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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
僕らの野望
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援護射撃とミッション構築 sideルカ

  





僕らがそれぞれの想いに沈みながらもアロイス先生とスザクが対峙しているのを見守っていた時。周囲でそれを聞いていた大人たちの数人から声が上がった。


「…やってみりゃいーんじゃねえ?宝珠が島を作れなかったり、作れてもゾンビ魚の捕獲に失敗したら俺らがフォローすりゃいい話だ。おいスザク、アオイ、もし捕獲に失敗した場合は中枢のオーダー通りに『敵性大型魚の殲滅』だぜ?それはわかってるな?」


スザクもアオイも、父ちゃんの言葉にこくんと頷いた。

でもアロイス先生は「…コンラート、そんな簡単なことじゃ…」と渋っている。


「アロイス、あなたの懸念はみんなわかってるつもりよ?でも考えてごらんなさいな、これまでだって私たちは『中枢をダマくらかして』やってきたじゃなあい?今回のおねだりは今までの比ではないくらい大きいけれど…面白いじゃないの、子供たちがどこまでできるのか見てみたいわ。ね?」


たぶん決定打はマリー先生のこの言葉だ。

レティによく聞く「パパのアロイス」は、いつも自問自答している。


こんな特殊すぎる大勢の家族を中枢やマザーから守るために、絶妙なバランス感覚で乗り切ってきた「統括長」。大人たちだけの話ならば、悪ノリした提案でも「じゃ、やっちゃう?」なんて楽しげに言うことも多い。


でも僕らが関わるミッションや、その特殊能力を行使する話になると…予測できないことが多すぎて、どうしても慎重になってしまう。


そんな自分へ「僕は過保護すぎるかな」とか「厳しすぎるかな」とか問いかけながら、いつも悩んでいるんだ、と。


そんなアロイス先生の重荷を軽くしてくれるのは、いつもマリー先生なんだとレティは言う。「パパはね、みんなが大切で仕方ないのよ」とクスクス笑うレティは、マリー先生そっくりの笑顔だったっけ。


今も同じようにアロイス先生を見ているレティは、「これで大丈夫」と思っているようにリラックスしていた。そして次に発言したのは、ヘルゲ先生とフィーネ先生だった。


「アロイス、そこまで中枢に警戒することはないぞ。いまエルンストに確認したが、今回の議決に賛成したのは主にユリウスに抑えられて過激な意見を引っ込めた『タンラン殲滅派』だ。反対派は『魚だけを潰してもキリがない、他の作戦要旨を軍部から提出させるべきだ』といった慎重な者たちだ。つまり、逆に言えば地殻変動で作戦行動前に敵性魚が全滅したとなれば『ふりだしに戻った、タンランにどう対応していくのか改めて考えよう』ということになる。ニュートラルになれば、俺たちが思うようにタンランの首都を判明させるというマトモな意見も出るかもしれんだろう」


「うむ、ぼくもその意見に賛成だね。アロイスは蘇芳のクルト長官から『どうやって四年前にマナ固有紋を採取したんだ』と詰め寄られていたからねえ。その時にたまたま・・・・白縹に来ていたアルノルトのおかげだと言って事なきを得たが、今回の大規模な軍事行動へ長様直属の魔法相談役を引っ張り出すなど言語道断と議会で声高に言われてはね。アルなしでどうやって今回はやってのけたのかという話になってしまうよ、君が慎重になるのもわかる」


フィーネ先生の話は僕らも初耳だった。僕らの能力を隠蔽するためにあらゆる手段を辞さないアロイス先生は、今回そんな風に板挟みになってたんだな…


スザクもそれを聞いて少しだけ頭が冷えたみたいだった。


「…アロイス、悪い。俺たちのことでそんな風にいつも矢面に立ってくれてんのは、わかってるつもりだったけどよ。でも頼む、やらせてくれよ。もし今回のミッションでなんらかの追求を受けそうならさ、俺が紅玉として早熟で、魔法能力が開花したって言ってくれたってかまわねえ。ご存知の通り俺はヘルゲ以上に魔法出力に特化した『壊し屋』だ。俺一人が中枢や山吹に祭り上げられる程度で追及を回避できるなら、いくらだって生体兵器の皮をかぶってやんよ。俺もアロイスやヘルゲみたいに、矢面に立ってみんなを守る」


アロイス先生は全員を見渡し、はあ…とため息をついた。そして困ったような笑顔になって「今回は、もし捕獲成功ってクルト長官に言ったら『どうやってマナ固有紋を判明させたか』が争点になりそうだから困ってたんだよ?スザクが矢面に立っても言い訳にもならないじゃないかー。それに殲滅されたって言い張れば、その問題自体がなくなるよ」と笑った。


