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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
自然の体現者
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黄金の砂漠 sideレティシア

  





朝一番で面白いものを見られたとパパは上機嫌だった。私もちょっと楽しかったし、もっと話したいからライシャがいるといいなって思いながらダイブしました。


するとそこは――光で何も見えないような、いつもの私の世界ではなくなっていた。


黄金の砂丘と、黄金の塔。そして黄金の…オアシス。黄金のヤシがゆれるそのオアシスには、目が覚めるような濃い水色の湧水が滾々と湧き出ていた。その水の上にいる、透けるような長いワンピースを着た乳白色で半透明の女性…


彼女はまるで空中に椅子でもあるかのように足を組み、膝の上で頬杖をついてしげしげと私を眺めていた。


( んふん?早速来てくれたのね私のレティシア )


「ライシャ…!さっきは話しかけてくれてありがとう。あの…なんかすっかりここの様子が変わってるんだけどぉ…」


( 私が干渉できるようになったから、あなたの世界の構築を始めたのよ。ところで【朱雀】はどうだったぁ? )


「また俺をいたぶるつもりか女豹めーって叫んでたわぁ。ライシャってすごいのね?ヘルゲ先生のガードをあんなに怖がらせるなんて」


( あっは!変わらないわねぇ、あいつは図体のデカいガキ大将なのよぉ )


「ぷふっ あはは!ライシャおもしろーい!」


( ほーんと…突っ走って勝手に死んだ罪は重いわよ~。後追いした二人もお尻ペンペンじゃ済まされないし…ま、これからゆっくり同窓会を開く機会はあるでしょ。ところで私の名前はライシャでいいの?どうもあなたがそう思ってるから、剣の形態じゃなくて人型みたいなんだけどぉ )


「うん、ライシャが嫌じゃなければそう呼びたいな。剣とかソードって言うよりも…なんとなくライシャとは一緒に戦っていく親友になれそうな気がして」


( んふ…上出来ね、そしたら私もレティって呼ばせてもらうわ。深淵の意志の流儀としては主従関係が多いし、真の名で呼ぶのも他人行儀な気がしてたから。でも今からちょっとだけ、きちんとするわね? )


「 ? うん」


ライシャはすうっと立ち上がり、湧水につま先だけで優雅に立っているかのようだった。そして胸に手を当てて、ふわりと頭を垂れる。


( 輝る黄金、我が主レティシア。私はあなたの剣であり守護者でもある。あなたと共に生き、共に喜び、共に苦しむわ。どうぞ、あなたのそばにいさせてちょうだい )


私はとっても…とっても、嬉しかった。こんなに美しい人が私の中にいる。この人は私と共に生きてくれる。こんなに頼もしくて、誇らしいことがあるだろうか。


セリナさんに教わった動きを念頭に、今の私にできる一番美しい所作でライシャへ礼を返す。


「私のところへ来てくれてありがとう、ライシャ。あなたに恥じない、強い人間になりたいの。私を、助けてください」


ライシャはとろけるような、愛しさを隠さないママのようなきれいな顔で微笑んだ。







修練の間じゅう、私はライシャとおしゃべりした。本当はこんな風に深淵の意志を具現化などできる年齢ではないし、通常であれば見えない存在のまま世界の構築だけ進めている頃なんですって。だからガードや守護のように盾として出すことはまだできない。


だけど私の育っている環境は特殊すぎて、そのおかげで世界の構築と同時に意思疎通までできるようになった。ただし精神的に成熟しているわけではないので、それを待たないとライシャの本気は出せないらしい。…彼女の「本気」って言った時の不敵な笑顔に背筋が凍ったんだけど、どういうことができるようになるのかしらね…


ともあれ心の中にライシャが常駐していることに変わりはないし、彼女が頼もしい味方だというのが私にとっては一番重要なこと。だからすっごく満たされた気持ちで私はダイブアウトした。


そしてパパへライシャと会えたことを報告しに行った。


「レティ、ライシャと話せたんだ?」


「うん、すっごくきれいな人。ガードが言った通り、雰囲気がママそっくりよ」


「へえ!見せてよ」


私が映像記憶を見せると、パパはため息をついて「これはすごい、人型なんて取れるんだ…それにレティの世界はほんとにゴージャスだな。こんなに強くてきれいな人がレティの中にいるなんて心強いね」と言った。


「んふふ、私もそう思うわ。あぁ、ママとセリナさんとライシャに囲まれておしゃべりしたいなあ…」


「あ、なるほど…レティはほんとにマリーみたいなタイプの美人に弱いんだな」


呆れたように言うパパにカチンと来て、「パパの娘ですから」と言い放ちました。家の外でのレティはデリカシーのないパパを容赦なく叱るわよぉ?


