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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
自分を知りたい子供たち
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瞑想 sideレティシア

  





パパがすっごい笑顔を見せながら水晶の修練ルームへ来たのは、ルカが地下室に籠ってから一か月も過ぎた頃だった。その頃私たちはそれぞれの能力を磨くためにここまで真剣になったことはないっていうくらいがんばっていて、たまにママから「肩の力を抜きなさい、そんなに切羽詰まっていたら吸収する柔軟性に欠けるわ」と笑いながら指摘されたりしていた。


「みんな揃ってるね~、今日は修練の前にゲストを紹介します」


「ゲスト?」


「藍~」


「はいはーい、みなさんこちらにご注目!」


コンシェルジュの藍は頭上に大き目のフォグ・ディスプレイを掲げ、その画面をクライネ・ミッターク(という端末)へ繋ぎました!とパパへ伝えた。一つ頷くと、パパは通信機で誰かに「じゃあ繋ぐね」と言ってから画面が見える位置の椅子へ座った。


その画面に映し出されたのは。


「―ルカ!!」


ずいぶん痩せこけてしまった頬。でも瞳の色は…青紫色の瞳は、とても力強くキラキラしていた。肩から上しか映っていないってことは、まだ制御できてないんだ。ああ、それでもよかった、ルカは諦めてない。彼はやっぱりコンラートさんの息子だから、強いんだ。


『えーと…みんな久しぶり。心配かけてごめんね』


少し照れくさそうに言うルカは、以前のように優しい声。だけど何かが変わったという印象が強い。何て言うか、揺るがない視線がとっても頼もしい感じがするの。


みんなが口々に「なんてことねーよ!」とか「痩せたなールカ、ダイエットかぁ?」なんて声を掛けて、彼を笑わせた。


『えっとね、みんなにお願いがあってさ。その前にいま判明している僕の能力や、できればこういう能力に進化しないかなっていう希望を持って制御に取り組んでるってことを説明しとくね』


ルカは現状消去してしまう範囲とその対象、今後自分や他人をコンラートさんの透明化のように消せるようにならないかと思って訓練していると言い出した。そしてそれを踏まえた上で、私たちに考えてほしいことがあるらしい。


『クレアやレビは、この現状からもっとこうできるんじゃないかっていう可能性を模索してほしいんだ。それができるかどうかは置いといて、頭の片隅にあれば何か新しい能力に繋がるかもしれないからさ』


「わかりました」「うん!」


『それと、僕がこの能力を精密に制御できれば…ううん、精密に制御するから、戦術に幅が出ると思うんだよね。例えばノーラのヴェノムで作り出した毒やニーナの血清だけど、いま自分しか扱えないでしょ?それを僕にも渡せるようにしてくれれば、僕が消して隠し持っていられると思わない?』


「あ…!」


「そっかァ、今まで『血清の魔法をかける』って思ってたけど、血清を作って誰かに渡せればいいんだァ」


『同じようにレティが作った刀剣を僕が消して持っていれば?もしくはみんなに渡した刀剣を僕が消しておけば?服の中に隠し持つ暗器なんてメじゃないよ、体じゅうに剣をぶらさげてたって気付かれない方法があるかもしれない。まあ、どうやって消音するかって問題はあるけどさ』


「そっか…精度の高い、軽くて切れるものが作れるようになったら、それも可能かも」


『それとアオイね。もし僕が生物を自在に消せるようになったらっていう条件が付くけど、協力してくれる動物がいればその子を消して奇襲や諜報活動に使えるかもしれない。今は猫団子とか仲良く挨拶しにきてくれるって感じなんだろうけど、動物たちを使役できればすごくない?そんなの、イヤかな』


