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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
自分を知りたい子供たち
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インビジで消し消し sideルカ

  





午後になってレティが帰ってきた。クレアが事の経緯を話すと、レティの金色の瞳はキラキラと輝き始めた。やっぱりクレアのお仕置き、日常チャーハン事だったんだー、ソウデスカー。


「ルカ、存分に練習できるわねぇ」


「いやいやレティ、僕だってできるかわからないのにさあ。誰が罰ゲームになっちゃうかわからないんだよ!?」


「んふふ、クレアとレビの連携プレーをなめちゃだめよルカ」


レティがこっそり教えてくれたのは、思わず目玉が裏返りそうな策略の嵐だった。まずクレアは正直にアロイス先生へ景品の依頼とゲームの内容を話す。ちなみにその手の甘味依頼はアオイの野菜と相殺になるので、正直に話せばよほど健康に悪いと判断されない限りは通ってしまうらしい。


そしてレビは罰ゲームが発動した場合、被害に遭う大人へ最初から根回しをしておく。つまりカイとカミルへは襲撃があることを伝えてイイ感じに迎撃してねと言っておき、アロイス先生にはつまみ食いに最適な罠の用意とお仕置き準備期間を与えてしまうわけで。もうこんなの罰ゲームじゃなくて刑罰だよ…


しかし何気に恐ろしいのは、この計画の要である僕への期待度が青天井だったことだ。


「問題ありません、ルカなら遊んでいるうちに制御できるようになります」


「いや、ちょっと待ってクレア。僕は他人を消そうとするのがほんとに初めてでね?」


「だーいじょうぶ!ルカ兄ちゃんなら狙い撃ちできるよ、インビジブルの支配者だもーん!」


「いやいやレビ、そんな簡単ではなくってね?それとその支配者ネタ忘れてくれないかな?」


「あら、ルカはアオイたちを喜ばせるためならやっちゃうと思うわぁ。私も今日はレッスンで疲れたから甘いもの食べたいし…ね?」


「いやいやいや、何でおねだりされてるの、僕…」


もう罰ゲームは子鬼三匹になるのが決定事項で、他の子たちで甘味を分け合って優雅なティータイムを過ごす気満々なのが泣ける。これ全部が僕の双肩にかかってるとか、どんな大規模ストレス魔法ですか?


体がナナメになって、口からラック・チェインのマナが全部僕から抜けていってる気がする。アル、あんな風に言ってくれたのにごめんね…僕は今切実に自分自身へラック・チェインをかけたいよ。


そんな風にダハーッと脱力している僕のところへ、元凶の子鬼たちがやってきた。

もう僕に何も言うなよ?絶対言うなよ?


「ルカ!俺たちは真ん中のマスに『へそ』って書くからよ!頼むぜ!」


言っちゃったよー、お約束だよー、インサイダー取引だよー。

ほんとに白縹かお前ら?


「無理。僕は制御できてないって言ったでしょ」


「だーいじょうぶ!ルカならできっから!」


だからそれヤメテまじで…





*****





トボトボと草原へ行くと、ニーナとノーラによる華々しい横断幕が二本の木の間に括り付けられていた。


【:*.;".*・インビジ消し消し!ビンゴ大会~!・*.";.*: 】


ねえ、どうして君たちみんなして僕のライフをケズっていくの?僕のストイックな半年間を見て、一体何を感じ取ったって言うの…?


草原に膝をついた僕の側へやってきたレティは「ルカ、強く生きて!」とこぶしを握り締めて真剣なエールを送ってくれた。うん、そこまで絶望してないから大丈夫だよレティ…


気を取り直して子鬼三匹を見ると、一生懸命ニーナとノーラがペイント方陣を起動させているのが視えた。何やってるのかなと思ったら、三人の体に部位分けのラインを引いている…


