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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
自分を知りたい子供たち
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悔しがる僕ら sideルカ






筋肉マツリでフォーメーションを立て直しつつチャレンジすること七回。僕らは砂浜に首まで埋められて、最後の一人であるノーラがカミルに抱えられて「…逃げ切れなかった、ごめん…」と項垂れているのを見た。


ニーナとノーラは気配を消すのが得意で、アルマ先生と同じくらい周囲に溶け込んでしまう。だから救出班に最適なんだけど、とうとう全員が捕縛されてしまったわけ。


「いっひひ、残念だったなァお前ら。まあ作戦はいい出来なんだがよ、まだイマイチ質草に釣られて自分らが踊らされてることに気付けてねえなー」


「あとスザクの攻撃力が生かし切れてねえ。四属性全部イケるんだからもっと工夫すりゃ足止めできる場面もあったぜ?」


「そーだな、だがレティも多少もったいねえな。土特化なんだから、刀剣での攻撃にこだわらずに檻でも作れりゃコンラートを透明化したまま放置なんて事態にゃならんだろ」


「ん~、お説ごもっとも。ところでお三方、アタシからのお仕置き、何がいいかな?最近アロ兄にもいろいろ教わってっからさァ…楽しみにしていいし~」




『散!』


クソコンたちは逃げてもムダなのに脱兎の如く猫の庭へ帰還した。ユッテ先生は「星乳首」のお仕置きからどんどんレベルを上げて行き、とうとうこの前は服では隠れない位置へモチーフを移動させた。


カイは右目に赤いハート、カミルは左目にピンクのハート、コンは鼻にギラギラの星を付けられ、二日くらいは泥棒みたいに顔面を隠してミッションに行ってた。そうしないと真面目なミーティングが爆笑変顔大会になってしまって困るからだってアロイス先生が言ってたな。


「はぁあ、みんな整列ぅ~。精霊で砂を取っ払うよ」


「ハーイ…」


砂浜から掘り出してもらい、ユッテ先生は砂だらけの僕らをきれいにしてくれた。そのまま草原で座って、ユッテ先生から戦術指導をもらう。


「みんなこの前よかいい動きはしてたよ、自信持ちな」


「うーん…やはりネックはコンラートさんの透明化対策ですね」


「あの三人の言うこと聞くのもシャクだけどお…確かに私の出す岩の硬度なら檻を作るのは有効よね。練習しとくわ」



クレアとレティは悔しそうだった。でもそれにも増して悔しがっているのはライノとレイノとスザクだった。


「ぐあー、ちっくしょう!強い攻撃魔法出せても勝てなきゃ意味ねーんだあ!」


「やっぱ体格差がキツいぜ…筋力じゃなくって、やっぱクレアが言ってた通りサブミッションだよな」


「だな、筋力は中等になってから集中していこうぜ。俺らじゃ指関節を一瞬キメるのが精いっぱいだけどよ、スキは作れるだろ」



そしてニーナとノーラも「隠れるのが得意でも、攻勢に出れない…何か考えなくちゃ」と爪をがじがじ噛んでいた。


え?僕ですか?


悔 し い に 決 ま っ て ま す 。


僕の水球で少し衝撃を与えることはできたけど、あいつらさすがに急所は結界で守っててダメージほぼゼロ。明確に有効だったのはコンを捕まえたあの一瞬のみだったんだよね。


手加減なしとは言っても、さすがに急所は守る。ということは、僕の攻撃の大半が無駄だったってことだ。うー、くっそ!コンの透明化、めんどくさーい!


ユッテ先生は「ま、いつか勝てると思ってどんどん挑戦すりゃいいよ。どうせダメだって諦めるのが一番悪い」と笑って、お仕置きのモチーフをアルマ先生と相談するって言って戻っていった。




僕はコンが置いていった古文書を拾い上げて、ため息つきながらじっと見ちゃったよ。こいつを所持する人物が変わるたびに、僕らはわーっとそっちへ群がってしまう。で、群がってからクレアに言われてハッとするんだよねー、残りの二人から目を離しちゃいけなかったことに。

修行が足りないってことだなあ…


古文書をリア先生の書斎に戻してもらおうと思って、クレアに差し出した。


「クレア、これリア先生に返しておいてね。密閉されてるから大丈夫だとは思うんだけどさ」


「…ルカ?これってどれ?」


「え?だから、この古文書だよ」


「…そういえばさっき、コンラートさんが本は返してくれたわよね?どこにあるのかしら」


「クレア?何言ってるんだよ、だからこれだってば、ホラ」


目の前に本を差し出しているのに、クレアはきょとんとして訳のわからないことを言い出した。まるで本が目に入っていないみたいだ。

だ、大丈夫なのかなクレア。何か病気で目が見えなくなったりしてないよね?


「ルカ、クレア。何やってるのぉ?」


「レティ!ちょ、ちょっと」


「なあに、ルカ」


「どうしよう、目の前にこれを出して渡そうとしたのに、クレアが見えてないみたいなんだ」


「どれのこと?」


「だから、この本だよ。『草木七部耕種魔法』!」


「ルカ、何も持ってないじゃない」


「 …は? 」


僕の目には、思いっきり自分の手で持っている古文書が見えていた。だけど、クレアとレティには見えていないようなことを言う。


「な、何だよー、二人して。僕のことからかってるう?」


「ルカ、草原も探したけど本が見当たらないわ」


「だ、だからここにあるってば!もー!クレアも酷いなあ、からかわないでよ」


「―ルカ、その本はいま右手に持ってるのね?」


「そうだってば!見えてるくせにー」


レティは恐る恐る僕の持っている本へ手を差し出した。そしてコツンと本を密閉している結界に指先が当たると、見たことがないほど瞳孔を開いた。


「ク、クレア…手を貸して」


「はい、どうぞ。 ―え!? 」


まるで目が見えていない人のように本をさわさわと手さぐりで触るクレア。僕は一体これが何のいたずらなのかわからず、「何なんだよもう」と言いながらクレアが本を持ち上げるに任せた。


そして僕の手から本が離れた瞬間、レティとクレアは「う、うそ…!」と目を丸くして本を見つめた。更にはもう一度僕の手へ本をそっと渡すじゃないですか。さすがの僕も、いい加減タネ明かししてくれないと怒るよー?


「ねえクレア、レティ。さっきから何やってるの?何の遊びだよー」


「あ、遊んでないわルカ。あなたにはさっきからこの本がずっと見えてるのよね?」


「当然でしょ。見えないフリする遊びじゃないなら、何なの?」


「ルカ…私たちにはいま、この本が見えていないわ。たぶんあなたが消してるのよ、どうやってるの?何の魔法?」


「…はああ?」


僕はあっけにとられて二人を見つめた。この二人は、僕に妙な遊びを仕掛けてイタズラするような子たちじゃない。なのにさっきから何をふざけてるんだろうと思って僕は憤慨していたわけだけど。


どうも二人がふざけてるんじゃなくって、僕がふざけた存在であるらしかった…





  

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