「ふあ…そっかあ、えっと、使役っていうか、お願いすればやってくれるくらい仲良くなればいいよね?奴隷みたいに命令はしたくないしなあ…。うん、でもがんばってみる!」


『あは、そうだよねゴメン、使役なんて言い方が悪かったよ。で…スザクにライノにレイノだ。ライノとレイノはみんなの気持ちを繋げる架け橋みたいな能力だよね。その能力自体は僕の能力と相乗効果が出るようなものじゃないと思う。でも…君らの両親は何だ?運動神経と戦闘の権化みたいな二人を両親に持っていて、二人が戦闘能力で誰かに劣ってるとは思えない。それとスザクの強力な攻撃魔法だ。―期待してるよ、僕が消した武器や毒物で攪乱したスキを突けるアタッカーは三人しかいないだろ?』


「「だっは!任せとけ兄貴!」」


「おー、楽勝だぞルカ。この俺が地道にアロイス効果の訓練してるって言ったら、どんだけ真剣にやってっかわかってくれるだろ?」


『あはは、こらえ性のないスザクがアロイス効果かぁ、そりゃ期待大だね。―で、ウゲツ』


「ルカ、もうわかってる。たぶん僕もレアユニ持ちだろうね」


全員で「え!?」と叫んでウゲツを凝視してしまった。どういうこと?そんな話、少しもウゲツから聞いたことない。パパまで目を丸くしている。どうしてルカはわかったの?どうしてウゲツもわかってるの?


「僕、ルカの状況を聞いてるうちに何となくわかったんだよ。僕の能力は発現する時にきっと『苦しいだろうな』って。ルカと僕って、自分の能力があんまりわからなくて掴みきれないから何したらいいのかもわかんないってトコがそっくりなんだ。―だよね?」


『うん、僕もそう思ったよ。単純に考えると、僕が父ちゃんの透明化に似た能力を発現させたなら、ウゲツはマリー先生に似た能力を継承しそうだ。だから…ウゲツ、僕がどんな風にここで過ごしたのか、何を考えたのか、全てが落ち着いたら君には全部映像記憶をあげる。でね、僕にも君がどんな風に思ったか、いつか見せてよ。そしたら僕ら、最強コンビになれる気がしない?』


「―あはは、そうだね!コンラートさんとママの能力はグラオの要だ。でしょ?パパ」


「あらら…クレアかなー、グラオのこと探ったのは。言っておくけど秘匿レベル8以上のことなんだからね、ウッカリでも外でしゃべっちゃダメだよみんな」


「はーい」


『まあ、そういうわけでね。実はもう床に開いた大穴は消せる程度に制御できてきてるんだ。でもまだ細かいとこがね~…服が戻せなくって、まだ裸んぼなんだよ。まあ“焦らずじっくり緻密な制御”を目指していくからさ、僕は半年くらいここから出ずにスキルアップをはかりまーす。みんなと次に会う時はすごい技能持ちになってるから、お楽しみに~』


ルカは笑って通信を切った。みんなも笑って手を振った。そしてすぐ修練でルームを出し、全員でため息をついた。


「…ルカのやつ、あんな笑い方しかできなくなっちゃったのかな」


「リラックスすることを忘れてしまったかのようですね」


「あそこまで自分を追い詰めて、強くならないといけないんだ。僕も覚悟しとかないと」


「ウゲツ…前に『自分の能力ならどんなに苦しんでも自分を殺すことはない』って言ってたわね。レアユニのことだったのね?」


「んー、あの時はこんなにハッキリわかってなかったけど、ルカが気付かせてくれた。だから僕は、ルカに感謝して、そのぶん楽に乗り越えられるはずなんだ。絶望なんてしない。してたまるか、ルカに恥ずかしい」


私たちはいつものお日さまみたいな笑顔じゃなくて、覚悟を決めた精悍な笑顔を見せたルカに驚いた。そしてその彼からの私たちへの要求は、覚悟に見合った大きさだった。


「ルカに恥ずかしくない自分たちになる」っていう決心を聞いて、ルカは「みんなならできるよ」って事も無げに言った。自分が大変なのに私たちを元気付けるために通信してきたんだ。


全員ルームにいるのに押し黙って、自分たちのことを深く掘り下げて考え込んだ。


それはまるで、瞑想のようだった。







  

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