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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
守るということ
89/103

剣舞 sideレティシア

新章へ入ります(´∀`)


ルカ 17歳

レティ 16歳

スザク ライノ レイノ ニーナ ノーラ 15歳

クレア 14歳

アオイ ウゲツ レビ 13歳

 




宝珠島は、現在三つ。本島は月白島と名を変え、他にヴェールマラン島とタラニス島があります。月白島は白縹の領海近くにあり、東の緑青領海沖にヴェールマラン島、西の金糸雀領海沖にタラニス島です。これらの島のことは、また今度ちゃんとお話するわね。


あれから二年経ち、年齢的に言えばルカは高等の二年、私が一年。一番年下の子も中等の三年生だし、ナディヤママは「はやく誰か結婚して赤ちゃん産んでくれないかしら…つまらないわ」と淋しそう。でもそれは何年もしないと無理そうよね。






ルカが高等学舎の年齢になった時、猫の庭の先生たちが教職員会議をしました。その結果、中等五年までのカリキュラムが終わった途端にリア先生のトンデモ学力テストが導入されたのです。


それをいきなりやらされたルカは目を白黒させながらも「なんだこれ!むっずかしい!」と言ってテストを終えた。その成績を見たリア先生たちは「やっぱり…」と苦笑い。


「こうなってると思ったわ~。はい、ルカは高等カリキュラムを飛び級で卒舎!おめでとうございまーす」


「はいぃ!?僕、今日から高等養育プログラムなんじゃないの!?」


「そんなもんとっくに吸収・消化してらっしゃいますわよ、ルカ。これ以上やるなら何か専門に学びたいことを教えてよ、そっちに特化してあげる。ちなみに今出したテスト問題は高等学舎以上の専門分野のものよ。そんなモノにここまで答えられるんだから問題ないわよ」


「へ?ええ??じゃあ僕、これから何すればいいの?」


「さあ?未成年だから正式に働くってわけにもいかないし?だからぼけっとするのがイヤなら何を専門に勉強したいか言ってよ」


「えええぇぇぇぇ…」


急に中途半端な暇人になってしまったルカは「ちょっと考えてきます…」と言って自室にこもった。その結果ルカが決めたのは「グラオの研修生」だった。もちろんマザーや軍部セクトへ正式に認められたものではない。


彼が持っている能力はグラオのミッション難易度を飛躍的に低くする。自分の能力はニーナやノーラのように勉強すれば強化される質のものではないのだから、実戦に出て感覚を磨くのが正解だと思う、と言った。それ以来彼はグラオの準構成員として扱われ、毎日のようにミッションへ出たり鍛錬したりという日々になった。


そして一年後に私にも同じ試験が課され、やはり「飛び級で卒舎」となった。それで言ったらクレアなんてとっくに「卒舎」なのではとパパに聞くと、「一応情操教育っていう意味でも中等まではカリキュラムどおりにやるのは重要なんだよ」ということだった。


私もグラオでミッションに出ようかしらって思ってたんだけど、もう一つだけやってみたいなって思ってることもあって。どっちにしようか迷ってパパやママに相談したら、簡単に「両方やっちゃえば?」と言われました。


それは「セリナさんたちと一緒に、この国を旅してみたい」ということだった。アルもいろんな部族の街を巡って、とても大切なことを得たって言ってた。でも私はアルのように対外的に正式な研修生として各地へ滞在できるほどの理由がない。


白縹の未成年、しかも女の子を一人で旅に出させてくれるほど、アルカンシエルは甘くないから。


で、妥協案という感じではあったけど「セリナたちがどこかの街へ腰を落ち着けたら一緒に活動する。でも移動することになったら猫の庭へ戻る」というもの。もちろん変装して、白縹ということは隠して。旅芸人の一座の弟子として街の人たちに触れあうことは可能だろうというわけ。


こうして私とルカは大人たちによってリンケージグローブの特訓を受け、移動魔法の魔石を支給されることになった。もう三つの島すべてにレビが巨大な魔石サーバーを置いていて、中にはヘルゲ先生のコングロマリッドを参考にした「レビオリジナル接続型複合方陣」が入っている。これで宝珠島三か所へ入ってもいい人のマナ固有紋を完全管理しているため、私たちも何かあったら島へ直接移動魔法で行くことができる。


