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3 急転

 ついに序章最後の話です。

 かなり更新遅れて申し訳ない!

もしかしたら近日中にその2との文字数調整をするかもしれませんが、悪しからず。

「では、主の恵みに感謝を。ブエナ・スエルテ」

「ブエナ・スエルテっと……ジルねぇはやく」

「はいはい、いただきます」

「いただきます!」

「あーーー」


 ジル達の最大の楽しみ。それは夕食の時間。自分達で作ったご飯を親愛なる信徒、シスター達に囲まれながら食べる。もっとも彼らは食事をすることができないのだが。しかし、仲間のぬくもりは感じる。それだけで十分だ。


 ふと、ジルが手を止めてぽつりと言った。

「そういえばそろそろお肉がきれそうだからまた町に行かないとね」

「え、もう!? 結構最近も行ったと思うんだけど」

 びっくりするクリスタだが別に町が嫌いというわけではない。


「でも30日分しか買ってなかったし。町に行くのもそれはそれで楽しいしいいでしょ?」

「そうだね。あ、そうだジルねぇ、スイーツ買おうよ」

「いいねー。あそこのモンブランおいしいから久しぶりに食べよっか」

「ショートケーキも忘れないでよ!」

 そう、町にはスイーツが待っている。スイーツも保管しようと思えばできるが、そこまで大量に買えるはずもなく、町で食べる分だけ買ってその場で食べてから帰るという動き方をしている。

 

「いやー楽しみですなークリスちゃん」

「ほんとほんと。面白い道具も見てみようよ」

「お、いいね。じゃあケイン道具店にも顔を出しておこうか」

「よし、それで決まり!」

「楽しみだね。あ、クリスちゃん、しっかり食べなよ」

「分かってる」


 話はとんとん拍子で決まっていった。それに反比例して食事の時間も延び、気がついた頃にはいつも寝ているくらいの時間になっていたので、ジルとクリスタは慌てて浴場へ向かった。


 教会の浴場は広い。当たり前だ。本来シスター達が大人数で入れるように設計されているからだ。しかし入っているのは二人だけ。かなりスペースができているが、ジル達は構わずくっついて湯に浸かっていた。


「はあー極楽極楽。やっぱり風呂っていいねージルねぇ」

「そうね。クリスちゃん、昔はあんなに風呂に入るの嫌がってたのにねえ。成長したねえ」

「そりゃあ成長したからね。ジルねぇと違っ……なんでもない」

暗黙の了解の部分を一日に二回も踏み抜いたクリスタ。しかし今回は冗談というより思わず本音が出てしまったという感じだ。

「いいの。気にしてないから。せっかく昔の話が出たし百まで数えましょうか」

「うん…」

せっかく雰囲気を和ませようとしてくれているのだ。乗らない手はない。

「「いーち、にーい、さーん、しーい……」」



 シスターの夜は早い。風呂から上がったらすぐ体を拭いて新しい修道服に着替え、寝室に戻った。そして、黙祷。この時間は掛け声も何もせず、ただ静かに祈りを捧げる。そしてそれが終わると、


「おやすみなさい」

「おやすみー」


こうして小さなシスター達の一日は終わる。

 












 

 目が覚める。知らない部屋。そのことを認識したとたん、ジルの頭は急激に冷えた。慌ててクリスタを起こしにかかった。



「クリス!クリス!」

「ぐぅ」

「……敵かも」

「……!」



 クリスタは飛び起き、あたりを見渡し、その顔を青く染める。そして二人は顔を見合わせた。



「盗賊かな?ジルねぇ」

「なわけないでしょ。盗賊があの寂れた教会にくるとは思えないわ。となると……傭兵ね」

「その通り。にしてもやけに落ち着いてるね、君たち」



 突然男の声が降ってきた。ドアの方を見れば男が二人。



「アンノウンの大規模集団に会ってね。別に負ける気はしなかったけど何故かアンノウンが弱すぎてあっさり終わっちゃったよ。で、近くにあった教会を覗いてみたら君たちがいたって訳」

