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21、マストの材料作り

 定期船に乗り込んだ俺は船体の状況を確認した。

 「無限図書館」で帆船関連の情報を引っ張ってくる。


 どうやら甲板、船倉は古びてはいるが、問題ないようだ。

 トルテや水夫たちが大切に使っているのが分かる。


 やはり、ネックは折れた2本のマストだ。

 帆を張るためのマストは太い幹の木が使われる。

 メインマストになるだけの立派な木はそうそうない。

 だから値段も高額だ。


「船体は少し補強すれば大丈夫だろう」


 俺は船の甲板から顔を出し、トルテに報告した。


「そうですか……じゃ、マストさえ直せれば……」

「使えそうな木は全くないのか?」

「資材になる針葉樹はほとんど切ってしまったわ。ハゲ山だらけ」


 船の建造や修理には膨大な量の木材が必要になる。

 だから荒廃した土地ではすぐに資材が枯渇してしまう。

 バルゼリアはその典型だ。


「パパがピネーの木を育ててたけど、使えるのは私の孫の世代ね」


 ピネーは真っすぐ太く伸びる針葉樹だ。

 船のマストに最適だが巨木になるまでは100年はかかる。


「育ててた? じゃあ、あるのか?」

「うん、パパが死ぬ少し前に未来のためにって植えたの」

「よし、案内しろ」

「ダメよ。まだ小さいから」

「とにかく、その木を見せろ」


 俺は気の進まなそうなトルテを強引に促し、案内させた。


 連れていかれた丘にはピネーの木が植林されていた。

 どの木も俺の背丈にも満たない。


「結構、あるじゃないか」

「使えるのは100年後よ……バカみたい」


 トルテはどこか伏目がちだ。


「だが、船会社を営むなら必要なことだ」

「それで死んじゃったら意味ないよ……」

「……植林と父親の死が関係あるのか?」

「植えるのに夢中で夜になっても帰ってこなかった」

「……」

「次の朝、来てみたら……」

「モンスターに?」

「うん……」


 トルテは出会ったときから船会社の若オーナーだった。

 父親の話は聞いたことが無かった。


「……お前の父親が命がけで植えた木、使わせてもらうぞ」

「……?」


 俺は一本のピネーに近づき、根本に手をあてた。


 土魔法と回復魔法を同時発動する。

 ピネーが真っすぐ空に伸び始めた。


「木が……」

「回復魔法は過剰にかけると代謝を加速させてしまう」

「……」

「だが、植物においては急激な育成を可能にもする」

「すごい……」


 ピネーは巨木へと成長した。

 同様に、他のピネーも数本巨木に変える。


「パパの木が……」


 見上げるトルテの目には涙が溢れていた。


「乱発すると土や生態系を壊すから、これだけにするが、しばらくは足りるだろ」

「……夢みたいだよ〜」

「寝てる場合じゃねえぞ。これからが大仕事だ」

「そうだね……! みんなを呼んでくる〜!」


 トルテは船大工を呼びに港へ戻っていった。


 さあ、船の修理を始めようか。




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