ヘッドセットと、グローブと、移動魔法。

ヘルゲ先生とフィーネ先生が作った装備の凄さを知るのは、数日かからなかった。

私たちの親の世代が成し遂げたことの凄さを、ルカと私はミッションを通して痛感したのでした。





*****





セリナさんたちに快く旅への同行許可をもらった私は、ほんとに浮かれていた。でも今は露草から蘇芳要塞都市へ向かって移動中らしくて、着いたら連絡するからいらっしゃいと言ってくれた。たぶん三日ほどかかるって言ってたので、その間はグラオのミッションか鍛錬ってことになる。


今まではほとんどママとペアを組んで「幻の大規模軍隊」を出動させに行ってたけど、今日はユッテ先生と一緒に現場へ出てみる?と言われた。


「毎度おなじみの湖沼地帯のゲリラだねー。あいつらボロンボロン出てくるからさあ」


「どうして何年も掃討できないでいるの?」


「あー、国内の反政府勢力もいるけど、ブルーバック国の反アルカンシエル派も入り込むから。ブルーバックの勢力はさあ、ちょっと規模が大きいんだよね」


「わざわざレジエ山脈を越えてくるの?国境警備が機能してないんじゃ…」


「そこはホラ、国境警備だって山脈の全てを見られるわけじゃないからねえ」


なるほどと思いながらミッション内容を聞き、高低差もあって入り組んだ湖沼地帯で近接戦闘も含めたゲリラ掃討戦の手伝いへと出動した。





「ほい、そっち行ったよ!」


「ヤー!」


ユッテ先生が敏捷な動きで敵を翻弄し、追いたてたところへ三つのハイカーボン鋼の薄刃を横なぎに一閃。指示された人物以外はキルでいいと言われているので、三枚おろしにする。


――ん、いい切れ味ね。この刃は厚さ2ミクロンってとこかしら。普通なら焼き入れしてあってもこんな薄いだけじゃ振っただけで折れてしまうけれど、ライシャと一緒に研究したらマナでコーティングすれば少しは強度が上がることに気付いたの。


「ヒュ~…躊躇ないね、新兵より肝が座ってるよレティ」


「そうね、最初から割り切ってるからかしら。大体私ったら刀剣に魅入られてるんだもの。スポーツじゃあるまいし、何のために使うかって考え続けてたから」


「ま、レティは行動不能にすることも寸止めも自在なんだから心配ない。自分がキリングマシーンだなんて考えちゃいけないよ?」


「ん、大丈夫。ありがとうユッテ先生」


「いいってこと~。私は単純にレティと肩を並べて戦えるのは嬉しいんよ。こんなに息もぴったりで、最高のバディだし~」


確かに私はずっとユッテ先生に教わってきたから、次にどう動きたいのか、敵をどちらへ誘導しようとしてるのかは大体わかる。でも実戦でこう言われると、なんだか嬉しかった。


その後目標の潜伏する沢を見つけ、野営していた一団は二十人ほど。ユッテ先生なら楽勝でこいつらを行動不能にすることも可能だけど、先生はニヤっと笑って「レティのお手並み拝見と行こうかな?」と言った。


あら…私がやっていいの?と首を傾げると「いくらでもフォローしたるよ。今回は燃やしたり凍らせたりっていう派手な魔法は使えないけどさ、レティならどうやるか見てみたいし~。捕縛対象は私が透明化して確保すっから暴れていいよ?」と先生は軽く言う。


「ならやっちゃおうっと」


「うっひひ!行け~、レティ」


私はすたすたと野営地へ向かう。

透明化したユッテ先生がついて来てくれてるけど、敵には丸腰の女の子がほてほてと歩いてくるようにしか見えないだろう。


「は?なんだお前…迷子かよ?」


「ううん」


「なんだぁ?ノコノコこんなとこ来ちまってよぉ…よっしゃ、俺らが可愛がってやるからこっち来いよ」


「子供か?それにしちゃあ上玉だな。ボスんとこ連れて行けよ、売るなら可愛がっちゃマズいだろ」


「……ねーえ、おじさんたち。何日お風呂に入ってないの?ちょっと臭うわぁ」


顔を顰めて文句を言うと、ゲラゲラと笑って「お前生意気だなあ?そういうのも一興か」と笑いながら腕を伸ばしてきた。


ほんと、冗談じゃないわよねぇ、ライシャ?

