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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
自分を知りたい子供たち
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子鬼三匹 sideルカ

  




猫の庭へ無事に戻って来れて、僕はあまりにもすんなり日常へ移行できていることに驚いてる。アロイス先生たちの家も教室も元の場所へ戻ってるしさ。もちろん僕の家もB-501のままで、朝になるとママが「ルカ、起きてね」と優しく声を掛けに来てくれる。


あ、でも父ちゃんとママが前よりベタベタするようになったかな。よくママが「もう、コンラート!」なんて言いながら父ちゃんに肩を抱かれて顔を赤くしてますよ。好きな人どうしなのに半年も別居してたらこうなるんだね、勉強になりました。


「みんなと遊んでくるねー」


「おー、いってこいや」


「ルルルカ!い、いってらっしゃい…コ、コンラートったら!ルカに見られちゃったわ…」


「いーじゃねーかよ。ルカ、晩メシまで帰って来んなよ~」


「りょうかーい」


がんばれ父ちゃん。地下室で僕を支えてくれた恩を返すよ、絶対夕方まで戻らないから安心してね。


一階へ降りるとクレアとレビが難しそうな話をしている。「経験会議」で知ったことだけど、二人はほぼ毎日ミーティングをしているんだ。僕を見つけるとレビはパッと弾けるような笑顔になり、「ルカ兄ちゃん!来て来て、ちょっと話聞いて!」とぴょんぴょん跳ねて手招きした。


「あのさ、ルカ兄ちゃんが他人を消せるかどうかの実験しようよー」


「あー、それかあ。父ちゃんに頼んで被験体になってもらおうと思ってたんだけど。もし失敗して丸裸にしちゃっても、父ちゃんなら慣れてるからさ」


「それがですね、昨日の『経験会議』の後でスザクたちが自分で試してもらおうぜって張り切ってたんです」


「うぇ!? なんで進んでそんなことしたがるかな…」


「スザク兄ちゃんたちねえ、また面白い遊びを考えついたって言ってた。ルカ兄ちゃんならできるって言ってたけど」


「ほっほーぅ、遊びね…スザクらしいや、僕の努力の結晶で遊ぶのか…」


「うっは、ルカ兄ちゃんかっこいー!いま王様のマナがドヴァドヴァ出てる!」


「というわけでお仕置きがてら好きに彼らで実験していいと思うんですが、どうですかルカ」


「いーですとも、顔面悪即斬に匹敵する状態にしてやりましょう」


僕らは三人でハイタッチをした後、何気ない様子を装って席を立った。あの子鬼三匹はどこじゃーとパティオの方へ歩くと、かわいい仔猫を五匹連れたアオイとウゲツに会った。二人は僕を見て足から脳天まで何かが走り抜けたようにブルルッと震えた。


「ルカ…ニーナとノーラが見たら涎を垂らしそうな雰囲気だよ…?」


「どういう意味かなウゲツくん」


「アオイはどうすればいい?レティはセリナさんのトコ行ってるし、ストッパーがいないよ」


「アオイは心配症だなあ、ここにクレアがいるじゃーん」


「あ、失敗しました。これではお仕置きの首謀者一味だとバレてしまいます」


「クレア姉ちゃん隠す気ゼロだね!あははー、俺も首謀者一味だ~」


クレアはかわいく笑いながら、レビも無邪気に笑いながら、まるで僕が悪党の親玉みたいな言い方をしましたよ。失礼な、逆に僕は子鬼三匹をちょっとお仕置きしに行くだけじゃないですか。


キョロキョロと周囲を見渡したら、草原で遊んでいる七歳児組を発見。さーて、どうしちゃおうっかなー。


出窓で頬杖をついてじーっとスザクたちを目で追った。ターゲット、ロック☆オン!遠隔っていうほど離れてないから余裕ですよ。君だよねー、僕のおっぱいを星形にしてくれたの。そのTシャツ、胸のとこだけ星形にくりぬいちゃおう。


「うおー、なんじゃこりゃー!」


なんじゃこりゃではありません、悪霊避けでしょ。

ハイ、次はライノね。すごい鍛えたって言ってたよね。その腹筋で悪霊退散してくださいよ。というわけでお腹の部分だけシャツを消します。あははー、たまにユッテ先生が着てる女の人用のスポーツウェアみたいだ。


「ぎゃー!」


レイノはどうしようかなー、胸に悪即斬じゃ喜ばれちゃいそうだもんな。じゃあお尻だ。ズボンに「斬」の字だけをくりぬいて終了!


「レイノ、お前…っ 尻が斬新!」


「うわーっ!」


スザクのアラートが間違ってる。斬新の「斬」じゃありませんよ。


ようやく僕が窓からにっこり笑って手を振っているのに気付いた三人は、ダーッとこちらへやってきた。ふふん、参りましたかぁ?反省しましたかぁ?


