緑が輝る島 sideルカ
宝珠島へ様々な植物の種や苗木を持ってくる作業は、アオイとレビとウゲツが中心になって進んでいった。普段から猫の庭の畑を世話している三人は息もぴったりで、他の子へ的確な指示を出す。
そしてノーラも籠いっぱいの「腐葉土の毒核」を作ってはアオイへ渡し、ニーナは「病原性毒物浄化の清核」を作っては島の色んな場所へ撒いている。
そして今日はレビが集会所でゴロゴロっと魔石を出したので何かと思ったら、それには「僕らがほしい植物を探せ方陣」と「健康な種や苗を探せ方陣」が入っていた。それを持って各自が森へ入り、いい感じの植物を探してきてね!ってわけだ。
「お、こっちに芽が出る五秒前って感じのドングリ発見!」
「俺のクヌギの方がでけぇ。残念だったなライノ」
「うっせえよ、俺の方が数は多いじゃんか」
ライノとレイノ、スザクはドングリ集めに夢中。でもクレアとレティは「…苗木にまでなっているものの方がいいと思うのですが」と言いながら着々と見つけては籠へ入れていた。僕は二人の荷物持ちとして同行し、たまに苗木を見つけては「これはどう?」とレビの方陣を持っているクレアに聞いていた。
三か所ほどの森を探索しまくって、ようやくアオイが満足してくれるほどのものを収集できた。ネーミングはアレだけど、レビの方陣がなかったらこんなに持って帰れなかっただろうなあ。
集会所には大きな紙にニーナが島の地図を作ってくれていて、レビはそれを眺めながらさらりと新しい方陣をマナの波に聞いていく。
「……そうそう、要するにここらへんに森を作りたいんだよね。成長した後で間引きしなくても済むようにさ、いい感じの間隔をあけてほしいなー。あ、それでできる?ありがとねー!」
モノクルで見ていると、色とりどりのマナがレビを取り巻いている。そして記号のような文字を描いては整列し、くるりと円状になって自ら「方陣化」していた。レビはそれを見届けると即座に暗号化して、魔石へと入れ込む。振り向いた彼は「でーきたっ!」と言って、外にいるアオイへ叫んだ。
「アオイ~!『いい感じに植林してね方陣』、できたよぉ~っ!」
「さっすがレビ~!やっちゃってくださ~い!」
「わかった~」
レビはすぐさま作ったばかりの方陣を起動し、みんなで集めたドングリや苗木へ植林の魔法をかけた。すると山盛りになっていたものがどひゅん!と飛んで行き、湖の周囲を取り囲むように輪っかになった。
そしてピタッと止まった瞬間、まるで石礫の攻撃魔法みたいにドドドッと直下の地面へ突き刺さるように「植わった」のでした。
「うーわ、あんな乱暴にして苗木折れてないかなあ」
「大丈夫だよルカ!着弾する時は加減されてるから!」
「わぁお、着弾て…まあいっか、レビの方陣なら間違いないよね」
「へっへ~」
照れたレビはアオイとウゲツへ向かって「アオイの番だよ~!」と叫んだ。腕で大きなマルを作って了解と伝えてきたアオイが、ぶわっと精霊を錬成して何かを語りかけた。
次の瞬間に僕らの目の前で起きたことは…なんと言ったらいいのかわからない。
アオイが植物の育成を早めることができるだなんて、僕らはみんな知っている。だけどいま目にしているのは、「広大な森が生えてくる」現場だった。
ずるん、と生えたホウノキが枝を張っていく。ミズナラがぎざぎざの葉っぱをぼふぁっと茂らせ、サワグルミがすっとした立ち姿で先端に藤の花みたいな果穂を垂れさせた。ブナは堂々とした姿でざわりとたくさんの葉ずれの音をさせる。
たくさんの花の種が芽吹き、クローバーや芝は横へ横へとその陣地を増やしていく。枯れては咲き、咲いては枯れ、その緑の絨毯は島を覆い尽くしていった。
――そうして出来上がったのは、猫の庭の前にあるブナの森より立派な鬱蒼とした森林と、緑の草花やツタ、シダが零れそうなほど溢れる美しい島だった。
「……すごいわ。あんな真っ直ぐなサワグルミ…綺麗な森ね……」
「大風の影響もなく、一瞬で成長しましたから幹の捻じれがありません。虫の被害もない状態だと、あんな風に美しい樹木になるんですね」
「うーわ…樹齢何百年って感じの森に見えるね。すごいや、一面緑だよ…」
僕が思わず感嘆の息を漏らすと、大仕事を終えたアオイとウゲツが走ってきた。
「森ができたよ~!これで鳥さんもたくさん来るね!あとはお水かな!」
「あー、三段ケーキ山の上にも池があるけど。雨が降るの待ってたら森が枯れちゃうかなあ。ねえ、リンクに繋がってすっごい高度からアオイが津波を出すってどうかな」
「それは危ないよウゲツ~。攻撃魔法じゃないつもりで出したら、アオイの津波でもとんでもないことになっちゃう。水害になっちゃうよ」
みんなでうーんと考え込み、ふっとクレアが人差し指をぴっと立てた。
「…何も宝玉や宝珠にやらせることはないですよ。宝石級が威力を抑えた津波を山の上で発生させればいいんです。たぶん数人でやれば池から水が溢れて、湖へ流れるでしょう」
『おお~!』
いつも魔法威力を抑えるのに四苦八苦する僕らだけどさ、「威力が低い」と白縹としてつい「劣っている」って思いがちなんだ。だけどそれも悪い事ばかりじゃないよね、強いだけだとスザクみたいに「破壊専門」だなんて悩むことになるし。
そんなわけで僕ら宝石組が三段ケーキ山へ登り、「荒れ狂わない津波」を出していった。最初はどんどん土へ水が染み込んで行っちゃったけど、土壌改良した時にちゃんと砂礫の層や岩盤の層が地下にあることは確認してある。だからみんな遠慮なしに「どんどんやれ~!」って感じに水を入れていった。
すると段々と池へ水が溜まってきて、フチいっぱいまでになった。みんなドキドキしながら次の一回で溢れるぞ!と思っていると、ライノが「きゃっほう!」とアオイみたいな歓声を上げて津波を出した。
ざぶっ
ちょろ…っ ちょろちょろ…っ
ばしゃっ
ざぁぁぁ………
『やったああ、流れたぁぁぁ!!』
「追加だ追加!湖にも誰か行って、水溜めてこい!」
「じゃあ僕が行くよ。あ、ライシャに乗せてもらってもいい?」
「そうね、私とルカで行ってくるわぁ」
僕とレティはライシャの盾に乗り、少し上空から山を眺めて湖へ降りていく。よく見てみると山の斜面から小さな水流が湧き出している場所もあって、僕らが意図した場所と違う方向へと流れていくけれど。
でもいいじゃん!って思う。
どこまでも人工的な計画通りの島にしたいわけじゃない。もしかしたら小さな池が平地のどこかに出来上がったとしても、それでも僕らの美しい宝珠島は大切な「秘密基地」だ。
こうして僕らの島は、緑と水が溢れる素敵な場所になっていった。




