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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
ルカ 光をもたらす
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オトコマエ作戦








僕とレティとクレアは、ライノの「集合マツリ」に頭を抱えていた。ライノが自重してくれるなら、アロイス先生にはナイショにしてもいっかと三人で話していたんだけど…


うん、大人でも自重って難しいんだよね。


僕ら、カイとカミルとヘルゲ先生がエレばあちゃんにどなられてるのを知ってるからね。三人にソックリなライノとレイノとスザクにも世界で一番難しいはずだ。


案の定、ライノは今週一回も休むことなく「集合マツリ」をした。その度に、ウゲツがめちゃくちゃ怒る。レイノの能力のおかげで言いたいことが全部言えるし、みんな慣れてきたからちっちゃい子たちの言葉もこなれてきた。



ウゲツ「ライノいい加減にしてよ。僕はまだちっちゃいからいいけどさ、レティの修練が遅れてパパに叱られたら許さないからね」


ライノ「えー、いいじゃん。お前だってこんなベラベラしゃべれんの楽しいだろ?」


ウゲツ「そういう問題じゃないよ。じゃあ集めるのは希望者だけにしてくれない?僕だってお片付けしたいよ。ただでさえ広くて苦労してんのに」


スザク「ウゲツはレティにベッタリだと思ってたけど、そこまでシスコンなのか…アオイ、お前も兄ちゃん大好きって言っていいぞ」


アオイ「スザクは普通に好きい~。私が大好きなのはパパだよ?優しいし~、かっこいいし~、アオイのこと大好きって言ってくれるし~」


レイノ「お前ファザコンだったのか…」


スザク「くっそ、これだからヘルゲに負けたくないんだよ!もー!」


レイノ「お前は何コンだかわかんねえな。負けたくないだけなんだな?」


ニーナ「アオイ~、ヘルゲ先生ちょっと細っこくない?私カミルパパみたいにガチムチで、性格が黒い方がいいなあ」


ノーラ「…黒いのは自分だけで十分…」


レビ「俺、キラッキラな人がいいなー!ライノ兄ちゃん、ここキラッキラだから俺はライノ兄ちゃんが好きだよ?」


ライノ「おう、俺もレビが好きだぜ!任せろ、お前はいつでも『会議室ルーム』に呼んでやっからな」


レイノ「でもよー、確かに毎日はマズくねえかライノ。お前まだ細かい調整できなくて、呼ぶやつを選べないから全員なんだろ…」


ライノ「バレた?」


レティ「そんなことだろうと思ったわぁ…ウゲツ、そんなに怒らなくていいのよ。ライノとレイノがやり過ぎたら、お姉ちゃんがぐちゃぐちゃにしてあげるから。ね?」


ルカ「ぐちゃぐちゃはやめよっか、レティ…あれ、クレア大人しいね?どうしたの?」


クレア「…えっとね。最近みんなの語彙が増えてるなって思って。ルームでおしゃべりして何日か経過したら、誰も私の使う言葉が難しくてわかんないって言わなくなったでしょ?」


ルカ「あ…そういえばそうかも」



僕は最近、クレアの使う言葉がよくわかるようになってる。それはみんな同じで、昨日なんてリア先生に国語のテストで褒められたくらい。



レビ「お母さんがねえ、ライノ兄ちゃんの能力を『カウンシル(会議)』って言ってた。レイノ兄ちゃんは『シンパシー(共有)』なんだって。きっと俺たち、クレア姉ちゃんの知識を会議で共有してるんじゃないのかな。それで影響受けてるって考えれば辻褄合うよ?」


クレア「…私はその推論をサラリと出したレビにびっくり…」


レティ「ほんとよねえ…ダイブアウトした後もこの感覚で話しかけそうになって困るわ」


ルカ「ねえライノ、レイノ。この能力はほんとにすごいし、これから僕らが得意なことをどんどん伸ばした上でルームに集まれば、他の子の能力も伸びると思うよ。でも修練だって大切だろ?誰だって濁り玉になんかなりたくない。このままじゃ『やめろって言ったのにライノとレイノが!』ってことになりかねないよ。僕はそんなことをアロイス先生に言い付けたくないし、ここに集まるのも好きだよ?だから…一週間に一回にしない?そしたらウゲツだって怒らないでしょ?」