「「「 ルカすげーな! 」」」


「あっるぇ~、なんで目が輝いてるん?なんで喜んでるん?」


「ルカ…やはりレティがいないとお仕置きの効果が半減です。私たちはまだ未熟なドSなんですよ…」


「俺は半減じゃなくって反転だと思うなー!喜ばせちゃダメじゃーん!」


クレアとレビにダメ出しされて、勝った気になってた僕は打ちひしがれた。やっぱりこの三人は一筋縄じゃいかない…





*****




みんなと草原の片隅にある公園で遊具に座ってます。僕はお仕置きが不発でちょっと脱力気味だけど、ガヴィが作ったブランコに乗って子鬼たちのキラキラした目を半眼で見ています。


「ルカ!俺たちを消してくれ!」


「あー、はいはい。できるかわからないけどね。で、もしうまく消えたらどーするの」


「全部消えたら普通に戦術へ組み込めるだろ。そーじゃなくて中途半端に消えた状態でいいんだよ」


「…はい?」


「「「 ビンゴゲームができるだろ 」」」


子鬼三匹は僕が自分自身を消そうと四苦八苦していた時、右腕だけ消えたりお腹に大穴が開いたりしていたのを面白いと思ったらしい。紙に九つのマスを描いて、自分で「消えそうな場所」を記入する。僕の消した場所がヒットして縦横斜めに三つそろえばビンゴってわけか。


「景品は何がいーかなー!」


「やっぱさあ、アロイス先生に言って晩メシのリクエスト権つーのは?」


「えー、リクエストは言えば割と通るじゃん」


ビンゴを承諾したわけでもないのにどんどん進んでいくイベント会議に、僕はどっと疲れが出て参りますよ。もーいいよ、好きにして?

僕ががっくりと項垂れていると、隣でクレアがコロコロと笑った。


「三人とも緊張感のないゲームがお好きですね。スリルがあるのがイイと言っていたのはハッタリでしたか…」


「お、なんだよクレア!そんなことねえぞ!」


「だって景品がごはんのリクエスト権だなんて…ヌルすぎてちゃんちゃらおかしいです」


うふぉあ!なんかクレアが怖いっ!


「じゃ、じゃあどうするとスリルのある景品になるんだよ!」


「景品は今から私がアロイス先生に交渉してきます。第一位は『屍の宴スイーツセット』、第二位は『虎猫亭のいちご大福』、第三位は『ヴァイス宿舎のぷるぷるわらび餅』です」


「なーんだよー、どこがスリルなんだ?」


「ふふ、最後までビンゴにならなかった下位三名には罰ゲームが課されるんですよ。ワースト三位は『カミルさんへ素手で攻撃』、ワースト二位は『カイさんへ素手で攻撃』そして栄えあるワースト一位は…」


「い、一位は…?」ゴクリ


「『厨房へ忍び込んでつまみ食い』です」


「ヒィィィィ!!」


クレア、それやばい!ほんとにやばい!ママも怖いけど、アロイス先生のお仕置きはホンモノだから!お仕置きレーション大人味、今度こそ僕らに適用されちゃうから!


全員の血の気が引いている中、クレアだけが平然として三人へ「さあさあ、どうする?」とばかりに笑顔で詰め寄っている。そして負けず嫌いな子鬼三人は「くっそ、これくらいで怯んでいられるかあ!」とクレアの策略に乗っかった。


「ふふ、では今からアロイス先生へ景品の交渉をしに行って参りますね。ゲームは午後になってレティが戻ってから全員でやりましょう」


「お、おう…」


「うおー、ルカ!頼んだぜ!」


「えー、だって制御できないから練習しようって話じゃないか。僕には何もできないよ?君らが言い出したんだからさー、公正にねー。負けても恨みっこナシで」


クレアが何を考えているか知らないけど、一応この三人への制裁行動だとは思うんだよね。ところでさっきからニーナとノーラを含めた他の子たちがおとなしい。いいのかなあ、強制参加で。


僕が何とも言えない顔でみんなを見ていると、不安を吹き飛ばそうと子鬼三人は草原を「ふおおおおお」と叫びながらランニングしている。いいのかな、胸とお腹とお尻が見えたままなんだけど?


で、他の子を見ると…


「クレアの作戦なら、罰ゲームはあの三人だと思うなァ」


「…ん。ルカ兄の訓練を面白がっちゃ、ダメ」


「アオイねぇ、一位のすいーつが食べたーい」


「俺、わらび餅っ」


「僕、どれでもいい。でもどうせなら一位がいいな…」


ニーナ、ノーラ、アオイ、レビ、ウゲツの順に、発言が余裕ですね。もしかしてクレアのああいうお仕置きってここ半年で常態化してたのかな?どういう進化の仕方しちゃってるのクレアぁぁぁ…







  

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