海で、君と
海を見ている君の後ろ姿が好きだ
引いていく波のように
どこまでも遠くなっていく
君の鼓膜に響く波の音を
ふたりイヤフォンを分け合うように
聞けたのなら
どんなにか幸せだろう
瞬きをするたび
海と同化していく君
きっと手を繋いだところで
僕の手のひらをすり抜けていくのだろう
切なさばかりで君を愛していたのなら
この夕陽はもっと美しいはずなのに
僕は単純に夕陽に色を当てはめてしまって
砂浜に寄せられた
幾多のちいさな死骸に
僕らは気づかずに
各々の生を揺らすばかりだけれど
君の見た海を僕は好きになる
そんな確信の中
僕は生きていたい