実習に出ている僕ら sideルカ
僕らはここ数年でグラオの本物のミッションについていく機会が増えた。最初はエレ婆ちゃんとバル爺が「アホか、犯罪者ナメんな」と言って取り合ってもらえなかったんだけど、クレアとレビが二人で説き伏せたんだよね。
アロイス先生もさすがに「子供と思って見くびってるわけじゃないけどさ。誰が危険だとわかってるミッションに可愛い娘や息子を連れていくなんて考えるの」と呆れていた。でも、このクレアの言葉が決定打だった。
「ですがこのままでは私たち、猫の庭という特殊環境の基準でしか物を考えない世間ズレした集団になってしまいますよ?現時点でニーナとノーラの研究内容は、毒物や阻害効果に特化しているとはいえシンクタンク以上のものになってますし。レビは一人魔法部って感じになってますし。宝玉と宝珠の魔法威力は全員が【自重不可】なわけですし。ルカは相当数の他人を『透明人間』にできるようになってるわけですし」
「ああああ、もうそれ以上言わないで~…それに加えてクレアのネゴシエーションスキルが青天井だよねぇぇぇ」
「私たちは暴走教育ペガサスに遠慮なしの英才教育をされているんですから、そろそろ実習に移っても良い頃合いかと」
「あああぁぁぁ…」
アロイス先生を陥落させるまでになっているクレアは、十二歳なのにすっかりリア先生に似た美女になりつつある。白縹の学舎へ行くと、いつも本に没頭していて声をかけにくい孤高の美少女扱い。だから隠れファンがすっごく多いんだ。
ちなみにレティはもっとヒドい。ライシャとすっかり意志疎通できるようになった彼女は女の子に絶大な人気を誇る「お姉様」としていつも引っ張りだこ。でも女の子への礼儀をわきまえた男子には優しいので、一体何人がレティ信者になってることか。
僕?僕は大人しいもんですよ、相変わらずモノクルかけてて、要望があれば手品よろしく本や花瓶なんかを手で触って不可視にしてあげる程度。それで面白がってくれるならやって差し上げますよって感じで同期のみんなとほのぼのやってます。
他の子が学舎留学でどんな感じの扱いになってるかは、また後日教えるよ。みんなそれなりに…えっと、そう、それなりに溶け込んだからね。
まあそんなわけで、僕らは「コドモミッション」を目指して研鑽しつつグラオのミッションへも「実習」で参加してます。当然のように一番出動回数が多いのは僕とレティ。年齢的なものもあるけど、やっぱり「使える能力」っていう意味で僕らがダントツなんだよね。
僕はいろんな人と組んでの潜入捜査が多い。僕がインビジブルでメンバー全員を消し、各自が魔石で「遮音と誤認の複合方陣」を展開。するとリンケージグローブで父ちゃんに接続して消える必要がなくなるんで、接続枠が一つ空くってわけだ。
だから大人は透明化以外の能力へ接続して、更に効率よく、更に安全なミッション遂行ができるようになった。
そしてレティが行くのは戦場が多い。と言っても対多数の肉弾戦ではなく、マリー先生と組んでたった二人の「幻の軍隊」で加勢に行くんだよ。恐ろしいことにこの作戦は絶大な効果を発揮しているらしい。
蘇芳の部隊から救援要請が入ったりすると即座に駆けつけ、マリー先生が「幻影」で一万人規模の軍隊を発生させる。それだけでも「恐ろしい数の援軍が来た」となって敵軍は撤退していくことが多いのに、マリー先生の幻影で「大人の変装」をしたレティが、その一万人の軍隊に武器を持たせてしまうんだ。
本当に武器を幻影に持たせるわけではなく、マナで操った「薄くて切れ味の良い刀剣」を軍隊の頭上へ展開させるらしいんだけどね。その景色と言ったらマリー先生をして「私でも腰が抜けるほど怖いわよ。あれは絶望の光景ねぇ」と言わしめた。
敵軍が徹底抗戦を仕掛けてくるようなら、その「刀剣の弾」は空を斬って敵軍へ殺到することになる。しかも無尽蔵に追加されるわけだからねー、悪夢としか言いようがないよ。
マリー先生と帰って来ると、レティは「はぁ~、あれくらいで撤退するなら攻めてこなきゃいいと思うわぁ」と愚痴をこぼす。その度に一生懸命アロイス先生が「そんな風に相手をナメちゃだめ。その油断でレティがケガなんてしたら、後悔してもしきれない」と真っ青になって諭すんだけどね。レティは「はぁい、わかってるわパパ」と余裕の笑顔を崩しません。
大丈夫だよアロイス先生。レティは意外と慎重派だし、ライシャがついてるから。本人が口で言うほど相手を過小評価してるわけじゃない、あれはレティ流の「余裕の仮面」なんだ。
そしてほんとに辛い時には我慢せずに僕らへ相談してくれる。そういうかわいいとこが、レティにはあるんだよ?




