【閑話】楽しい質問タイム sideウゲツ
草原に、レティの作った鋼鉄のコンテナが十五個もある。
この中には今回のゾンビ魚テロを仕掛けた術師が一人ずつ入ってるわけなんだけどね。ほんっと、いい加減にしてほしいわけだよ。お前らにアオイの悲しみがわかるか?いや、わからないからこんなことするんだろうけどさ。
自分の魔法能力が低いから、生き物を贄にして発動させよう?
誰だよ最初にそんな酷いこと考え付いたやつ。
そりゃあ「工夫」ってのは大事さ。そんなのレビを見てればよくわかる。でもそれは他の生き物の生命を犠牲にしてまでやることなのか?どうして「マナの扱いを上達させる修行方法」を工夫しないんだ。これだからタンラン人は嫌いなんだよ。
「…ウゲツ?四年前より気配が剣呑だなあ。抑えられないなら任せられないんだけど?」
「あ、ごめんパパ。大丈夫だよ、ちゃんと抑える」
「そう?じゃあ頼むね」
集中し、マナを錬成した。
「出番だよ影武者。待機して僕の魂のコピーを受け取れ」
出てきた三人のダブルは、頷いた。
彼らが僕に繋がっているマナのラインを切らさず、集中。
精霊を錬成して、ちょっと自分の雰囲気を意識して変化させた。
「――ダブルへ僕のコピーを叩き込め。手を抜くなよ、わかってるな?」
プルッと震えた精霊は、大急ぎで三体のダブルへ僕の濃厚な情報を固定させた。まるで尻尾を足の間に隠した犬みたいな気配の精霊たちは、僕の言うことをきちんと聞くようになっている。躾には苦労したよ、方法は秘密だけどさ。
ダブルたちへ向かって、「やること、わかってるね?」と聞いた。三人ともニッと笑って頷き、鋼鉄のコンテナへ向かった。うん、我ながら不穏な笑い方ができるもんだな。
「パパ、四人ずつやるからねー」
「はいはい、了解」
もう大人は誰も付き添わない。
コンテナの中は半分を鉄柵で区切られていて、もうライシャが盾になれるほどに成熟したレティが僕を守ってくれてるからだ。
がしゃん、とコンテナの扉が閉まる。
ほとんど明かりのないコンテナの中で、「ある程度拷問済み」のタンラン人は項垂れていた。
「寝てるフリしても無駄。また痛い目に遭いたくないでしょ」
「………」
「ねえ、今回のテロってさあ。ほんとに白縹の威力顕示にケチ付けたかっただけなの?君ら術者は四年前もすーぐ捕縛されちゃったけど、その騒ぎに乗じてこの国へ攻め入る人員を君らがまったく把握してないのはどうして?」
「………」
「ああ、大人の言う通りにしただけだから知らないんだね?」
「 !? 」
「君らの大好きな支配者階級の通称くらい知ってるさ。ぷぷ…タンランのターレンて何かのダジャレか早口言葉なの?センスないなあ」
「だマレ!」
「あっは、君に指示を出したのはウー大人?マオ大人?それとも…シャオ大人かな」
「……ッ」
「ごめんねー、老大哥って組織は僕らで始末しに行っちゃうからさ。いつまでもアルカンシエルがタンランの首都を知らないなんて思わない方が…いいんじゃない?」
――ここだ。
相手の瞳がわずかに揺らいだ。
ボッと特濃の精霊を錬成し、男へ叩きつけた。
精霊へ命令したのは「心を弱らせ、上位組織についての記憶を洗いざらい吐き出させろ」というもの。えーと、既存の心理魔法の括りで言うなら「狂わない程度の狂幻覚の後で、強烈な自白」ってトコかなあ?ヘルゲ先生に言わせると「そんな生易しいものなわけないだろう!」って叫びそうではあるけど。
よっし、じゃあレビに作ってもらった「おいしい情報いただきます方陣」の魔石を展開してから設置、と。
いま僕が「タンランの首都を知ってるよ?」と匂わせたハッタリも含めてこの男の精神を揺さぶり、心理魔法の効果を高めたわけなんだけどね。こいつの心が折れてベラベラ自白するものの中には、どーでもいい情報もあるわけで。なので「僕が欲しいと思っている情報」をこいつがしゃべった時だけ、この方陣が反応して記録してくれるんだ。
これも「収穫くん」と同じく「僕の精霊に反応するタイプの方陣」なので、レビは汎用性が低いってブツブツ言うんだけどもね?そんなわけないじゃん、これを設置しておくだけで、誰かが記録を取るためだけに無駄な時間を費やす必要がなくなる。
そんな「汎用性」に悩む前に、できればネーミングセンスを何とか…げふんげふん。
えぐえぐと泣き始めたタンラン人をそのまま放置し、コンテナを出た。あー、お日さまってやっぱいいよね。
ふっと横を見ると、同じように深呼吸しているダブルたちも出てきた。四人で顔を見合わせ、ニッと笑って次のコンテナへ並ぶ。僕らは上機嫌で『ハイ、お次の方~』と言いながらコンテナへ入っていった。
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【おまけのアロイスとコンラート】
「なあアロイス、ウゲツがお前そっくりの笑い方してんの、怖ぇんだけど」
「何言ってるんだよコンラート。見間違いじゃないの?」
「お前だってちょっとびびる時があるじゃんか、息子に迫力負けするって言ってよお」
「何言ってるんだよコンラート。聞き間違いじゃないの?」
「……父ちゃん、いい加減にそうやって『お仕置きしてください』って近寄ってくの、やめなよ。だからネタ提供能力があるなんて言われるんだよ?それが僕にも遺伝してるって言われるんだから、やめてよ」
「ルカてめえ、言うようになったじゃねえか」
「コンラートいい加減にしなよ、ルカの言う通りじゃないか。…おっといけない、手元が狂ったようだ」
「ぐああああ、氷のパンツはやめろおおおおお」
「あはは、ごめんねコンラート。――で、さっき何か言ってたっけ?」
「み、みまちがいシマシタ。ききまちがいシマシタ」
「アロイス先生ごちそうさま~。この映像記憶、ニーナにお願いして額縁にしてもらってくるね」
「うん、それがいいね」
「うぐぅ…っ」




