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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
自分を知りたい子供たち
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経験会議 sideルカ

  




みんなと再会の挨拶も済み、泣いていたアオイとニーナとノーラも落ち着いてくれた。しばらくするとアロイス先生がやってきて、「おかえりルカ。ようやくみんな揃ったね。じゃあ修練始めようか」と言った。


アロイス先生にはこの半年の間に僕の心に起こった変化は逐一報告している。最初の頃は無理に修練すると深淵に突き抜ける可能性があるから無理をするなって言われてた。でも僕が落ち着いて心の整理を終えた時に心の景色が変わり、それは僕という自我がかなり定まってきた証だと言われた。


「今日はみんなでルームに入るだろ?守護を出しておくから、存分にどうぞ」


「うっし!久々にルカもいるし、張り切っていくか~」


ライノはやる気満々でダイブし、僕らはほどなくして全員ルームに集まった。


「うあ…ライノ、ルームの安定感が抜群になったじゃん」


「お、わかるかぁ?ほんとはもう守護に頼らなくても大丈夫だと思うんだけどよ、なんつっても俺らまだ未熟だからなー。過信しないようにまだ守護に頼んでるんだ」


わ~、あの問題児三人が謙虚で驚くよ。でもレティに言わせると「この半年間で三人がやらかしたことを知ったらそんな感想吹き飛ぶわ」ということだったけど。


ライノが「経験会議」をやろうぜと張り切っていると、クレアが静かにストップをかけた。


「ライノ、ちょっと待ってください。ルカにきちんと許可を得る必要がありますよ。―ルカ、『経験会議』は互いの経験を一瞬で相互理解する能力です。以前レア・ユニークを制御する過程で経験した想いはウゲツへ渡すと言っていましたけど、この能力で繋がっている者全員がそれを共有することになるんです。どう思いますか?」


「…全員、繋げようと思ってるんだよね、ライノは」


「ああ。ルカがこうして乗り越えて帰ってきているところまで理解できるなら、俺たちだって大丈夫だろ?」


「僕はいやだな…もうこのことで誰も泣かせたくないよ。別に隠したいわけじゃないけどさ」


「ではルカ、私からの提案です。ルカの経験を理解したいのは全員同じ気持ちですが、ワンクッション置くのはどうでしょう。私とウゲツがまず経験会議でルカから直に繋げさせてもらいます。ウゲツは元々もらう予定だったから問題ありませんよね。そして私は半年の間、ルカの状況を聞き続けてはみんなに伝えていたのであらかた理解済みだからです。他の子へは私から経験会議で知らせましょう」


「んー?でもその場合、僕がみんなの現状を把握するっていう当初の目的は?」


「ご心配なく。私が全て網羅しているのですから、ルカは神経を研ぎ澄ませていただかないと飲み込めない程の情報量を渡して差し上げますよ?」


「うっは…了解。それならいいよ」


「あー、クレア。俺とレイノ、スザクは直に繋がせてほしい。ダメか、ルカ」


僕はライノたち三人を見た。瞳には強い光が宿っていて、僕はその強さに負けた。


「わかった、いいよ。でも直に繋がない他の子はさ、自分の事を弱いだなんて思わないでよ?逆にこれは僕の弱さから出たわがままなんだからさ」


「ルカが弱いってどういうこと~?ルカは弱くなんかないよ、アオイは知ってるよ?」


「んーとさ、だからね、僕はみんなに弱いんだってば。大好きなみんなが泣くのは困っちゃうんだ。まあライノたちは少しくらい泣けよって思うけど~」


「「「 兄貴ひでぇ 」」」


はっずかしー…

でも半年間みんなと離れていて痛感したからね。ライノたちに関して言えば、彼らはもう「男」だと思うんだ。あんなに強い光を宿した男に、泣かれたくないから見せないなんていう選択肢は失礼だと思うからさ。