「――よし、わかった。クレア、レビ、みんなと相談して『孤島生成ミッション』の構築を頼める?まとまったらもう一回会議だ」


『ヤー!』


僕らはパァッと笑顔になって、全員で水晶の修練ルームへ向かって走り出した。






*****





中枢から降りてきたオーダーの時限は二日後。

グラオの機動力ならばすぐにでも外洋へ出て作戦行動に出られるようなもんだけど、今回は蘇芳の部隊がアルカンシエル南岸という広大な範囲へ展開しなければならないからだ。


でもクレアやレビは「その時間差が狙い目ですね」「うんうん、蘇芳の部隊は遅すぎなんだよ~」とニタニタしていた。


「皆さん、今まで何度かこの計画については話し合ってきましたが…ぶっつけ本番、やれますか?」


「当然じゃんか。いつも通りクレアが頭脳になってくれるんなら、俺らはいくらでも動くぜ?」


「ふふ、ライノも皆さんもいつもそう言ってくれますけど…私が不在の時のことも考えてくださいね?司令塔が私やレビだけでは、そのまま私たち二人を狙えば総崩れという事態になりかねませんよ?」


「クレア、その時は僕の影武者ダブルの出番でしょ。モデル本人がどんなに遠くにいたって大丈夫だし、ダブルを含めた精神混合メンタルミクスチュアの実験だって成功してるんだから」


クレアはふふっと笑い「そうでしたね、ウゲツの能力はほんとに頼りになります」と言って彼を照れさせた。


「さて…ではスザクとアオイには申し訳ありませんが、島の生成については私たちはノータッチです。範囲設定も何もかも、二人にはリンクと繋がって全てをやってもらいますので。もちろん私たちとは繋がれません」


「おう、わかってるぞ」「はーい、だいじょぶだよクレア!」


……これから極大魔法を行使しようっていうのに、この二人の余裕は何なんだろうなあ。宝玉とか宝珠って、成長する時は一気に来るから予測つかない。


僕が呆れたように二人を見ていると、その様子を見ていたらしいレビは少し笑って「ルカ、二人は制御不能だからさぁ~」とコッソリ言った。それを聞いて僕も思わず「まったくだね」と、まるでルッツみたいにプスッという声を出して笑ってしまった。


「えっとさ、じゃあもう一回手順の確認しよっか。今回俺たちはニコル先生に引率を頼んで、守護で当該座標へ運んでもらう。敵性魚を確認したら、スザクとアオイに島を生成してもらう。もちろんアオイはほかの生き物が巻き込まれないように避難させてあげてね。そこからは一応敵性魚が捕獲できたかどうかで二つのルートに分かれるけど、一応成功したと仮定して話を進めるよ?えーと…」


レビが最終確認として羅列していく手順は、何回もシミュレートしたものだ。


生成が完了したら通信機でスザクとアオイは全員へ知らせる。

島がどれほどの大きさになるかは予測つかないけれど、僕はとにかく海上へ出ている部分をすべて「掻き消す」。

全員僕と同じモノクルを着用し、マナの光だけで島の存在を確認しなければいけないけれど、蘇芳の部隊に目視されたら大事になるから仕方ない。

僕は消したモノが何なのかっていうのがもう感覚でわかるようになっているので、ゾンビ魚の座標をニーナとノーラへ伝える。

二人はヴェノムとキュアを群れ全体へぶちかまし、四年前と同じように無毒化。動きを止める。

更にレビがついさっき開発した「マナごとに集まれ方陣」で、術者のマナごとにゾンビ魚を集め、レティが一匹ずつ捕獲。

草原へサンプルを放り込んだら「捕獲ミッション」は完了だ。


ま、僕らのコドモマツリ・ミッションはそこからが本番なんだよねえ。

そっちの手順もレビが確認し…、全員がこくりと頷いた。


アロイス先生へクレアとレビが作戦詳細を伝え、ニコル先生の役割が重要だから協力してくださいとお願いした。


「もっちろーん!守護も『誰もケガなどさせない』ってやる気満々だよ!いいよね、アロイス兄さん!」


「……あー、はい。もう観念しました。妻と妹と子供たちからおねだりされちゃあね…僕に勝ち目はないよ」


『やったあぁぁ!』


みんなでひとしきりハイタッチして喜びつつ、レティと目があったのでふと考えついたことを聞いてみた。


「ねえレティ。もしかしてアロイス先生を陥落すんのって、マリー先生とレティとニコル先生にお願いしたら一発だったりする?」


レティは黙ったまま、マリー先生そっくりの笑顔できれいに笑った……






  

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