留学 sideルカ
レティはライシャと意志疎通が可能になって、毎日すっごくご機嫌だ。レティはセリナさんにポーッとしてしまうことからもわかるように、妖艶なのに強さを宿しているような、凛とした美女に弱い。
憧れてるんだろうなー。お母さんのマリー先生のこと、すっごく尊敬してるって感じだもん。だからマリー先生みたいな人が自分の中に絶対的な味方として存在しているっていう事実が、レティにすごい安心感を与えてるらしい。
僕が地下室に籠っていた頃、レティはとにかく「自分がしっかりしなくっちゃ」と思い詰めていたと思う。身も心も強くなりたいっていう気持ちがとても大きくて、でもなかなかそうはなれなくて。そんな彼女が急に焦燥感をなくして、地に足の着いた雰囲気になった時、僕らは「レティって頼もしいな」と思うようになっていった。ほんとに、よかったねレティ。
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僕は今十一歳。中等養育プログラムが始まっているわけだけど、リア先生は「猫の庭の子は初等も中等も関係ないわよね…」と少し呆れている。そーだよねえ、クレアのおかげでみんな潜在的な知識量がぶっ飛んでるから。
さらにユニークを顕現させているせいで、その能力に関係した学問に関しては抜きん出てる子も多いわけで。まあ、僕は知識よりも魔法制御とか体術に特化してる感じだけどね。
で、僕らの中から数人にアロイス先生からとある選択肢が提示されております。
僕と、レティと、クレアにだね。
「んーと、つまり猫の庭って特殊能力者の保護施設でもあるんだよ。だけどこの中だけしか人間関係がないっていうのは世界が狭いだろう?だから緑青の街や金糸雀の里へ遠足に行ってたんだけど…白縹の学舎へ一か月くらい留学させてもいいと思ってるんだ」
「あー…なるほど。でもなんでこの三人?」
「君たちなら秘匿も問題ないし、周囲とうまくやれると思ってね。スザクとライノとレイノは秘匿できるか心配でちょっとまだ様子を見たいし、ニーナとノーラは真菌の研究に夢中で行きたくないって言うし、七歳児組は単純にまだ早い。三人はどうしたい?猫の庭から通ってもいいし、宿舎で泊まり込みでもいいよ」
「うっは…面白そう。僕、行ってみたいな。とりあえず通いの方がいいけど」
「私もぉ…殺傷力が高いとみなされる能力は、秘密にすればいいのよね」
「それは面白そうです。宿舎も興味はありますが、懸念は私たち三人が抜けた後のストッパー役がレビとウゲツしかいない点ですね。通いの方がいいと思います」
「ん、わかった。じゃあ三人は白縹学舎へ留学決定!設定としては『親が長期休暇で村へ滞在するので、一緒に来た』ってことになるよ。学舎への挨拶時には僕とコンラートとオスカーが同行する。ヘッドセット着用可、何か困ったことがあれば通信してきていいからね」
「はーい」
「あ、能力のことだけど…ルカはインビジブルを一部だけ開示していいよ。コンラートと同じ目に遭う必要はないから、手に持った物を消せるってことだけにしておくのはどうかな。手に持ったら消えるけど、触れば何か持っているのはわかるってことにすれば、窃盗関係の疑いも起きないだろうし。クレアは当然、ちょっと勉強好きっていうだけにしといてね。リアの娘ならさもありなんってことになるだろう。んでレティは、自然の体現者とか宝玉ってことはナイショで。土魔法が得意っていうだけで、刀剣や金属の生成は見つからない方がいい。岩礫が出せるって程度に押さえてね」
「はーい…」
うわお、意外と制約多かった。
僕の場合はモノクルを常時装備にしておきたいから、レア・ユニを隠すっていう選択肢がないんだよね。モノクルを不可視にしちゃうと、うっかり外した時にどこいったかわからなくなるからさー。
クレアもまさか八歳で古文書ばんばん読めちゃうとか、外国語の書物を原文ですらすら読めちゃうなんて言えないもんね。一番演技力が必要なのってクレアだから大変だろうな…まあ、難なくこなすだろうけど。
あ、レティはマザーの品質検査では偽装していて、宝玉級ってバレてないから秘密なんだよ。それこそこの年齢で宝玉級だってことになったら、大人たちが言うところの「広報部への禁忌マツリ再び」ってことになるからなんだってさ。十四歳で宝玉級になったニコル先生が広報部に騒がれそうだったから、ヴァイス総出で阻止したらしいよ。
ん~、ちょっと窮屈かもしれないけど。
でも同じ白縹の兄弟たちに会えるんだもんね、仲良しが見つかればいいなあ。




