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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
自然の体現者
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二つの目標 sideウゲツ

  




僕の心の中は青くてどこまでも続く水の床。もっと小さい頃は「海!」って感じで修練も大変だった。だって海の中に潜って記憶とか感情を探さなくちゃいけなくてさ。部屋の中の整理で済んでる子たちがほんとに羨ましかったなあ。


今はスイゲツが干渉し始めてるみたいで、鏡みたいに空や雲を映し出す水の床。海だった頃みたいにごぽっと沈んでどの方向へ行けばいいのかわからないって状態じゃなくて、その上を普通に歩いていける。まあ足の下には深い海が広がってるのがわかってるから、けっこうゾッとする景色だけどね。


歩く度にトゥン…ティン…と音が鳴り、僕の足跡を中心に波紋が広がっていく青い世界。僕は我ながらけっこうきれいなんじゃないかと思ってる。


「あ、昨日の記憶見つけた」


海中に漂っていない記憶や感情は見つけやすくて、ほんとに助かってるよ。だって「宝玉だから修練で片付けに時間がかかるのは仕方ないよ」とパパに慰められたって、悔しいじゃん…


心の片付けが遅れてるってことは、僕は同年代の子よりも幼いって言われてるも同然なんだ。


僕にとって、「パパとママの息子でレティの弟だ」と胸を張って言えるようになりたいっていうのは大きな目標。そして「ルカに認めてもらえる男になる」っていうのもね。


ルカは優しいし、僕のことを同じレア・ユニーク保持者として「戦友」だと思ってくれてる。繊細で緻密で高度な魔法制御を必要とするレア・ユニーク魔法は、それを発現させた本人が「地道にこの気の遠くなるような作業をやり遂げられる」資質があるからこそ手に入れられる。


それは僕の感覚では、まるで頭がおかしくなりそうな機織りの作業のようだ。

蚕の繭から糸を紡ぎつつ、完成予想図を常に意識してその通りに織り上がるように糸を染める。同時進行で機織り機を操作して一本の糸の狂いもないように織っていき、出来上がった職人技の反物こそがレア・ユニーク魔法だ。


この魔法を僕たちは一瞬で構築し、放出する。


大袈裟に言ってるように聞こえるかもしれないけど、これほんと。マリー先生もコンラートさんもやってる、本当のことだ。


それをあのスイゲツ…っ

何が「カンタン、カンタン」だよ!

僕らレアユニ持ちは、確かにコンラートさんの言う通り「地上百メートルの綱渡り」がうまくなきゃやっていけないさ。でもスイゲツの言う方法で影武者を出すには「地上百メートルの綱渡りをしながら水深百メートルの海底にある落し物を探せ」っていう課題が出されてるも同然なんだ。


うぎぎぎ、影も四体目を早く出せるようになりたいし、影武者も安定して出せるようになりたいしっ なのにスイゲツは「方法論からして違う」ってことを言うんだもんなあ!


…あ、きっとこんな風に悔しがってるとまた「そんなに力んでたらできないよねー」って言いに来そう。くっそー!





*****





修練を終えるとライノとレイノが僕のところへ来た。


「おいウゲツ、お前昨日の話本気なんだよな?」


「もっちろん。でもまだ僕らの錬成量や技術じゃ足りないことが多すぎっていうのはクレアとレビが言った通りだね。でも…できたらスゴいと思わない?」


「うっは、たまんねー!俺もちょっと考えてることがあるんだよ。精神混合メンタルミクスチュアと、宝珠の接続役ってすげえ役割が似てるじゃん?ライノのルームでそいつといつか話せないかなーって思ってるんだ」


「あ、なるほどね…何をしてるのか理解できるなら、レイノの能力も進化したりして」


「へっへー、無駄かもしんないけど狙いどころだろ?」


ライノとレイノは「次の目標」を見つけてうきうきしていた。なんか珍しく僕が提案したことでみんなが乗り気になるほどの目標が一つ定まるっていうのは嬉しくなっちゃうな。レティには「あまり前に出ようとしなかったウゲツがたまに提案することって、スケールが違うわね」なんて家で褒められて照れちゃった。





ところでその目標っていうのは大きく分けて二つある。僕がどうしても影を四体出したいと思うのは、もちろんスイゲツ・イェライシャン・シノノメ・トクサを実体化させたいからだ。


これには僕のレアユニ能力の強化もさることながら、四人の深淵の意志がしっかり定着した後じゃないと出ない可能性もある。だからもしかしたら、ガードが無事に「同窓会」をできるのは十年後とかになる可能性だってあるんだ。だって僕らの成熟度次第でスイゲツたちの定着度が変わるわけだからね。


だからこれはすっごく先の計画、その一。


もう一つ計画があるんだけど、それがコドモマツリになるかどうかもスザクとアオイ次第。宝珠としての力をどれだけ制御可能にして、接続役の力を引き出せるようになるかがキモだからさ。


そう、僕らは二人に極大魔法の行使をお願いしたいと思ってる。それがどれくらい危険を伴うかもわからないし、ちょっとやそっとじゃできない。だからこれもいつになることやら。


でもクレアとレビが楽しそうに「それはいい考えだ」って言ってくれたからね、いつかはきっと実現すると思うんだ。それまでみんなで一緒に、修練と勉強に励むよ。





  

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