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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
ルカ 光をもたらす
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守りたい気持ち

  






僕らはライノの「会議室ルーム」で週一回集まるのが普通になっていた。この前はうまくアロイス先生をごまかせたけど、今一番アロイス先生とリア先生に不審がられているのは僕とレティだったりする。


何と言っても、国語の成績が急激に上がりすぎてるんだ。




それもこれも、三歳も年下でたった四歳のクレアの知識に引っ張られてのことなんだから、僕もレティも情けないことこの上ない。


レビ情報によると、クレアは「思考増殖」っていうユニークを発現するはずなんだって。フィーネ先生がよくパウラお姉ちゃんと通信して、部屋で僕たちのユニーク特性について話してるから、レビはそれを側で聞いていて知ってるんだ。


クレアはリア先生が山ほど持っている本を、読めるものからガンガン読んでいる。それにマザー端末で知らない言葉をきっちり調べたり、リア先生が僕らの授業用に作る資料を見ては勝手にどんどん勉強を進めているんだ。


これらのことを、リア先生はまだ気付いてない。


クレアはルームで話していると「知りたいの。私、世界のことぜーんぶ知りたいの」と切なそうに言う。でもそんなことは人間ができるわけないって、賢いクレアは分かってる。それでも知りたい気持ちは止められないから、一分一秒が惜しい、もっと本を読みたいっていつも思ってる。




ちなみにレビも相当賢い。天真爛漫で「兄ちゃんも姉ちゃんも大好き!」なんてルームで言うレビは、ニコニコしながら「こうだと思うよ~」と驚くような推論を展開し、僕らの度胆を抜く。そしてその推論は大体当たってる。


そんなレビが「そろそろアロイス先生にバレると思う~…ライノ兄ちゃん、叱られちゃうのかなあ。俺、ルームに来れなくなるのイヤだよ…」としょんぼりした。


何でバレるかっていうと、僕とレティの急激な成績上昇な訳です…



アロ「ねえルカ、レティ。最近どうして急に国語の成績があんなに上がったのかな。もしかして、修練の時間に何かをしてない?叱ろうと思ってるわけじゃないんだよ。何が起こってるかわからないと、何かあった時に僕らは助けられないんだ」


レティ「えっと…」


ルカ「一生懸命、勉強した…」


リア「ん~…正直言って説得力ないわ、ルカ。あなたたちは今、国語に限って言えば中等五年生に匹敵する学力だと思ってる。悪いけどこの前の小テスト、少し難しい問題も混ぜさせてもらったわ。二人ともさらっと回答するんだもの…」



もう絶体絶命のピンチだった。二日前にルームで集まった時もみんなで相談したんだけど、正直に言うしかないと思うって意見はいくつもあった。でも三歳児組が最後まで「みんなとしゃべれなくなるの、イヤだよう」って半泣きになってたのがかわいそうで…


三歳児組は、何をどうやってもダイブアウトするとうまくしゃべれない。あと一年もすればもっとマシになるだろってスザクが宥めたけど、あんまり慰めにはなっていなかった。


ウゲツまで「僕、ダイブアウトすると途端に頭の中がごちゃってする。ルームにいるとスッキリしてるのに、悔しくて仕方ないよ」と言っていたんだ。


レティはすごく困っている。大好きなアロイス先生に嘘をついているのが苦しくて仕方ない。でも三歳児組のこともどうしても見捨てられない。どうしていいかわからなくて、レティまで泣きそうだった。


レティが泣く。


ダメだ。それだけは絶対ダメだ。



ルカ「アロイス先生、あの、二人で話したい。ダメかな」


アロ「…もちろんいいよ。リア、ちょっと僕に任せてもらってもいい?」


リア「そうね、お願い」


アロ「レティ、そんな泣きそうな顔しなくてもいいんだよ。パティオで待ってて、ね?別にルカを叱ったりしないから」


レティ「…うん…」



レティが縋るように僕を見るから、ちょっと笑ってコクンと頷いておいた。


ほんとは、怖い。


ライノのカウンシルの能力はまだコントロールできていなくて、その場にいた全員をルームに呼んでしまう。だからたまに大人が来て水晶の修練ルームで一緒にダイブする時は、カウンシルを発動させない。


僕らはノーラの能力が未熟だから、危険だから使わせるなというヨアキムの言葉の意味はよくわかったけれど、カウンシルとシンパシーが未熟だとどういう危険があるのかわからずに集まっていた。


だけど、あの空間に集まれることが、いま僕らの確かな絆になりつつあるんだ。


これまでは単なる兄と姉が、やんちゃな弟の面倒を見て溜息をついていたり。

可愛い妹としか思ってなかったノーラたちの能力を聞いて、よく見ていてあげなきゃと気負ったり。

クレアの切ないほどの悩みを知らずに「しっかりしてるからクレアはラクでいい」なんて思ってほっといていたり。

三歳児組の言うことなんて理解できないから、ただの赤ちゃんだと思っていたり。


そうじゃないんだ、もう僕ら、大切な仲間なんだよ。

その絆を保つ手段が、いまライノとレイノの能力しかないんだ。


だから、それがなくなるのが、怖い。

でも、レティが泣くくらいなら、僕ががんばらなきゃ。


僕はアロイス先生と一緒に、教室へ入っていった。






*****





アロ「…ルカ、すごく緊張してるね」


ルカ「ん…」


アロ「責めてるわけじゃ、ないんだよ?何があったか知りたいだけなんだ」


ルカ「あの…アロイス先生。隠してたのは、謝るから…嘘付いたのも、お仕置きは僕が受けるから…できたら、禁止しないでほしいんだ」


アロ「…もし危険なことでも、禁止しちゃダメ?」


ルカ「う…」


アロ「ルカは、何を守ろうとしてるの?」


ルカ「 …! 」


アロ「何か、自分以外のものを守ろうとして、必死だね?レティかな?」


ルカ「…みんな。仲間でいたいから、みんな」



アロイス先生は、ふっと考え込んだ。


…ごめんなさい。


どう言えばいいかわからないよ。

アロイス先生と話したいって言ったのは僕だけど。



アロ「…ん、わかった。この話、また後日にしない?ルカもさ、そんなカチコチにならないで。成績が上がったの自体はすごいことなんだし、悪いことをしてるんじゃないのはわかってるつもりだよ?」


ルカ「…ごめんなさい…」


アロ「あは、謝らなくていいよ。ルカが仲間思いなのはよくわかった。まあ、大人に秘密にしたいことって、あるよね」



アロイス先生はふわっと笑って、僕の頭を撫でた。


その日以降、特に成績についても修練についても何も言われなくなった。

僕らはちょっとホッとしたような、心にしこりが残っているような、すっきりしない気持ちのまま一週間を過ごした。






  

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