パパは降参、というように両手を上げて「ぐうの音も出ないな、仰る通り」と笑った。





*****





その日の授業が終わってみんなと遊んでいた時、ライシャのことをみんなに話した。映像記憶を見せてあげるとスザクもアオイもウゲツも興味津々でライシャを見つめている。


クレアは「今の所完全な自然の体現者はヘルゲ先生とニコル先生しかいませんから不明な部分も多いですけど…深淵の意志の形態というのは多種多様だったのかもしれませんね。それこそ一人一人違うっていうくらいに」とため息をついて半透明の美女を見ていた。


でもレビに「ねえねえ、どんな話したの?」と言われて細かく会話を再現していてはた、と気付いた。


「…あら?ライシャ、ちょっと不思議なこと言ってたかも」


「どんなことですか?」


「私ったら聞き流してたけど『さすが宝珠の影響力が凄まじい環境』って言ってた気がする」


「―レティ姉ちゃん、宝玉と聞き間違ったんじゃなくて?」


「ううん…確かに宝珠って言ってた。宝珠ってなに?…ライシャ」


( そこの二人よ。まあ、時期が来ればわかるわ。今は説明するのが難しいわね )


「スザクとアオイが、宝珠?」


私とクレア、レビが二人を見ると、視線を受けて「ん?なんだー?」なんてスザクがキョトンとした。アオイも「ん~?」とかわいく小首を傾げている。


クレアは「いいえ、二人にもウゲツにも、早く深淵の意志が具現化するといいですねって話してたんです」と笑ってごまかした。そして二人が納得してこちらへの興味を無くすと、声を顰めてクレアが言った。


「…アオイはともかく、スザクにそういうことを言うと、意味がわからなくても天狗になりかねません」


「…確かに」


「…了解」


ちょっとしばらくは宝珠の件を大々的に話すべきじゃないわねという話になり、でもパパやヘルゲ先生、ニコル先生には報告要だと私たちは判断した。ルカにもこのことをこっそり話し、四人でパパたちと空き部屋へ集まりました。


「宝珠ね…」


「あー…ヘルゲ、もしかしてあの透明な結晶かなぁ~」


「そうだろうな。だがあれが何なのか、さっぱりわからん。スザクたちが生まれた時からガードも守護もわからんと言っている」


「一応ライシャさんからそういう情報が得られただけでも収穫、ということでいいのではないでしょうか。時期がくればわかると言ってましたし。ただ、スザクあたりはそれを聞いたら調子に乗ってしまいそうな予感がして黙っています。話すかどうかは先生方にお任せでいいですか?」


「あ~、スザクは有頂天になりそうだよねえ…」


「…それ以前にあいつは『ホウジュって何だ』って言いそうだがな」


「あー…」


そんな感じで結局本人たちには詳細が分かるまで言わないということになり、みんなで一階へ降りていった。するとスザクとライノ、レイノがダダーッと私の方へ走って来る。なんだか深刻そうな顔をしてるわ、何かしら。


「なあレティ!ライシャってほんとにあの透明な見た目なんだよな?」


「ええ、そうよ。乳白色で、半透明っていうか。たぶん守護と同じような感じだと思うけどぉ?」


「おいマズいぜ」


「だな、マズいぞ」


「な、何が?」


「「「服もスッケスケじゃん?パンツ見えないように気を付けろって注意した方がいいぜ!」」」


キキキン☆ ザクザクザクゥゥ!


デリカシーの無い三匹の子鬼には、パパ方式の脅しが有効よね。ダマスカス鋼のうっすーい刃物を足の間に刺してあげるわねぇ?


「おお…心配するポイントが間違っていると、そういうニュアンスなのか、この鋭さは?」


「その通りよ、さすが物分りいいわねレイノ」


「ユッテと同じ殺気を感じる刃だ…レティ、悪かった」


「いいのよライノ、わかってくれれば」


「ライシャは露出狂ではない。理解した」


「一言余計ね、スザク?」 すぱっ


「ぬああああ、ズボンがトイレらくらく仕様にぃぃぃ!ん?おお、これ動きやすいかもしれん…」


( …レティも苦労してるのね。まるでガードの幼少期のようだわ… )


ライシャはドッと疲れたという声を出し、その日はもう何も話さなかった。






  

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