「えへへ、ルカ兄ちゃんは俺たちが大好きだってさ!んじゃ甘えちゃおうよアオイ~」


「え?え?そうなの?そういうことなの?じゃあ誰も弱くない?」


「ふふ、だーれも弱くないわよぉ?私だって甘えちゃうつもりだもの」


「そっか、レティが言うならそうなんだね!わかったぁ~」


一番困惑していたアオイが落ち着くと、全員が納得してくれたみたいだった。ニーナとノーラは元より理解してくれていたようで、レティと目を合わせてコクンと頷いていた。


「よーっし、んじゃやるぞ!ウゲツもいいか?」


「もちろん。ルカの経験値をまるっと貰って、僕はラクしてレアユニを獲得させてもらうよ。ごちそーさま、ルカ」


「ぶは!言うようになったねウゲツ~!その時になって泣き言ほざいたら爆笑してあげるからね?」


僕とウゲツはお互いの拳をごっつんとぶつけた。ウゲツは「そんなおいしいネタ、提供する気はないよ~」と言いながらニッと笑った。


ライノが六人へ『経験会議』の招集をした。

その時の感覚は、なんと言えばいいのかほんとにわからない。

僕の半年間がギュワッと吸い出され、他の五人へ駆け巡った。

他の五人の半年間もギュワッと僕へ押し込まれた。

これはクレアが言っていた通り、神経を研ぎ澄まさないと目を回しそうだ。他の五人は僕の経験だけが新しい記憶だけど、僕にとっては五人分の経験が新しい記憶だから。


みんなは必死だった。僕の力になれない代わりに、自分の力を底上げしまくる努力ばかりしていた。特にニーナとノーラは自分の非力さが嫌で、涙ぐましいほどの勉強っぷりだ。もちろん他の子も、恐ろしい進化を遂げていた。


ライノが「解散」と言うと、僕ら六人はちょっとだけぼんやりしていた。そして心に流入してきたお互いの「経験値の奔流」が落ち着くと、クレアが他の五人へ「経験会議」で伝え始めた。僕はその間、他の子より多い情報量を一生懸命飲み下していたんだけどね。


「…うわー、みんなすっごいじゃん。ここまでとは思わなかった!すっげ~!」


「ふふ、みんながんばったでしょ?」


「うん、レティもすごいよ!何だよあの切れ味の刃物!うーわー」


「…俺はルカが変わった理由を理解した」


「俺もだ」


「え…ライノとレイノの目が冷めてて怖い。僕、そんなに変わった?」


「ルカ、お前さぁ~!アレだよ『きちくドえす』って奴になったんだな!」


「はぁ!? スザクひどくない!? なんだよそれ!」


「えーと…ルカ、僕もちょっとそう思った。マナに向かって『誰の許可を得てそんな場所にいるんだ。戻れバカ野郎』ってすごいね。でも鬼畜ドSがコツなら、僕ってもしかしてレアユニになるべくしてなったのかも。楽勝だよこりゃ」


「わぁお…ウゲツ、僕その言葉を忘れないからね…?」


ひどいよみんな…

プチ三バカの意見なら「また何か言ってるよ」って思えたけど、ウゲツまで!少しガクーンと肩を落とすと、ニーナとノーラがやってきた。


「…ルカ兄、その瘴気大事にして」


「ルカ兄はモノクルに選ばれし者って感じぃ~!ママがきっと狂喜乱舞するよお、次のグラオ王子に推薦しとくう!」


「ねえお願いだよ、ほんとにヤメテ?何で僕がそんな思春期の黒歴史を先取りしなきゃいけないの?」


「ルカ兄ちゃんすっごいねー!マナの支配者かあ、俺ほんとむり!かーっこいー!」


「アオイもびっくり~。だから猫さんの『使役』って言葉がさらっと出たんだねー、王様みたいでかっこいー!」


「レビとアオイにそう言われるとけっこうヘコむ…クレア~、どういう経験会議したらこうなっちゃうの!? 僕なんか悪いことしたぁぁぁ!?」


僕が項垂れていると、レティがぽんっと僕の肩を叩いた。そしてマリー先生そっくりの笑顔で「ルカ、恥じることないわよぉ。ドSの世界へようこそ」と言った。


そしてクレアは可愛らしい笑顔で「さすがルカです。ネタ提供能力はコンラートさん譲りなんですね」とのたまった。


ちくしょう…

僕はみんなに泣いてほしくないと心配していたっていうのに!一番父ちゃんから受け継ぎたくないものの認定をうけてしまった…!





  

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