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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
自分を知りたい子供たち
30/103

モノクルで見えるらしい side ルカ

  







「晩メシだぞ、起きれるか」と言って、父ちゃんが起こしてくれた。なんだかまだボンヤリしてるけど、父ちゃんの顔を見て寝る前のことを思い出した。


「どうだ、特に体調悪くなったりしてねえか?」


「うん、ヘーキ。ねえ、まだ僕の開けた穴って残ってる?」


「いンや、テーブルだのドアノブは、お前が完全に眠ったら解除されたな。服もグローブも穴はないぜ。試しにこのタオル触ってみろ。―うん、消えねえな」


「そっかあ…何がきっかけで出ちゃったのかがわからないね」


「俺の時も制御不能の時期は法則性もなしに出たり消えたりだったな。しばらくは制御方法を模索するしかねえ」


「…ん、わかった。晩ごはんだっけ、お腹すいちゃった」


「おう、行こうぜ。今日はアルが温泉黒豚買ってきたんで、とんかつだってよ」


「ほんと!? ひゃっほー!」


アルは仲良しの紫紺のじいちゃんズに付き合って、たまにキール山の温泉に行くんだよ。その度においしい豚肉を買ってきてくれるんだよね。あのとんかつ、ほんと美味しいんだあ~。


一階に降りるとみんな揃ってて、父ちゃんが「悪ィ、遅くなった」と言いながらいつもの席に座る。フィアとフュンフが僕たちの分を持ってきてくれて、僕は「いただきまーす!」と元気よく食べ始めた。


「ウマー…やっぱ温泉黒豚サイコー…」


「あはは、ルカの大好物だもんね。よかったー買ってきて」


「アル、紫紺のじいちゃんズに急に付き合わされたの?バーデン・ヴァルトに行くなんて言ってたっけ?」


「そーそー、そんな感じ。まあ俺はすぐ帰って来ちゃったけどさ」


「へぇ~、魔法相談役って大変なんだね」



カラシととんかつソースの組み合わせは無敵だね。大根おろしもいいけど、衣のサクサク感がちょっと無くなる気がするんだよー。だから僕は断然とんかつソース派です!


夢中でモグモグ食べていたら、一足先に食べ終わっていたクレアとレティが僕の所に来た。


「ルカ、これなんだけど」


「むぐ…なにこれ?虫眼鏡?」


「モノクルです。まだ試作品なんだけど、フィーネ先生とヘルゲ先生に作ってもらいました」


「ふうん?で、これがどうかした?」


「ルカ、さっきレビがマナであの本の形を見てたでしょ?だからルカ専用のマナ・グラスを作ってもらってみたの。市販のマナ・グラスは意図して行使されてる魔法のマナは見えないらしいんだけど、これはもっとレベルの高い方陣が入ってるんですって。もし何か消しているのなら、これで見えるかもって思って」


「そっかあ!うわー、ありがとう二人とも!これ嬉しい!父ちゃん、見てこれ!レティとクレアはすごいよ、僕こんなこと気付かなかった!」


「おー、お前すげぇブレーンがついてんな。百人力じゃねえか」


「でもルカ、これを四六時中つけていないと制御できていないうちは何を消したかわからないかもしれないです。モノクルにしたのは、自分の視界とマナの視界両方で確認した方がいいと思ったからなの。それにこの方陣でルカの消したものが絶対見えるかどうかも、これから検証しないといけません…」


「それでも知らないで消しまくってるより全然いいよー。さっきなんて自分の服を消してるの気付かなくってさ。見られたのが父ちゃんでよかったよ…」


僕はさっそくそのモノクルをかけてみた。鼻にひっかけるブリッジがあって、左目だけにかける。水晶のレンズが入っていて、でもとっても軽くて鼻や耳は痛くなかった。フレームは銀製で、蔓草の透かし模様が繊細な眼鏡のツルがある。あと、外した時落とさないように鎖とイヤーカフがついていた。


「おいルカ、お前妙に賢そうに見えるぜ…なんでだ」


「そんな心底不思議そうな顔しなくても良くない?―うわー、これ頑張って慣れようっと。使い心地とかは報告した方がいいんだよね?」


「ええ、お願いしたいです。あとコンラートさんとナディヤママにもお願いがあるの。もしルカがこのモノクルをしている時、何か消しているのに気付かない場合はフィーネ先生かヘルゲ先生に伝えてほしいんです。できれば現場が見たいと言ってました。その状況を見て、モノクルの中の方陣を調整したいんですって」


「おう、わーった。さんきゅな、二人とも。助かるぜ」


二人はにこっと笑って帰っていった。

その後は五歳児組や七歳児組が代わる代わるモノクルをしている僕を見に来ては面白そうにしていた。でもニーナとノーラの反応はちょっと怖かった。


「ねえねえ、チーム緑青のお兄さんたちが着る衣裳あるじゃなーい?あの宮廷衣装に合うよお、その眼鏡!」


「…ルカ、ニヤって笑って。何かすっごい毒を作り出しそうな気配がする」


「あ、白衣もいいねー!アロイス先生のポスターよりマニアが喜びそー!」


「…ルカ、フラスコ持って」


「えー、リア先生に『降霊魔術書ネクロマンシー・グリモワール』借りて、それ持ってもらった方がよくなーい?」


「…それは盲点。それもいい」


「お願いだよ二人とも。僕、今けっこう崖っぷちだから仮装は勘弁してほしいかな」


「「はぁ~い…」」


今日一日だけでフィンガーレスグローブにモノクルか…一気に装備が増えたなあ。あ、グローブって寝る時も外せないかもしんない。朝起きたら何か消しちゃってるかも。気を付けなくっちゃ…


その日は大人組も僕にどういう状況なのかを聞きに来てくれて、「ちゃんとサポートするから、何かあっても一人で悩んだり抱え込んだりするんじゃないよ」って言ってくれた。


特にマリー先生は「みんながいるわ、大丈夫。あなたはその能力を自分が持つことを、自分に許してあげなくちゃいけないわ。それを忘れないで」と真剣な顔で言った。


僕はその時「うん、わかったよマリー先生。みんなもありがと、早く制御できるようにがんばるね」と笑った。


でも僕は、何もわかってなど、いなかった。





  

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