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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
ルカ 光をもたらす
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やさしい羽

  






今日はとってもしずかなイイ日だった。何でかというと、バルじいちゃんとエレばあちゃんがスザクとライノとレイノをヴァイスに連れていって遊ばせてるから。


ぼくも何度もヴァイスで遊ばせてもらったことがあるけど、あそこで遊ぶとプチきんにくマツリになるんだ。あそこにいるおじちゃんたちは、みんなきんにく。「たかいたかい」の高さがハンパなくて、ぼくはよく泣いてた。


ちなみにおねえちゃんたちに遊んでもらえる時は天国。食堂でおやつを食べさせてもらえて、たくさん楽しいおしゃべりができるから。ヴァイスではどっちにつかまるかで天国とぢごくが分かれるから、たまにしかぼくは行かない。


でもスザクたちは違う。きんにくに遊んでもらうのが好きだから、よく行くんだ。だからバルじいちゃんはあの三人を「みどころがあるぜぇ」と言いながらよくヴァイスにつれていく。そんなしずかな日は、ぼくとレティもおちついてニーナやノーラと遊ぶ。



レティ「ノーラ、何してるの?」


ノーラ「…んっとね、コネコネしてる」


ルカ「 …? マナをコネコネしてるの?」


ノーラ「…ん、そう」


ニーナ「ノーラはねえ、はやくつくれるようになりたいんだってぇ」


レティ「何つくりたいの?」


ニーナ「どく~」


ルカ「ふぁ!?ノーラ、だめだよどくなんて作っちゃ…!」



ノーラはいつも少し眠たげな目をしてるんだけど、かわいく笑った。それにぼくやレティによく甘えてくるカワイイいもうとなんだけど。


こういうトコはちょっとコワいな、ぼく…



ノーラ「だいじょぶ…ルカにぃとレティねぇには、イタくしない…」


ニーナ「イタくしてもだいじょぶだよ?ニーナがどくをけしてあげるし!」


ノーラ「でも…かわいそだから。やるならライノとレイノにやる…」


ニーナ「そうだねぇ、いっしゅんならしなないうちになおせるね!」


レティ「ね、ねえ二人とも、なんの話してるのぉ?」



二人は何も答えずににっこり笑って、ぼくとレティにきゅっとだきついてスリスリしてきた。


やだ、かわいい。



ニーナ「あのね、わたしたちルカにぃとレティねぇにはなにもしないからあんしんして?」


ノーラ「ん…なにもしない。でもライノとレイノには、やる」


レティ「ライノとレイノに何かされたの?私がしかってあげるから、どくなんてやめて?ね?」


ノーラ「…んーん、いっつもレティねぇにたよってちゃ、いけないの…ノーラはつよくなるの」


ニーナ「わたしもぉ!きのう、ライノとレイノにスカートめくりされたの。だからどくをやるの!そんでわたしがギリギリでけして、もっかいどくをやるの!」



ふぉわぁぁぁぁ、やだ、こわいっ



ルカ「えっと…、スカートめくりはひどいね。ぼくらがライノたちのおしりたたいてあげる。だからどくはやめよ?ね?」



二人はしぶしぶとうなずいたけど、ノーラはマナのコネコネをやめなかった…





*****





ルカ「ヨアキム~、おしえて~!」


ヨア「ルカ、なんですか?」


ルカ「どくってどうやって作るの?マナをねるとできる?」



ブーッとふき出したヨアキムは、ハッとしたようにノーラを見た。

…なんでノーラだってわかったのかな。



ヨア「ノーラですね?まさかもう毒の生成を始めたんですか?」


ルカ「せいせい…?えっと、スカートめくりしたライノとレイノにおしおきするつもりみたいで…ぼくがおしりたたくからやめなって言っておいたけど」


ヨア「そうですか…ありがとうルカ、よく止めてくれました」



そう言ってぼくのあたまをなでると、ニーナとノーラの方へ歩いて行った。二人にそっと話しかけたあと、羽の上にのせてヨアキムの目と同じ高さまで持ち上げる。



ヨア「ノーラ、毒を作るのはまだ早いです。きちんとお勉強してからじゃないと、殺すつもりもない人や動物を殺してしまいます」


ニーナ「だいじょうぶだもん、ニーナがけすもん!」


ヨア「ニーナ、あなたがノーラの作った毒を消せるのはわかります。でもそれが間に合わないこともあるんですよ?二人がたくさんお勉強して、毒のことをもっともっと良く知らないと、危ないんです。死んだ人は、二度と戻りません」


