私の思いよ、彼に届け!
【作者より】
この作品は『いじめられて自殺した私が闇医者によって悪役令嬢に転生され、過去の自分を客観的に見る』【原作版】及び【改稿版】の外伝です。
友梨奈が中学2年生の頃のお話です。
前書き欄と後書き欄は読み飛ばしても構いません。
※ 拙作は日下部良介さま主催の「200ハート2017」に参加させていただいた作品です。
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私、木野 友梨奈は私立花咲大学付属中等学校に通う中等部2年生。
「湯せんは難しいなぁ……」
今日はバレンタインの前日というわけで部活が早く終わった。
私は速やかに家に帰り、チョコ作りに苦戦している。
湯せんでチョコレートを溶かすのは難しいよぉ……。
「あぁ……また失敗した……いつものブラウニーあたりにすればよかった……」
なぜならば、私はいつも簡単にできるブラウニーを作って、友チョコとして交換しているが、今年はどうしても手作りチョコを渡したいと思っている人がいるから――。
その人は同じクラスの秋桜寺 聡くん。
彼はバドミントン部に所属しており、先生や同級生の信頼度が高く、イケメンで優しい笑顔の持ち主で誰にでも親切なのだ。
私はそんな彼に勇気を振り絞って告白をしようと思っている。
別に来年でもいいかなとは思っていたけど、また同じクラスになるとは限らないし、秋桜寺くんの記憶に私の存在があるうちに告白しようと思ったのだ。
「おっ、だんだんコツが掴めてきた! これは成功するかな」
何回かやっているうちにコツが掴めてきて、ようやく成功。
ハートの型に湯せんしたチョコを流し、簡単にデコレーションをして冷蔵庫に入れて冷ます。
失敗したものはブラウニーを作ってパパにあげよう。
作るべきものを作り、片づけるべきものは片付けた。
最後に秋桜寺くんのチョコに添えるミニカードを書いて私は眠りについた。
*
翌日の朝……。
私は慌ただしく朝ごはんを食べ、昨日作ったチョコを事前に用意しておいた小箱に、その箱とミニカードを可愛らしい淡いピンクの袋に入れた時――。
「これでよし!」
「友梨奈ー! 早く学校に行こう!」
「友梨香、今行く!」
私の双子の姉である友梨香に呼ばれ、私達は朝練のため学校に向かった。
私はもちろん、秋桜寺くんへの告白のシチュエーションを考えながらだけどね。
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その日の2限目のあと、私は勇気を振り絞って彼に近づき、「今日の放課後、渡したいものがあるから、体育館裏にきてほしい」と伝えると、「いいよ」と一言だけ言われた。
やはり、秋桜寺くんは人気者だ。
彼はすでにたくさんの袋や小箱を持っていたので、部活の女子部員とかからもらったのかな……。
他の人のものはミニカードがついているかは分からない。
私は短いけど、秋桜寺くんにラブレターみたいなものを書いたの。
Dear. 秋桜寺 聡くん
さっきは突然、呼び出してごめんなさい。
なんて言ったか分からなかったと思うから、手紙でもう一度伝えるね。
私は秋桜寺くんのことが好きです。
なぜならば、あなたの優しい笑顔と部活でバドミントンをやっているところが素敵だからです!
今日はこの日のために、頑張ってチョコを作ってみたよ。
味は保証できないけど、食べてくれると嬉しいな♪
また来年度も同じクラスになれるといいね。
From. 木野 友梨奈
上の文章がそのカードに書いた内容。
今日の放課後は彼に絶対、ミニカードと同じように思いを伝えなきゃ!
*
その日はなぜか時間が経つのがかなり遅かったような気がする。
やっと放課後になり、私は心臓が高鳴る中、体育館裏で秋桜寺くんを待っていた。
「木野、ごめんね。遅くなっちゃった」
彼が少し遅ればせながら、そこに駆けつけてくる。
私は体操着に着替えていなかったため、部活の方は始まっていないと察した。
「う、うん。ぜ、全然、待ってないから大丈夫だよ」
「なんか変だけど……渡したいものって何かな?」
「あ、あのね。ずっと、秋桜寺くんのことがす……」
言いたいことは途中まで出てきているのにも関わらず、スムーズに最後まで言えない。
「す?」
「……す……」
「……す……?」
「す……好きでした! 今日のために、チョコを作ったから食べてくれると嬉しいなー。これから部活が始まると思うから頑張ってね! じゃあね!」
「あ、ありがとう。また明日な!」
私は勢いのあまりに早口で彼に全くミニカードと違う内容のことを言ってしまった。
それと返事の件を話すのを忘れてた!
「あっ、返事はいつでもいいから!」
「分かった! 木野も部活頑張れよ!」
「ありがとうね」
こうして、私のグダグダな秋桜寺くんへの告白が終わった。
果たして、彼は私のミニカードを見てくれるのだろうか……。
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最後までご覧いただきありがとうございました。
3月14日に後日談みたいなものを投稿する予定ですので、お楽しみに!
2017/02/14 本投稿
2022/02/20 前書き欄修正