こんな野党崩れが反政府勢力でございなんてよく言うわぁ。


ぶわっとマナを錬成し、にっこり笑いながら数百本の様々な刀剣を一瞬で自分の周囲へ造り出した。それらを引き連れながら、おじさんへ問う。


「あら、初対面の女の子に優しくないのねぇおじさん。ところでその腕…もう斬れてるけど?お仲間に治癒師がいるのなら、今すぐならくっつくかもよぉ?」


「は?何言ってやが…るうううぅぅぅぅわあああ!!」


あーあ、動いたら腕が落っこちるに決まってるじゃない。おばかさんね。


ようやく事態を把握して殺到してきた男たちの中へ、手近にあったシミターを一つ掴んで突入する。

剣舞八番。

一本のシミターを振るいながら男たちの間を踊るようにすり抜ける。

三人を倒したところでシミターが折れて、即座に二本の曲刀を引っ掴む。

剣舞三十五番。

縮地で勢いをつけ、地面すれすれまで開脚して三人の股下をくぐり抜けざまに斬った。

そして私の後をついてくる刀剣たちは当然周囲のやつらを串刺しにしていき、十数本が壊れたので追加する。

剣舞二十七番。

二本のシミターで踊りながら回転していく。

野営地の真ん中で焚かれていた炎をライシャの盾で飛び越えさせてもらい、自分が舞った軌道を確認する。


――ん、生存者ナシっと。


念のためヘルゲ先生へ接続して自動マッピングを展開すると、十時方向でユッテ先生が赤い光点を二つほど消滅させていた。そして残った一つへ襲い掛かっているところみたい。


そちらへ歩いていくとユッテ先生が透明化を解除し、私へニカッと笑った。


「かーっこいいじゃんレティ!今度私も接続してアレやってみよっと!」


「うふふー、ユッテ先生も剣舞、やる?」


「私はあそこまで体柔らかくないからなー!帰ったら柔軟しとくし!」


「あは、私も一緒にやる~」


捕縛した一人がうるさいので猿ぐつわをかまし、猫の庭へ帰還。ユッテ先生はパパへ報告に行き、「レティかっこよかったよアロ兄~」と言って映像記憶を見せていた。


パパはちょっと青ざめた顔で「えー…レティこんなことできるの?えー…」と少し放心状態になった。ケガはないんだよね?と言われて頷き、一応服が斬れたりしてないわよね?と自分を見下ろすと。


「……あー、返り血が一滴ついてるぅ……まだ未熟ね、私も」


「一滴?一滴で何を落ち込んでるのレティ…」


「きっとセリナさんなら一滴も被らないもの」


「いやいや、セリナさんは人を斬らないから」


パパが「そこ?そこを気にするのレティ?」なんて呆れた声を出すけれど。私はやるからには完璧な剣舞をしたいと思って練習してきたんだもの、当然です。


報告も終わってソファでお茶を飲んでいたら、ルカもミッションから戻ってきて隣に座った。


「お疲れ、レティ。なんか落ち込んでない?」


「うん…今日は剣舞でキルしてきたんだけど、返り血が…」


「ありゃ、被った?あれイヤだよねー」


「ん…ほら、ここ…」


「へ?あ、これ??」


「はぁぁ…未熟な自分が嫌なら訓練しかないわね」


「ちょ、アオイー!ウゲツー!レビー!来ーてー!レティが職人気質を発動しちゃってるー!」


ルカが叫ぶと、可愛い弟二人と妹一人が走ってきた。


アオイは私の足の前へ座り込み、せっせと膝の上へ仲良しの猫たちを乗せては私へ向かって「なーぉ、なーぅ」と慰めの猫語を語らせた。


レビは私の左へ座って「レティ姉ちゃん、あの戦い方で返り血が一滴って普通ありえないよ?返り血ゼロを目指すなんて思ってたら、注意力が散漫になっちゃうって!姉ちゃんがケガなんて、俺いやだよ…?」と左手を握った。


ウゲツは右手を握って「レティは返り血ゼロと僕たちが泣くの、どっちがイヤなんだよ。アオイなんてきっと泣き叫ぶよ、いいの?」と言った。


「よ、よくないわねそれは…」


「そうだよー、レティ絶対ケガしないで?私ほんとに泣いちゃうからね?」


「わ、わかったわ」


「ねえレティ姉ちゃん、俺の作った治癒の方陣(大)の魔石をちゃんと持ってる?」


「ええ、持ってるわよ大丈夫」


「でもケガしないのが一番大事だよ?」


「わかってるわ、ありがとうねウゲツ。アオイもレビも、心配してくれてありがと」


すっかり気持ちが温かくなって三人へ笑うと、安心した彼らはソファを離れていく。それを見ていたルカは「ん、効果抜群」と晴れた空みたいな顔で笑った。仕方ないわね、毎回このパターンだけど…ダマされてあげるわよ、もう!





  

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