「ねえ、言っていい?よくそういう線を描かれた図がお肉屋さんにあるよね。ライノの腹筋てバラ肉なの?スザクの両手が手羽に見えるよ?レイノの肩ってロースなの?」


「ルカ落ち着いてよ…僕、段々レアユニ発現してほしくないなってネガティブになってくる」


「…ウゲツ、きっと君の時は『本物は誰だ』ゲームになるんじゃない?」


「言わないでってば…」


ヤケクソ気味になった僕は、全員が書いたビンゴカードをざっと眺めた。

子鬼三匹はバカ正直に真ん中へ「へそ」と書いていた。そして僕が自分自身を消そうと思った時に最初に消えた「右腕」だの「左足」だのと書いている。


そして他の子たちの真ん中のマスを見て、僕は目を疑った。

…全員揃って「金的」と書いているではありませんか。そして「眉間」「乳首」「人中」「レバー」「喉仏」等々。何なの君ら、乳首以外全部急所じゃないのー!


「みんな鬼だね」


「期待してるわぁ、ルカ」にっこり


うおぅ…久々に見たよ、レティのソレ。どうしてあの夫婦の怖い笑顔だけきっちり受け継いでるの。


はぁ…しょうがない、やったろうじゃん!

わくわくしているスザクの股間をじーっと睨む。


マナを錬成し、心の中で「お前ら、出番だぞ。集合」と号令をかけた。するとインビジブルのマナはざあっと僕の手の平で収束され、「どこを掻き消すんだよ、早くオーダーくれ!」とばかりに暴れ始めた。


「黙れ、整列。隊列はクロスだ、ポイントマンは突出しすぎるなよ。火力集中…掻き消せ!」


青く光るマナは踊るように放出された。一直線ではなく、まるで猛禽類が獲物へ襲い掛かるように滑空してスザクへ向かうのがモノクルで見えた。


スパン!と当たったのはもちろんスザクの「金的」だ。狙いが精密なのは変わらなくて本気でホッとしたけど、ズボンごと靄がかかったように一部が見えなくなっているだけだ。

やっぱりマナが貫通してないな…


隣で「どこに当たった?なあ、ドコ消えてる?」とキョロキョロしていたライノとレイノは、スザクの股間を見て「おおぅ…漢の証が…っ」と震えあがった。


「んー、貫通力が足りないな。自分を消す時より出力が必要なのかな…」


「おいいい、ルカ、頼むぜー!」


「わかった、今度こそ貫通させるよ」


「ちげーよ、狙いがおかしい!それに貫通とか言うな、こえぇ!」


「あははー、だーいじょうぶ、僕ならできっからー」


「ひぃ!?」


なぜか僕の笑顔で更に震えあがった三人の股間へ順番にマナを叩きつけ、最後のライノで無事に貫通させた。自分を消す時よりも現状で三倍のマナが必要なのか…


たぶん僕の収束が問題なんだな。練習して瞬発力を高めればマナの消費量も減る筈だ。数の暴力はここの流儀じゃない。高品質の暴力を少数精鋭でってね!


だんだん楽しくなってきた僕は、とりあえずマナを三倍にしたまま三匹の子鬼へ向かってスパンスパンとマナを叩きつけていった。


おへそ以外のあらゆる急所を貫通させられた三人は「異様なメンタル損傷率だ…」と言ってぼこぼこに穴のあいた自分の体を見下ろした。もちろんワースト三位を子鬼が独占し、後で罰ゲームと言う名の刑罰も存分に受けることになりましたよ。


で、肝心の「他人を全部消せるか」という課題については「まだできない、でも将来的には確実に消せる」というところまで感覚を掴んだ。要するに他人を消すためのマナ錬成量と収束力が圧倒的に足りなかったんだ。そこはもう仕方ない、地道に「アロイス効果」の訓練のみでしょう。


はー、面白かった!と思いながらみんなを振り向いた時、アオイはぷるぷる震えて「ルカがこぁい」と半泣き、ニーナとノーラは頬を染めて「ルカ兄の瘴気、さいっこー…」とうっとり、クレアは「やはり私の目に狂いはありませんでした」と満足げ。そしてレティには「いーいドS具合ねルカ。私も負けていられないわ」と恐ろしい部門でのライバル認定をされてしまった。


ちなみにウゲツとレビはちょっと遠い目をして海を見ていた。悪かったよ、だからそんな必死に股間を押さえないで?っていうか金的って書いたの君たちじゃん…?






  

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