじめまして。私はマチルダと申します。そして……リザちゃん」

 びくっ、とリザの体が震えた。

「は、はいです!」


 こっそり戻るつもりだったがなんと敷地に入って数歩で見つかってしまったリザ。

「勝手にいなくなってはだめでしょう? 心配してしまいますよ」

 しかし、マチルダの声色は穏やかだった。


「ふぇ……」

 気の抜けたリザに対して諭すように言葉を続ける。

「あなたがここにいる理由、忘れてはいけませんよ」

 そしてポカーンとしているリザの肩をぽんぽんとたたいた。


「ほら、勉強の時間も終わりました。みんなと遊んでらっしゃい」

「は、はい!」

 リザははっとして、がやがやとし始めたほうへ駆けていった。

「リザっち、私も行くよ。ほら、ジルねぇも」

 と、クリスタはジルの手をひっぱる。

「マチルダさん、また後で」

「ええ」

 ジルも、マチルダに断りを入れてついていった。




「ねえちゃん、足速すぎだろー。もう一回!」

「いいよ。じゃあみんなじゃんけんしよっか」

「はーい」

 

 中庭でジル達がしているのは鬼ごっこの亜種、笛鬼だ。結局子供達ともすぐ打ち解けることができ、二人は”遊んでくれるおねーさん”みたいなポジションを獲得するに至った。

「「「最初はグー。じゃんけんほい」」」

「あれ、私?」

 皆がグーを出したかと思いきや一人だけチョキを出してしまったジルが鬼になり、ゲームがスタートする。


「まてまてー」

 しっかり子供に対して手加減をしながら追いかけてゆく。

「あ、あの、ジルさん」

「ん?」


 声をかけられてそちらを見ると、リザがもじもじしながら立っていた。ちなみにリザは普段着のシャツと短パンに着替えている。

「トイレ行ってくるです」

「りょうかい」


 急いで走り去る音を聞いてから、思い出したように子供達を追いかけようとしたところで、ダッシュでこちらに向かってくるマチルダが目に入った。


「どうしました?」

 そう聞くジルだったが、続くマチルダの言葉に耳を疑うことになる。

「町のあちこちにアンノウンが出現しました! 急いで建物に身を隠しましょう!」

 仰天したジルだったが、すぐに気を取り直してクリスタを呼んだ。

「クリスちゃん!」


「ジルねぇ、呼んだ?」

 すぐに飛んできたクリスタに端的に用件を伝える。

「敵」

「え? ……じゃなくて、了解」


「では、私達はアンノウンを倒しに行きます」

「何を言ってるのです。危ないじゃない……ああ、そうでしたね」

 引き留めようとしたマチルダだったが、何かを思い出したのか納得した。

「では私は子供達をまとめて待機します。ご武運を」

「ええ。そちらも気を付けて」

「また後でね、マチルダさん」



 通りに出ると早速アンノウンの群れに追いかけられている人に遭遇した。

「た、たすけてくれえ」

「ええ、後は任せてください」

 そのまますれ違って逃げる人と入れ替わる形でアンノウンに対峙する。

「やるよ、ジルねぇ」

「ええ、そうしましょうか」






 





次回、「戦闘」をお楽しみに!

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