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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
僕らの野望
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宝珠島 sideルカ

  





「島に行って来まーす!」


「あらあら、お夕飯までには戻ってくるのよー?」


「はーい!」


僕らはすっかりあの『宝珠島』に夢中だ。

留学期間を無事に終えたスザクは、学舎のみんなとの別れを惜しみつつ「来年も来るからよ!」と笑って猫の庭の生活へと戻った。そしてもう毎日のように放課後は全員で島へ行き、この巨大な秘密基地の住環境を整えている。


やはりこの島の秘匿に一番貢献しているのはウゲツで、心理魔法を惜しげもなく周囲へ展開している。その効果は「万が一上空から視認されてもまったく気付けない」「船の航路に島があっても、迂回していることに気付けない」「この座標へピンポイントに攻撃魔法を撃ったとしても着弾するのは東か西へ数キロずれた地点になる」というほどだ。


特に攻撃魔法の座標設定に至っては「この島の座標を部外者が認識した瞬間作用する」ので、術者がどんなに遠方にいようが関係ないという反則っぷりだ。つまり今現在、グラオの大人が新型移動魔法でダイレクトにこの島へ移動しようとすると東西どちらかへ数キロずれた地点にゲートが開く。


唯一の出入り口は、猫の庭にある「宝珠島行き」のキャリアーを操作するしかないってわけ。とは言え緊急時に島へ移動魔法のゲートが開けないのは困るので、そのうちウゲツは「マナ固有紋を登録してある人だけ」とか「ユリウスのクランみたいに指輪を持ってる人だけ」みたいに、何かを目印にして座標認識の縛りを解除しようと思ってる。

それをどうするか、ウゲツはしょっちゅうレビと楽しそうに相談してるんだよね。




ヘルゲ先生にガラス化した地面を修復してもらったスザクは「くっそう、ヘルゲの方が汎用性の高い便利魔法使えるんだよなあ。どーしたらあのコングロマリッド作れるんだ?」と頭をひねっていた。……怖いこと考えるなあ、スザク。ヘルゲ先生のは自分の心を自分で魔改造するっていうおっそろしい手法で得たものなのに。


でもレビが「そのうち俺もママみたいに接続型複合方陣の研究するからさあ、待っててねスザク」なんて請け負っちゃって、超怖い。




で、現在島はどういうことになっているかと言いますと。

ヘルゲ先生が「サービスしてやる、どんな地形がいいんだ」と言ってくれたので、僕らは霧雨台地をモデルにした小さな三段ケーキみたいな山と、湖と、川をお願いしたんだ。


そして型押ししたかのような地形が出来上がったので僕らのモチベーションはグングン上がり、全員で歓声を上げながら周囲に生やす植物を相談した。


湖の周囲にはたくさんの花。

その花畑の周囲にブナの森を作ろう。

小さな川があるから、外洋側へ落ちる滝もできる。

三段ケーキ山にも木や果樹を植えて、そこから湖へ繋がる川沿いに僕らの基地を作るぞ!


「基地は何で作る?レンガってどーすんだっけか」


「耐久性とか考えたらガヴィに頼んだ方がいいのか?」


ライノとレイノが首を傾げてうんうん唸ってるけど、最初からそこまで本格的じゃなくってもいいじゃん?とスザクは言う。


「俺らまだ未成年だぞ?ここに猫の庭みたいなすっごい建築物を依頼するのは、ちゃんと自立してからがいいなー!アロイスやヘルゲにおんぶに抱っこってヤだぞ、仕事して金稼げるようになってからにしようぜ」


「お前、すっげえマトモなこと言ったな」


「いや…俺にはわかる。スザクはあれだろ、『秘密基地』って響きにワクワクが止まらないんだろ」


「あったりー!猫の庭と同じじゃアパルトメントじゃねえかよー、もっとなんつうか秘密のアジトっぽくしてえなー!」


――相変わらず突っ込みどころが満載だな、この三人は。

秘密基地のロマンはわからないでもないけど、正直言って僕ら全員もうグラオのミッションでちゃんと仕事してるのも同然なんだからね?


実はアロイス先生から僕とレティとクレアにだけは明かされていることがある。

マツリ(非公式ミッション)以外の通常ミッションで僕らが出動したら、その経緯や貢献度に応じて全員分の隠し口座へちゃんと給与が入ってるんだよね。これは大人たちの間で「子供貯金」と呼ばれていて、例えば僕が出動したら対外的に「親であるコンラートが出動した」ことになり、ヴァイスから報酬が入る。それをまるっと僕の隠し口座へ移動させちゃうらしい。


大人の取り分がそれで減るかっていうと、そんなわけもない。父ちゃんは父ちゃんで僕が出動している時に他のミッションを片付けちゃうんだから、実質グラオのミッション処理数は大人だけだった頃の三倍ほどに膨れ上がってるんだ。


というわけで、ほんとはそのお金を使えば猫の庭クラスの建物は建てられるんですよ、十分ね。


まあそれをこのウッカリ者三人に言えるわけもなく。


やれ「竹で骨組みをだな」だの「バナナのでかい葉っぱを屋根に葺く!アオイに生やしてもらおうぜ!」だの「藁のベッドってほんとに気持ちいいんかな」だのと言っている男子三人は、その通りのサバイバル原始生活を送るがいいよ。


「レティ、ではこのあたりでどうでしょう」


「そうね~、一応花崗岩でやってみる?」


「いいですね、もう生成できるんですか」


「もちろん!ガヴィほど精密にはできないけど、大理石も教わったからイケるわぁ」


さっきレイノに「繋いで」もらったクレアとレティは、構造計算や設計図といった部分をクレア、それに従ってレティが建材の生成と組み立て作業という風に分担して、あっというまに小さな建物をいくつか作ってしまった。


ドアは軽い金属製。中の椅子やテーブルもレティがささっと同じように作ってしまい、大雑把な造りではあるけど快適そうだ。これで布団でも搬入してしまえば、ほんとにここで安全に眠れそう。


「レティ、ここにクッション欲しいよね!ママに布もらって作ってくるよぉ」


「…ん、いい考え。ニーナ、私も手伝う」


あ、やっぱそうなるよね。

ニーナとノーラは猫の庭へ戻って、一時間ほどしたらふかふかクッションを人数分作って戻ってきた。あっという間に集会所の出来上がりだ。


『き、基地は!?』


「あらぁ、これじゃご不満?間に合わせで作ったから、ごめんねぇ?三人は簡易牢獄ジェイル…じゃなくって、金属製のコンテナの方がお好みかしらあ」


『いえ、この基地サイコーっすレティ姐さん』


「そぉ?じゃあ入ってもいいわよお?」


『うっす』


レティはすっかりこの三人の心をナニカで縛り上げてるらしく、ライシャの盾までぶぉん!と出しながらニコニコして話す。それだけで三人は大人しくなるので、僕は最近この三人へ漢の証を消すお仕置きをする間もない。


いま子供組で一番強いのはクレアとレティのペアってことだね、ほんとに頼もしいですよ。




  

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