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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
自然の体現者
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七歳児組の放課後 sideウゲツ

お留守番の最年少組、ウゲツ視点です。

  





レティたちが学舎へ留学している一か月の間、僕らは少しだけ閑散とした猫の庭で「やっぱルカたちいないと淋しいね」なんて言っていた。夕方になれば三人とも帰ってきてたくさん話すし、レティもいつも通り家で僕と遊んでくれる。


でもさ、放課後の時間が何て言うか…メリハリがないっていうか。ついアオイやレビと一緒になって「つまんないねー」とか言っちゃうんだ。僕らってほんとにあの三人に精神的に頼ってるんだな。最年少ってことで僕らはみんなから可愛がられてるから、それに甘んじていてダメな感じなのかなあ。


僕がそう言うと、アオイはぷぅっとほっぺたを膨らませて「だって…アオイはルカたちが大好きなんだもん。大好きなのはいいことでしょー?」と答えた。でもレビは「うー、俺だって大好きだけどさ。でも確かに甘えてるよね、特に俺たち三人…」とため息をついた。


同じく留守番をしているスザクと双子たちは自分の鍛錬や研究に没頭していて、あまり僕らみたいには淋しがっていない。スザクがこの前のミッションのことでちょこっと落ち込んだけど、レティがライシャの伝言を伝えてからはすっかり気持ちが切り替わったようだった。


「うー…アオイ、畑に行ってくるね。そろそろ収穫できるお野菜が出来てると思うしー」


「僕も手伝うよ。レビも頼める?」


「もちろんだよー」


淋しさを紛らわそうと思うと、アオイは仲良しの猫五匹を引き連れて畑へ行く。五匹はついこの前まで小さな仔猫だと思ってたのに、もうすっかり成猫だ。その中には体格のいいオス猫がいて、この辺の猫のボスみたいになっていた。


アオイは精霊を無意識に錬成しているらしくて、小さな頃から「精霊を垂れ流し」状態で動植物と軽くなら意志疎通できていた。意識して錬成できるようになってからは、この五匹と一番仲がいいし話しやすくなっているんだって。


畑へ着くと五匹は周囲を駆け回って「警備」を始める。畑を狙う動物なんてほとんどアオイが無意識に排除してるけど、たまーに「新参者」がアオイの精霊の影響を受けていなくて侵入しようとするからだ。一番多いのがやっぱり鳥類だねー、遠くから飛んできたりするとボス猫が威嚇して追い払ってくれてるみたいだ。


畑にはいま、季節感て何ですかそれっていう感じで様々な野菜や果物が実っている。いちごにトマト、きゅうりに白菜。スイカにかぼちゃに春菊。おっそろしいことにアオイはアロイス先生やナディヤママから意見を聞いて、育てる種類と収穫時期、収穫量をコントロールしてるんだ。


アオイが精霊に頼んで、食べごろ野菜をすぱーんともいでいく。それらをレビが作った「収穫くん」という方陣でキャッチし、一つ一つ自動的に結界製の箱へ詰めていく。


――レビはデボラおばあちゃんに許可されたオリジナル方陣をいくつも保持してるんだけど、ネーミングセンスがアルそっくりでダサい。


この「収穫くん」はアオイの精霊がもいだ野菜や果物を感知して、地面に落ちて傷ついたり潰れたりしないようにふわりとキャッチして箱詰めしてくれる便利魔法だ。アオイのマナを感知して作動するので汎用性に欠けるとレビはぶつぶつ言うけど、すごい作業効率なんだよ?


んで僕はというと、箱詰めされた野菜や果物を魔法制御の高さに物を言わせて「優しく傷つけないように、きれいに洗う」作業をする。そして同じように水分を飛ばせばレビが結界製の箱に蓋をして並べて行くんだ。


今日は一メートル四方の箱四つ分を収穫しましたよ。所要時間は大してかからないし、魔法能力だけでここまでできちゃうので体力が削られることもない。だから毎日できるんだ。アオイもレビもほんとにすごい。