ウゲツ「うん、そりゃ…そのくらいならお片付けをちょっと頑張ればいいんだし。ライノごめん、僕も言い過ぎちゃった」


ライノ「うー…わあったよ!俺、チビもガンガンしゃべるし楽しいだろうなって思って…ごめん」


レイノ「うん、俺も止めなかったもんな。悪かったな、みんな」


スザク「さすがルカだな、くるっとまとめやがった。まあいいか、ルカにゃ敵わねえもんな」


全「ウンウン」


ルカ「ええ?何それ…僕って怖い?」


レティ「あは…ルカはわからなくていいのよ、みんなルカが好きっていうだけ」


ルカ「よくわかんないけど…ありがと…?」



僕らは普段なら、きかん坊のライノたちに言うこと聞いてガマンしてもらうなんて芸当は出来た試しがない。だけど「会議」で話し合って、皆が納得して事が収束した経験は貴重だった。




それでも「会議」が終わってダイブアウトすれば、ルームの中での「脳内の爽快感」は少し鈍くなる。元の知識や経験に近い自分に半分くらいは戻っちゃうし、ちっちゃい子三人はまたしてもうまくしゃべれない自分にイライラする。


クレアだけはそんなに変わらないらしくて少し羨ましいけど、僕とレティはこれらの変化を「兄、姉」として俯瞰して見ている部分もあるから感慨深いんだ。


…なんか、先週より自分の思考がふかーくなった気がして、少し驚いちゃう。


ダイブアウトした後はアロイス先生が軽いカウンセリングをしたりするんだけど、今日はさすがに妙な顔をしてた。



アロ「…ねえみんな。ダイブ中に何か変わったことあった?」


全「ないよー!」


アロ「お片付け、うまくいったのかな?」


全「できたよー!」


アロ「…レティ、パパにも言えない?」


レティ「えっとお…」


ルカ「ア、アロイス先生!ごめんなさい、僕たち宝玉の守護がうらやましくて、もしかしたら自分たちも呼んだら深淵の意志が集まってくれないかななんて話してたんだ!壁ありの子は壁を突き抜けないようにおーい!って呼んでみよう、なんて…だからお片付け、ちゃんとできてないかも。ほんとにごめんなさい!明日からきちんと修練します!」



僕がいきなりそんなことを言ったので、レティはポカンとしていた。

うあー、レティしっかりして!ノッてきて!



レイノ「…あーあ、ルカばらしちゃったよー。まじめなんだからなー!」


ライノ「おれ、よんでもこなかったぜ?やっぱムリなんじゃん?」


スザク「おれは話せないかためしたけど、ぜんぜんダメだった。くそ、ヘルゲのガードはしゃべれるのに!」


アロ「あーあー…しょうがないなあ。ま、今回は正直に謝ったルカに免じてお仕置きはナシにしてあげるよ。修練はきちんとやろうね?」


全「はーい、ごめんなさい!」


アロ「みんないい子だね。さ、ルカとレティは教室へ行っておいで」



解散して、教室へ向かう途中でレティがポソっと謝ってきた。



レティ「みんな、ごめんねえ…私、パパにああ言われるとつい…」


ライノ「わーってるって!俺らが悪さすんのはいつものことじゃん?気にすんなよ」


レイノ「そーゆーこと!ルカもさんきゅな!」


レティ「ほんと…ルカ、ありがと。ルカが機転効かせてくれなかったら、パパは絶対気付いちゃったと思うわあ」


ルカ「あは、何も打ち合わせなしだったからね。それにレティはアロイス先生に弱いもんね、それもわかってる。何も悪いことなんてしてないよ。でも、ライノたちも助かったよ…悪役になってくれるなんて、男前じゃん」


プチ三バカ「いっひひ~」


ノーラ「…三人とも、かっこよかった」


プチ三バカ「まじ?」


ニーナ「うん、ルカ兄とレティ姉を守るなんてかーっこいい!」


スザク「よし、これからはオトコマエさくせんで行くか」


ライノ「スザクってたんじゅんだよな」


レイノ「オトコマエって何すりゃいーんだ?」


レティ「…まずは女の子のスカートをめくったら台無しねえ」


プチ三バカ「もうやらない」


ルカ「そだねー、自分にできないことをむりやりやるんじゃなくて、自分が今できることをがんばる方が男前かな…」


プチ三バカ「もうとばない」


ノーラ「すなおもかっこいい…」


プチ三バカ「すなおになる」


ニーナ「やだあ、もうすでにカッコイイ~」


プチ三バカ「いやあ…」テレテレ



すっかり仲良くなった5歳児組はキャッキャ言いながらパティオへ行った。ぼくとレティは目を見合わせてニッと笑い、お互いにサムズアップする。


そしてクレアはボソリと「バカとハサミは使いよう、か…」と呟いた。







  

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