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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
自分を知りたい子供たち
29/103

消しているらしい sideルカ

  





まっつぁお。

僕の顔色は、言葉で表現するならそんな感じだったかもしれない。


「―あれ、僕って占術系のユニークなんじゃ、ないの?」


「そ、そうよね、ラック・チェインよねぇ?」


「ルカは消そうなんて思ってないのに、消えた。しかも本人には消えてるように見えていない…どういう魔法なのかしら…」


「あのさ、二人から見たら本だけ消えてるの?僕の手とかは消えてないの?」


「ええ、ルカが何かを持ってる手つきをしてるとしか思わなかったわ」


これって、透明化なのかな。でも父ちゃんは自分と、身に付けているものを消せる。僕は手に持ってるものだけを消せるとか?俺が父ちゃんの子供だから、何かレア・ユニークが遺伝してるのかなあ?


ぐるんぐるんと考え込んでいると、いつまで経っても草原から戻ってこない僕たちを心配してレビが来た。


「ルカ兄ちゃんたち、どうしたのー? …ふぁ!? 」


「あ、ああ、ごめん。とにかく戻ろうか…レビ?」


「ルカ兄ちゃん、すっげえええええ」


「はい?」


「右手に持ってるの、何?マナが四角く光ってる…」


「レビにはマナで見えるの?じゃあやっぱり、ルカが魔法で消してるってことだわ」


「はあ…レビ、手を出して。これ、渡すから」


「―あ、本だ!」


「これ、まずはアロイス先生に言うか…」


「そうね」


僕はちょっとうんざりして、「また悩みの種が出た」って思いながら猫の庭へ戻った。だってさあ、占術のユニークさえ発現してんだかしてないんだか中途半端なのに、まーた新しい魔法だよ?どっから手を付ければいいんだよ。


レビは「キラキラ消えちゃったなあ」と、ただの本に戻った光の塊を残念そうに見てからクレアへ返している。それから僕らは一階へ戻ってアロイス先生を探したけど、ヴァイスへ行っているみたいで見当たらなかった。


「しょーがないよ。とりあえず僕はお風呂入ってさっぱりして、ゆっくりしたい。なんだか頭がこんがらかっちゃって、冷静に考えられないからさ」


「私たちも何か解明のヒントがないか考えておくわ」


「そうね、私も何かないか図書館を見ておきます」


「ありがと、レティ、クレア」


僕は家へ戻って「はぁ~あ…」とため息をついた。とにかくシャワーを浴びて、汗でベトベトだからさっぱりしよう。自分の部屋で着替えを用意して、お風呂場へ行きますよー!

―はあ、カラ元気しか出ないや。


「今日は何度砂浜に埋められたっけなー」とさっきの消えた本のことを頭から追い出して現実逃避していたら、リビングから父ちゃんの素っ頓狂な声が聞こえた。


「なんっじゃこりゃああああ!」


―はい?

父ちゃんがあんな声出すなんて珍しい。みんなといるとアフォ丸出しだけど、家では割と落ち着いてるのにな。体を拭いて服を着て、のんびりお風呂から出ると、父ちゃんはリビングのど真ん中で口をあんぐり開けて呆けていた。


「父ちゃん?何叫んでんの」


「何って…へ?お前こそケツ丸出しで何やってんだよ」


「え!? …もー、驚かさないでよ、ズボン履き忘れたかと思った。からかわないで…って、まさか…!!」


があああん!

もしかして僕、着替える時に服を透明にしちゃってるとか言う?


「と、父ちゃん!もしかして僕、いま素っ裸に見えてるの!?」


「いや…ズボンだのシャツだのがぼこぼこ穴開いててよ、ケツとか肩とか?ちっちぇー穴だらけで…あ、これお前か!」


「な、何が?僕もしかして他にも何か消してる?」


「テーブルとか壁とか、所々穴が開いてるな。あとドアノブが消えてら。お前、ここを手で触ったんか」


「あ、触ったかも…ええええ、どうしよう!これ、ついさっき兆候が出たんだよ…でも何で消えっ放しなんだろ、さっきは質草の本を持ってる時だけ消して、手から離れたらちゃんと見えるようになったんだ」


「―っはぁ~、なるほど」


僕は、まっつぁおじゃ足りないほど自分の顔が青くなってるのがわかった。血の気がざーっと引いて、きっと今はリョビスナ台地の青い池くらいかな。いやいや、もしかしたらフィーネ先生の瞳くらい紺色かもね。あははー…


どうしよう、これ制御できなきゃ絶対ヤバい。今の僕は何をどういう風に消せるのかもわからず、自分が消したものがどれなのか全くわからない。着替える時に服を持っただけで穴ぼこだらけだなんて、自分が大事なトコ丸出しでもわからないってことじゃん!


「父ちゃん、いま服で消えてない部分ってどこ?指差してくんない?」


「んあ?ココは消えてねえ」


僕は手の平でペタッとそこに触って、手をどけた。


「これでどう?消えちゃった?」


「消えたな」


「範囲は?」


「お前の手の平の分、指を除いた範囲に円形だな」


「―ごめん父ちゃん、悪いんだけどもう一回見てて」


僕は手の平にぐるっとタオルを巻き付けてみた。父ちゃんによると、タオルは穴が開いたように丸く消えたけど、そのタオルごと触った服やテーブルに穴は開かなかったらしい。


父ちゃんは「ちょっと待ってろ」と言って部屋を出て、僕の手にぴったりなフィンガーレスグローブをアルマ先生に作ってもらって戻ってきた。


「ありがと。…っはぁ~、参ったな」


「俺とは違うタイプの消し方だなァ」


「んー、僕には消えてるかがわからないのが最大のネックだよ。服に穴が開いててもわからないなんてヤバすぎる…はぁぁぁ…」


「ま、気軽にいけや。それがどういう能力かはわかんねえけどよ、なんとでもならァ」


「…そうかなあ?まあ悩んでもどうにもならないか…消しちゃったところ、どうやって戻せばいいのかなあ」


「それも気にすんな。制御できるようになりゃあ出したり消したり自由になるさ。あー、でも自分のも他人のも、服にだけは気を付けろ。特に女の服を不用意に消したらマジやべえ」


「げー!そ、そうか、僕の能力ヤバい…痴漢専用みたいな能力じゃん、さいあく…」


「んあー、それ言ったら俺も女湯覗くんじゃねえかって疑われたぜ。お前がそんなことするわけねえってここのヤツらはわかってる。自分で勝手に悪い想像して落ち込むなや」


「ん、わかった。僕、ちょっと寝る…つ、疲れた」


「おう。晩メシんときゃ起こしてやんよ、ゆっくり寝ろ」


よろよろとベッドへ入って、黒いフィンガーレスグローブを見つめた。僕の目には穴なんか開いてないけど、父ちゃんは「直径四センチくらいの穴が丸くあいた」と言っていた。


一体ここから何を出してるんだよ、僕は。






  

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