収穫し終えるとアオイはまた精霊を錬成し、野菜と土の「健康診断」を始めた。アオイの作る作物はたくさんの養分を必要とするので、精霊たちが足りなくなったものをチェックしてはいろんな場所から少しずつ集めてくるんだ。窒素・リン酸・カリウム・カルシウム・マグネシウム・イオウ・ホウ素・鉄・モリブデン・マンガン・亜鉛・銅・塩素………


説明されたけど、僕はいまだに把握しきれてない。収穫の終わった茎や根を一か所に集めて肥料も作ってるけど、到底足りないからね。海や周囲の森から探してくるんだってさ。


最後に土壌のpH管理までしてアオイの作業は完了だ。で、仕上げが僕なんだよねー。土中の微生物の活性化や作物たちのストレスを軽減するのに、僕の魔法がいいってアオイに言われたからね。頼られると嬉しくなるから、実は畑の手伝いを頼まれるとついウキウキしたりする。恥ずかしいから内緒にしてるけどさ。


精霊を錬成して、頼みごとをする。僕の精霊はけっこう我が強くて、頼みごとが気にくわないと威力が半減する。まあ大抵は頼まれてくれるけどね。


「頼むよ。おいしい野菜になるよう、楽しい気持ちにさせてあげてくれない?」


僕の精霊がアオイの畑へふわりと浸透していくと、いつも野菜たちはざわわっと葉擦れの音をさせる。うん、たくさん栄養を吸収しておいしくなってよ。僕、パパの温野菜サラダが大好きなんだよねー。


「ウゲツ~…好物のこと考えたー?猫さんたちまで楽しくなっちゃってるよ」


「…ごめん、温野菜サラダ食べたいなって思っちゃった」


失敗した。範囲設定を無意識に甘くしちゃったみたいで、畑の周りにいた猫たちがマタタビ吸ったみたいに転げまわってるよ。特にボス猫が首を支点にぐるぐる回転しちゃってる…


「ウゲツの心理魔法って汎用性高過ぎだよねー。人間専用だと思ってたけど、動植物に微生物まで対象ってのがすごい」


「僕は特に意識してないけどね。でも僕にしてみたらレビの方が目的のはっきりした魔法作れるからすごいと思ってるけどな」


「あはは、ありがとー!きっと俺たちってお互いが羨ましいんだね!そういえばこの前のミッションで捕まったタンラン人の尋問さあ、ウゲツがやったんでしょ?怖くなかったの?」


「敵だから別に怖くなかったよ、パパたちががっちり守ってくれてる状態だったしね」


先日のテロリストたちは僕らのミッションが終わって一時間以内にはパパたちが捕縛していた。で、草原に一時拘留されてたんだけどね。パパがふっと思いついたように「ウゲツってもしかしてこいつらに自白させられる?イヤならやらなくていいけど」って言い出した。


パパは僕がかなり制御力を高めたのを知っているので、もう最初の頃みたいに「絶対使うな」とは言わない。でも人間相手にはさすがに使ったことがなかったし、テロリストたちと対面するのが怖かったらやらなくていいよって言ってた。


「ええっと、正直言うとすっごくやりたい。あのイルカたちが可哀相で、実はみんなめちゃくちゃ怒ってるんだ。もちろん僕も。それでもやっていい?」


「あー、なるほどね。怒りに任せて制御が疎かにならない?廃人にされちゃったら本気で困るんだけどな」


「それはもちろん気を付けるよ。じゃあやっていい?」


「ぷは、いいよ」


僕はヘルゲ先生のガードに守られながらそいつらの前へ行き、全員へいっぺんに精霊を叩きつけた。でもそれは失敗だったんだよねー。一斉にみんな泣きながら自白を始めちゃって、何言ってるかわかんなくてさ。一回解除してから一人ずつかけ直しました。


聴取が終わってから、カミルには「ウゲツ、お前の能力イイぜ…」と舌なめずりされた。そんでヘルゲ先生には青い顔で「ガードがびびるほどの自白効果ってなんだ…!」と引かれた。


ヨアキムには「ウゲツの狂幻覚だけはかけられたくないですね」と言われ、さすがにこの拷問バッチ来いな天使にまでこう言われたらヘコんだよ。心理魔法って威力制御が難しいよねー…





  

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