情報山盛り sideウゲツ
「…は?全員深淵の意志と話せた…?」
ヘルゲ先生とパパは目玉がおっこちそうなほど目を見開いて固まった。あれ?月白の霧雨台地と水晶台地のことが一番驚く情報だと思ってたのにな。
「ちょっと待って、だってニコルが『おじいちゃん』と完全に意志疎通できたのは…十七歳の覚醒時だよね」
「そうだな、俺ではレアケースすぎて参考にもならんが。七歳の時点から十七歳まで、ほぼ十年間学舎の大木で微かに聞こえるとか、意味不明の言葉しか聞こえてなかっただろう。だが修練ルーム限定ってのは納得だな、あれだけマナの蓄積された水晶に囲まれていれば、学舎の大木以上の触媒になるんだろう」
「宝珠の影響、か。こんなところでも出るとはねえ…」
いまこの場にいる宝玉は僕だけだから、二人してまじまじと僕を見てるけどさ。もっと「本来の宝珠の力」のことを驚いてあげてよ、レビが「そこじゃない」って顔してるってば。
「パパ、だから宝珠の二人に付く深淵の意志は三人みたいだよ。僕やレティみたいに個人の人格を持ってるのが二人に、ニコル先生みたいにミックスされた接続役が一人。アオイに聞いてみたら、逆にニコル先生が特殊っぽい印象を受けるって言ってたけどな。ニコル先生の精霊って割とオールマイティだもんね、能力が特化してなくて素直だしさ」
「素直…ね。そうか、ウゲツの精霊は気難しいと言っていたか」
「んー、でも僕の深淵の意志が言うには演算領域が明確に違うって話なんだ。僕がきっと『海の中の領域』を掌握してないせいだと思う」
ヘルゲ先生は頷くと僕の頭をぐりっと撫でて「よく自分を分析してるな、冷静なのはいいことだ」と褒めてくれた。でもさすがに焦れたレビが話を軌道修正した。
「スザクもアオイも接続して積極的に極大魔法を使おうとは思ってないからいいけど。でもスザクはとりあえずダイヤの増幅機能のオンオフをしてみせるって言ってるよ。ルカたちもいないことが多いし、俺たちじゃ抑えきれないよ。だからヘルゲ先生かニコル先生に気を付けてもらわなきゃと思って」
「そうだね、ありがとうレビ。僕らも気を付けるから、あまり気負わなくていいんだよ。さっきの収束騒ぎだって、僕はすぐ気付けたでしょ?だから安心してよ、ね?」
「うん…アロイス先生のことはもちろん信頼してるよ。でもつい、クレアがいないと俺じゃ行動予測が難しくて焦っちゃうもんだから」
今度はパパが笑ってレビの頭を撫でた。僕もそういうことに気付いてあげられなかったし、ほんとに悪い事しちゃったな。
そして僕はもともと何を狙って水晶の修練ルームへ行ったかを思い出して、ヘルゲ先生へ頼みごとをした。
「ねえヘルゲ先生。僕、ガードに聞きたいことがあるんだ。レティにやってあげたみたいに、直に話せるかなあ」
「ガードか?いいぞ、ちょっと待ってろ」
すると映像記憶で見せてもらったのと同じ、だらしない装束を着てニヤニヤ笑ってる人が現れた。ああ、なるほどな…こういうやり方をすれば深淵の意志の具現化が可能なんだ。すると僕が四体の影を出せるようになれば、彼らの「同窓会」が可能なわけだね。
『よーう、こんどはウゲツかよ?どしたぁ?』
「出てきてくれてありがと、ガード。あのさ、【東雲】と【木賊】って人、知ってる?」
ガードはずっざああああ!と遠くまで器用に飛びのいた。
『ンだよ、お前ら姉弟は俺を殺す気か…ッ』
「もう死んでるよね?」
『そういう問題じゃねえ!女豹の次はゴリラジジィと羊の皮を被った大蛇かよ!それにお前から【水月】の気配もすんじゃねえか!あの野郎、わざと痕跡残したな…!』
「やっぱり知ってるんだ~。じゃあシノノメがゴリラで、トクサが着ぐるみ大蛇っと。了解したよ、ありがとね~」
『ちょっと待てウゲツ!お前ほんっとに“輝る水”に似てやがるなァ、何企んでやがる』
「やだなあガード、スザクとアオイに教えてあげようと思ってるだけだってば。言ってもいいんでしょ?ゴリラと着ぐるみ大蛇って」
『うおお、待て!落ち着けウゲツ、ウェイトだウェイト!』
「慌ててるのはガードだけじゃん」
『ぐあああ、くっそお!わかった、話すからよ!』
よっし、ガード陥落っと。
パパをちらりと見たら、すっごくイイ笑顔でサムズアップしてた。楽しそうでよかったよ。この映像記憶、きっとママもレティも見たがるよね。夜になったら見せてあげよう。
ガードがすっごく渋々と話した内容は、笑っていいんだか慰めてあげればいいのかよくわからない内容だった。
まず、シノノメはガードの祖父だった。白縹と月白が袂を分かった時の「白縹の長」であり、ガードの前の「紅玉」。その魔法威力はガードと同等かそれ以上だったみたいだ。で、散々叱られて育っているのでガードはシノノメに弱い。
そしてトクサは宝玉狩りから逃げ惑っていた白縹一族にあって、唯一の「生産型精霊魔法」の使い手だった。つまり彼がいなければもっと早くに白縹は食糧難で行き詰っていただろうと思われる。その生命線である彼の作った食糧を盗み食いしたりすると、普段温和な彼は大蛇のごとく怒ったのだとか。
「女豹」ことイェライシャンは白縹と金糸雀のハーフだったそうだ。かなり珍しいことだけど、一人で放浪の旅をしていた白縹の男性がカナリアに一目ぼれ。カナリアは「紡ぐ喉」が潰れることも厭わずにライシャを産み、ずっと金糸雀の里で暮らしていたそうだ。でも彼女の父は明るい茶色の瞳だったのでそれほど白縹とバレもせず暮らしていたけど、生まれたライシャの瞳は金色だった。
それで白縹の集落へなんとか合流してガードたちと育ち、宝玉狩りの国の王都を攻め落とす十一人の仲間になっていた。なんで女豹なのかと聞くと、「俺が【葵】にデリカシーのないこと言うと毎回シバかれてたからだ」とのこと。
うーふーふー、今日はすごい情報の山だね。
みんなに言ったら絶対驚くぞー、僕の考えをクレアに伝えたら「コドモマツリ☆ミッション」が発動しちゃうかも。
あ、その前に僕がもっとがんばって影を四体出せるようにならなきゃいけないんだ。
よーっし、修練修練っと!




