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ラスボスのやり直し  作者: ブルータス
二章(魔法学校)
8/10

学ラン冒険者


コンコン


私の部屋ーー正しくは私とエレイン嬢の部屋ーーがノックされる。

私が読んでいた本をベッドに置いて面倒くさそうにドアを開けると、そこには何時かの貴族の主従、ユーベルトとロベルトがいた。


「久しぶりだな、リーゼロッテ嬢」

「……何か御用ですか?」

「うむ、ロベルトが冒険者ギルドに行くと言うのでな。一緒に行かないか誘いに来た。私は付き添いだ」


(冒険者ギルド、か……)


魔法学校は月曜日から金曜日の9時から2時半まである。

そして今日は土曜日、つまり休日なのでエレイン嬢含む学生たちは演習場や市場に行って時間を潰している。

しかし、演習場を借りるのも市場で物を買うのも金が要るので貧乏な者は休日や授業後は皿洗いなどをしてお金を稼いでいる。

冒険者もその一つで、戦闘に自信のある者は冒険者ギルドで冒険者登録をして人に危害を与える魔物を狩ってお金を稼いでいる。


「何故私を……?」

「む?リーゼロッテ嬢は1位であろう?」

「いえ、それは頭の良さのことであって戦闘とは無関係ですよ」

「なんと!」


そう、テストの成績は強さの指標にはならないのだ。

その上魔力の多さが発表されなかったせいでリーゼロッテの事を「頭でっかち」と呼ぶ者もいたが……エレイン嬢とその取り巻きによって食堂の端っこで一人寂しくパンを囓る羽目になっていた。

ちなみにリーゼロッテの魔力量は全盛期の九割、つまりほとんど同じであり、それは『魔導王』グラディウスにも匹敵する。


「まぁ、リーゼロッテ嬢なら大丈夫であろう」

「坊ちゃん、何を根拠にそんなこと言ってるんですか」

「私の勘だ!」


ユーベルトが胸を張って言った時、空気が凍った。

リーゼロッテはもちろん、長い付き合いのロベルトすらポカーンとしている。

たしかにリーゼロッテであれば大概の魔物は瞬殺できるが、彼女がただの村娘だったらどうするつもりなのだろうか。


「むっ、何だその眼は?我が一族の勘はすごいのだぞ!お祖父様が間者(スパイ)だと疑った使用人は8人当たっていたのだからな!」

「……ちなみに何人疑っていたのですか?」

「……25人だ」

「へー、25人中8人ですか。すごいですねー。たしか坊ちゃんの屋敷の使用人は27人だった気がしますけど」

「ぐぬぬ…」


その日、私は初めて現実で「ぐぬぬ」と言う人を見た。



****************************



その後、「魔物ごときアロー系やボール系の魔法で十分だろう…ってそのような目で見るな!私も冒険者登録するからいい加減さっきの事は忘れよ!」と言うユーベルト(坊ちゃん)のために私は仕方なく冒険者ギルドにやって来ていた。


ちなみに冒険者ギルドに着くまでにユーベルトのあだ名は「坊ちゃん」で固定され、ロベルトは名前でリーゼロッテは「リーゼ」と呼び合うようになった。


ギギィと音を鳴らしながら冒険者ギルドに入ると、カウンターに座っていた一人の少年が十年来の友達のように馴れ馴れしく手を振りながら近寄ってきた。


「おーい、そこの将来有望そうな少年少女たちー。冒険者登録をしようにも登録料が払えない貧乏で哀れで貧相でぼっちで貧弱なこのボクにお金を貸してくれないかな?」


「!?」


!?

なんとその少年は黒髪黒目で地球で言う「学ラン」を着ていたのだ。

しかし私が驚いたのはそれだけではない。

普通に考えれば異世界から召喚された勇者なのだが、私の知る召喚勇者は『急造勇者』と呼ばれる青年であり、隣国にいるはずなのだ。


「あいにく人に貸せる程お金を持っていないので」

「う〜ん、僕もかな」

「えー、マジかよー」


「なら私が貸してやろう、そこな貧乏人」


お金を目的に来ていたリーゼロッテやロベルトと違い、なんだか仲間外れにされそうだから来たユーベルトが人によっては眉を顰めそうな話し方でその少年に告げる。

しかしその少年はそれを聞いて目を輝かせた。


「わぁ、カッコいー!なんだかキミからはこう、隠していても漏れ出す神々しいオーラのような物を感じていたんだ!


ーーねぇ、君もそう思わない?」


グリンッ


「!」


少年の目がいきなりリーゼロッテからリーゼロッテに向けられる。

その時、リーゼロッテは感じ取ってしまった。

少年から発せられる、わずかな神力を。


(この男、何者だ……?)


しかし少年はすぐに目をユーベルトに戻した。


「さぁ、行こう!実はさっきからずっと受け付けのかわい子ちゃんを待たせているんだ。これ以上待たせるのは忍びないと思わないかい?」

「うむ、そうだな!」


そして私たちは冒険者となった。

受け付けの女性が説明している間、私の関心はずっと学ランの少年に向けられていて内容を全く聞いていなかったのは余談である。

まぁ、一度聞いたことがあるのでいいのだが。


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