ノーラ「…ヨアキムは…ここにいるじゃない」


ヨア「おや、ノーラは私が死んだ人間だと分かってるんですね?それでもここにいるから、誰を毒で殺しても平気だって思うんですか?…みんなが怖がると思って隠してたんですけど、私の本当の顔、見てみます?死んだらこうなるって、わかってもらえるなら見せますよ?」



ヨアキムはにっこり笑うと「見たい人だけこっちに来てください」と言ってパティオのうらがわへ行った。ど、どうしよう。ぼくとレティは顔を見合わせて、ニーナとノーラもちょっとこわいって顔をしてる。



レティ「私たちもいっしょに行ってあげるから、見に行こっか…?」



そうですよねー、ぼくらもいっしょってことになりますよねー!?

こわいけど、しょうがないかあ…

ぼくらは二人とそれぞれ手をつないで、パティオのうらがわへ行った。



後ろを向いたままのヨアキムは「みんな来ちゃったんですね…しかたありません…」と言って、ぐるん!とふりむいた。



全「キャーァァァ…あれ?」



ふつうのヨアキムが、クスクス笑いながら「うそですよ」と言った。


もー、こわかったぁぁぁ!


全員ホッとして、胸に手をあてて「びっくりしたー!」と笑った。

でもヨアキムはすっと右うでを出して袖をまくった。



ヨア「…ちなみに死んでるので、こんな感じに魂喰の毒を食らって溶けても平気なわけでして」



ヨアキムが見せたのは、肉がどろどろにとけた、ほねが丸出しのうでだった…!



全「ウッキャアアァァァァァ!!」



ぼくは口をぱくぱくさせてかたまっちゃったし、レティはガクガクふるえてぼくのうでをつかんでるし、ニーナとノーラは泣きだした。


ヨアキムは「ま、これはだいぶ前に治ったんですけどね」と言ってすっとうでをなおした。そしてまじめな顔をして、ノーラとニーナを見る。



ヨア「毒ってもっとたくさん種類があって、溶ける間もなく死ぬのもあるんですよ?ノーラはスカートめくりされたら、ライノたちをこうしてもいいって思うんですか?」


ノーラ「ひっく…ひっく…おもわない…」


ヨア「ニーナはすぐ毒が消せるかもしれませんが、溶けた腕は治せないですよね?レイノたちの腕を溶かして毒を消して…それだけでいいんですか?」


ニーナ「…えっく…えっく…よくない…」



ヨアキムはにこっと笑って「驚かせてごめんなさい、この腕はちょっとした魔法の冗談です。でもわかってくれてよかったです、二人ともやっぱりいい子ですね」と言った。


ニーナとノーラがいなくなると、ヨアキムはぼくとレティだけにそっと話しかける。



ヨア「二人とも、驚かせてすみませんでした。二人には言っておきますが、私は本当に死んでいて、魂だけなんです。それは気付いているでしょう?」


ルカ「…うん」


ヨア「ニーナとノーラはね、ユニーク魔法を持っているんです。パウラがいるでしょう?彼女が研究してくれたので、ノーラがいつか毒を作り始めることはわかっていました。ノーラの能力は『ヴェノム()』、ニーナの能力はその毒をカウンターで解毒する『キュア(血清)』の筈です。でも、いまお見せしたように体が損なわれてしまったらニーナは治癒師ではないのでそれを治すことができません。それを、二人に知っていてほしかったんです」


レティ「…わかったわ、ヨアキム。だいじょうぶ、二人にそんなこと、させない。ちゃんと勉強して、どくのことがわかってコントロールできるようになるまで、あぶないことをさせなければいいのよね?」


ルカ「ぼくも、よくわかった。ねえヨアキム…死んじゃったけど、ぼくらのトコにきてくれて、ありがと。ぼく、ヨアキムが死んでたって、大好きだよ?」



なんだか、ヨアキムがさみしそうに見えたんだ。自分が死んじゃってること、あんまりぼくらに言いたくなさそうだった。でもぼくらは知ってる。ぼくらがヨアキムにつつまれてくらしてること。ヨアキムに守ってもらってること。


ぼくらの大切な天使は、「私もルカやレティや…みんなが大好きなんですよ。奇遇ですねえ」と笑って、ぼくらを羽でそっとだきしめた。






  

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