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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
自然の体現者
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制御できない兄妹 sideウゲツ

  




僕は修練ルームを出てからぽてぽてと歩き、アオイに話しかけた。


「アオイー、深淵の意志と話せるかもしれない情報があるんだけど、興味ある?」


「あるー!どしたのウゲツ、それきっとスザクには重要情報だよー?」


「なんか修練ルームでなら少しくらい話せるかもって深淵の意志に言われたんだ」


「ほえー…スザクを呼んでこよっかー?それともクレアが戻るまで待つー?」


僕はうーんと唸り、クレアを待った方がいいだろうなと思った。アオイにそう言うとこくんと頷いたけど、やっぱり修練ルームの方を見てソワソワしていた。だからちょっと大人に事情を話して、二人で修練ルームへ入ろうかなと思ってた時だった。


――どうしたんだろ、ヘルゲ先生がすーっごく顔をしかめながらこっちに来るよ。


「…ウゲツ、おまえスイゲツに会ったのか」


「スイゲツ?誰それ」


「あー…深淵の意志と話したか?」


「うん、さっき少しだけね」


「やっぱりそうか。実はガードがな、さっきからギャンギャンうるさいんだ。修練に関することだから深淵の意志と話したいと思ってるならアロイスに相談してからの方がいいと思うぞ」


そう言うとヘルゲ先生は「ち、ガードいい加減にしろ」と言ってスタスタと去っていく。何なんだろう…


レビも方陣いじりをやめて僕らの方へ来て「何かあった?」と首をかしげた。なので僕の深淵の意志が話したことと、いまヘルゲ先生が話したことをまとめて教えてあげたんだ。するとレビはふっと考え込んでアオイに質問した。


「……ねえアオイ、この前ライシャがさあ、ガードに会って話したんだよって言ってなかった?」


「言ったよ~!レティとアロイス先生がねえ、ガードと話したいって言ったから、パパが赤茶色のポニーテールのガードを出したよ」


「その時の会話って覚えてる?」


「うん!映像記憶見せてあげるよー」


見てみるとヘルゲ先生の出したママの「影」とガードが繋がって、白い装束をだらしなく着た男の人がレティの言葉を聞いて狼狽えまくってた。ガードってこんな顔してたんだな。


「――なるほどね。ウゲツ、たぶん君の深淵の意志ってガードやライシャの知ってる人なのかもしれない。スザクとアオイのは知らないけど、君のってどう考えても個人の人格持ちだもんね。しかもヘルゲ先生はスイゲツって名前を言った。スイゲツと言えば月白の墳墓の守り人だ。ということは、ガードは『同窓会』をやりたくないから、ヘルゲ先生の中でうるさく叫んでる、と」


「あー…そういえばさあ、僕とアオイの名前って、ガードの仲間だった兄妹の名前だって聞いたことあるよ。――あ、そうだ!墳墓の守り人が三人兄弟の一番上だって言ってた」


「ん~、かなり高確率で当たってるな、これ。ということはガードはライシャに弱くって?スイゲツにも弱い?もしかするとスザクとアオイに付く深淵の意志にも弱かったりして…?」


僕はそれを聞いて、すーっごく、すーっごく楽しくなった。

にっこおおお!と笑ってから、アオイに話しかけてみる。


「ねえアオイ、スザク呼んでおいでよ。ダイブするわけじゃなくてただ修練ルームへ入るだけなんだから、何も危なくないし~」


「ウゲツこわいぃぃぃぃぃ」


「何も怖くないってば、だってアオイの深淵の意志ってもしかしたらすっごく優しい人かもしれないよ?話してみたくない?」


「……話したい」


「じゃあスザクも呼んでおいでよ、きっとスザクの深淵の意志もかっこいいんじゃないかなー?」


「 …! そうなのかな!パパみたいにかっこいいかな!すぐ呼んでくるねー!」


僕が笑顔でウンウンと頷いてアオイを送り出すと、レビが「ウゲツって、その深淵の意志にもアロイス先生にも、めーっちゃくちゃ似てると思う」と少し青い顔で言った。


それってクールなのかクールじゃないのかわからないじゃないか、レビ。





*****





スザクが満面の笑顔でアオイと走って来て、待っていた僕らを置き去りにばびゅん!と修練ルームへ入っていった。相変わらず人の話を聞かないね、スザク。


僕とレビが二人を追って部屋へ入っていくと、まるでトイレで踏ん張ってるみたいな格好でスザクが唸っていた。


「おらああ、出てこーい、出てこーい!」


その隣ではぽやーっとしたアオイが「誰かいませんかー、入ってませんかー」とウロウロしながら水晶の壁をコンコンと叩いていた。こっちもトイレのドアをノックしてるみたいで、僕はこの兄妹のことが心配になってしまう。


「何してるの二人とも」


「「 深淵の意志に呼びかけてる 」」


「ねえ、彼らって物理か魔法かと考えれば魔法寄りの存在だと思わない?僕は魔法制御のこと考えてたら話しかけてくれたよ?」


「それを早く言え、ウゲツ!」


「聞かずにすっ飛んできたのはスザクだよ!」


「ちっちぇーこと気にすんな!んじゃちっと錬成でもしてみっか」


スザクは生活魔法のマナを錬成しては水球を出し、その形をぐにぐにと変えては周囲をキョロキョロした。アオイも同じことをやったけど、なーんにも聞こえなかったらしい。


「ンだよ、やっぱダメじゃんか!もー、んじゃ攻撃魔法を収束までやってから霧散させっからよ。ぶっ放しゃしねーから安心しろ」


「じゃあアオイも精霊さん作ってから解散するー!」


「「 はい!? ちょっとまってぇぇぇ! 」」


ドッバアアアァァァ!


ギュゴッ!


サラサラサラ…


二人の宝珠が「どーせ霧散させるんだから」という勢いで遠慮なしに錬成し。

収束力のハンパないスザクが笑いながら太陽みたいに光るマナの凝縮体を作り出し。

二人揃って「よーし、ご苦労。解散!」とばかりにマナを霧散させた。


レビと僕は、その場をダッシュで逃げ出したくなった。だけど部屋の一番奥にいたからできなくてですね。案の定一秒もしないうちにパパが真っ青な顔でゲートを開け、手にはすごく強力な「マイナスベクトル」の方陣を展開させながら飛び込んできた。


「スザク!アオイ!何やってんのー!」


「お、アロイスじゃーん。深淵の意志に挨拶がわりの錬成だ!」


「アオイもー!こんにちはーって言いながらやったよ!」


「――二人ともこっちにおいで?」


「「 はーい 」」


「猫の庭の中であんなすっごいのカマしたら、何の事故かと思うよね?猫の庭がウェルダンに焼けちゃうと思うよね?何事もほどほどにっていつも僕は言ってるよね?遺伝子に【自重不可】って刻まれてるのかな?それとも僕らの心臓へ適度な負荷をかけると健康になるよってどこかのカルト教団から吹き込まれたのかな?」ギリギリギリギリ


「「 いたたたた!ごめんなさーい! 」」


――どうして、どうして君たちは人の話を聞いてくれないの?

そのノンブレスの質問攻めとほっぺたネジリ(大規模仕置き)は、かなりパパが怒ってる証拠だからね?


そう思って床へへたり込んでいた僕とレビにも「監督不行届き」という名のこめかみグリグリ攻撃(中規模仕置き)が来て悲鳴を上げた。もおお、スザクとアオイのせいだからねー!






  

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