女の子の前だからかキザな感じで発言する傭兵。


「俺達二人の他にあと八人いる十人で行動してるんだよ。ここはもう誰もすんでいない集落でね、休める場所があって助かったよ」

子供を相手にするかのように丁寧に説明をする傭兵。


「それにしても君たちは一体どういう体質なんだい?もう()()()()()()()()()()()()()んだよ?全く起きないなんてまるでおとぎ話の眠り姫だな」

ここでおそらく傭兵達が一番気になった部分を質問した。


「……あの、ひとつだけいいですか?」

それに対しジルも最も聞きたかったことを質問した。



「……なんで敵意のないアンノウンまで殺すんですか?」


「ん?アンノウンは人を喰らうだろ?何を言ってるんだい?」

   ー理解不能。


「それはないよ!あの子達はジルねぇの言いつけは絶対守る!人は絶対に殺さないよ!」

「そ、そうか……でもアンノウンが敵であることに変わらないんだ。さあ、アンノウンの核(戦利品)もゲットしたことだし都市に戻ろう?」

   ー理解不能。


まだ何か言いたげそうなクリスタを制し、ジルは問う。


「……もし私がさっきのアンノウンといっしょに暮らしたいと言ったらどうします?」


そう言ったジルの体のまわりに異変が生じ始めた。殺されたアンノウンの核、それがジルのまわりにまるで瞬間移動したかのように次々へと集まってくる。そして、


「アンノウンが、再生しているだと?君は一体…?」


 なぜか、通常なら核を傷つけると活動を停止するはずのアンノウンが再びもやを出して体を再構築している。そう、傭兵の指摘は正しい。再生している。いや、一度は死んだ扱いになっているので蘇生している、と言った方が正しいのかもしれない。



「総員、戦闘態勢!この女の子、やばすぎるぞ!」

「悪いな、こんな能力持ってるやつを野放しにはできねえ」


戦闘の呼び掛けに、呼応して伝わってくる足跡。しかしそんなものは関係ないとばかりにジルは言葉をもらす。



「そう、奪うんだ、私達の日常を」


「そんなことするやつは」



 いつの間にかクリスタにも異変が生じている。右腕から黒いもやのようなものが出てくる。それはまるでアンノウンと呼ばれている異形の腕。さらに、ジルの前を向いている手のひらから魔法陣。戦闘向きの火の系統。絶句しながらも戦闘意識の衰えない傭兵達へ二人は死刑宣告をする。



「「絶対に許さない」」



 そしてジルの魔法陣から火の弾が飛び出して、クリスタの右腕が大きくなって、傭兵達に襲いかかる。










 とある草原を男が走っている。ハッハッと荒い息づかいだが止まる訳にはいかなかった。一人で。さっきまでは十人もの仲間がいたのに。


「なんだよ…………なんなんだよ、あれは!」


 男はまだ日の出前の薄暗い空へ怒鳴る。皮肉にも雲は少なく、今日が快晴になることが予想された。

 男が出会った、出会ってしまった二人の少女。それぞれ金と銀の髪の毛をしていた。あの見た目から想像できない残虐性。決して普通の人と分かり合えないであろうアンノウンへの姿勢。


「悪魔だ……人の皮を被った悪魔だ! 金銀のあく、ま……」


 突如男の耳に入ったガサッという音。足は走るのを拒否し、ガタガタと震える。そして振り向いた先には、


「な、なんだ、ウサギか……」


 そしてまた前を向こうとした。が。


「みいつけた」

 耳元で囁かれた声。硬直する体。男が振り向く前に銀の悪魔は異形の腕を振り下ろした。













「うーん、よく寝た! 今日もいいことがありそうな日曜日だね! まずクリスちゃんを起こして、信徒さん達とお祈りをして、そして町に行ける! 楽しみだなーエヘヘ」











 かつてこの世界を襲った災厄、通称「黒の粛清」による異変は大陸全土に及んだ。これは、その災厄に運命を狂わされたとある少女達二人の物語。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ラスト付近に全部持って行かれましたね。 最初は、ほのぼの系かな?と油断していました。お見事です [気になる点] 構成上仕方ないとは言え、もう少し序盤でも不穏感を出すと良いかも? この部分…
[一言] 物語が始まったばかりで状況も先も見当が付きません。 しかし面白そうなファクターが多いので、先が楽しみな作品だと感じます。
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