連携する僕ら sideルカ
「おいルカ、やべえぞ…今日あたり筋肉マツリの予感がするぜ」
「えっ 本当?うーわ、そういやコンも今日はミッションないな…」
いま初等教育を受けているのは僕からクレアの年齢まで。いいかげん筋肉マツリにも慣れてはきたけど、小さい頃から痛い目に遭っている僕らの警戒度は未だに高い。しかもライノからの情報だからなあ…確実性という意味ではトップレベルのタレコミですよ。
「クレア、どうする?」
「んー…弱みを握ってやめさせるっていうのは、特殊部隊員相手にはほぼ効かないのが立証済み…もし『何かを奪い返す系マツリ』ならフォワードがスザクとレティ、センターハーフにルカ、ウィングハーフにライノとレイノ、ストッパーにニーナとノーラ。―私はリベロとして攪乱要員になります。『捕縛系マツリ』ならフォーメーションはダイヤモンド。フロントマンにレティ、テールガンはスザク。両サイドにライノとレイノ、セカンドアタッカーにルカ、隠密型擲弾兵として四時と八時方向へニーナとノーラ。センターが私で指揮に入ります。全員ヘッドセット着用を敵に知られないよう、自然に振る舞ってください。誰かが捕縛された際には私とニーナ、ノーラが救助へ向かいますので、慌てず、落ち着いてお待ちください」
「ヤー!」
こうして僕らは何も気づいていない風を装い、アロイス先生にだけはルームで相談するからと協力要請して作戦会議をする。何食わぬ顔で午前の授業を済ませると、お昼時にはレビとウゲツとアオイが目だけで「みんな、がんばって!」と僕らにエールを送る。
かわいい弟と妹に応援されたら、やるしかないよねー!
案の定、午後になって草原へ出た僕らはカイにエロサブミッションをかまされたユッテ先生を見ることになった。般若みたいな形相で「カイイイイ!」と叫んでいるね。今日はオスカー先生がクヴァシールへ行ってるからいないんだ、そこを狙ったな。
「うぇ~い、楽しい筋肉マツリの時間だぜえ?」と、クソコンがトンファーを持ちながらニヤリと笑う。「うーっし、今日の質草はこれだ!」とカミルが手に持っているのは、密閉型結界で保護された三百年前の古文書『草木七部耕種魔法』。リア先生の古文書コレクションだね…
これはクソコンと筋肉悪魔の頭脳プレイだ。司令塔であるクレアを動揺させて、僕らに連携させない気なんだよ。
クレアは確かにリア先生と同じで、本の価値がよくわかっている。初めて古文書を質草にとられた時は「な…あんな貴重な本に何をするんですか!」とガクブルして指揮系統が乱れに乱れた。
でもそろそろ気付いた方がいいよ、父ちゃんズ。クレアは同じ失敗は繰り返さないからねー。
「やはりそう来ましたか。皆さん、『ミッション悪霊退散』です。―オープンコンバット」
クレアは頭脳だけだと思ったら大間違いだ。オスカー先生の運動神経をばっちり受け継いでいて、動きにムダのない、レティに近い動きができる。ダッと駆け出して「大事な本を奪い返そうとして頭に血が昇っているクレア」を演じながらカミルへ向かっていった。
『スザク、右翼の足元へ火球を。レティはノータイムで“ククリ刀”を横薙ぎにしてトンファー破壊最優先。ルカ、私をジャンプさせた後で中央の急所狙いで水球を最大回転』
『ヤー』
スザクがコンの足元へ三つの火球をドドドッと打ちこみ、火柱を上げた。トンファーを顔の前で揃えて防御していたコンへ向かって、レティが岩石で作り出した重量級のククリ刀で、連続回転させるように襲い掛かる。
僕はクレアを追い抜いてカミルの前でくるりと振り向き、両手で踏み台を作る。クレアの足が僕の手に乗ってぐっと踏み込んだ瞬間、後ろへ向かって掬うように放り投げた。クレアはきれいに伸身宙返りをしながらカミルの顎へ両手をひっかけ、背後へ落ちながら体重全部をカミルの首へかける。
僕はそこから離脱しながら、正中線上を狙って複数の水球を高速回転させながら打ちこんだ。ちなみに金的は最大水球の最大回転だ。こいつら相手の時は、手加減なんて少しも考えちゃいけない。
『スザク、氷柱を左翼とユッテ先生の周囲へ展開。カイさんに共鳴で状況説明させないで。ライノ、レイノ、右翼と中央を捕獲、ニーナとノーラの擲弾をサポート』
『ヤー』
『トンファー破壊、状況クリア。右翼が透明化したわ』
『ルカ、水球解除。過去の行動予測から中央へ来て質草保持に動く筈です。中央の左手を本ごと最大水球で覆って、水が乱れたらそこから右翼確保に入ります』
『ヤー』
『―乱れた!確保!』
僕の水球に手を突っ込んで本をカミルから奪おうとしたコンの手へ水球の形状を伸ばし、ガチンと凍らせた。コンの透明化は「身に付けたものも透明化できる」という特徴がある。だけど誰かと繋がっていると人を「身に付ける」とは認識しないから、一緒に消えて動いたりできないんだ。
案の定、透明化を諦めて姿を現したコンは「やるじゃねーか」と笑いながら隠し持っていたサバイバルナイフの柄尻でガツッと氷を破壊し、即座に透明化した。
『中央へ戦力集中、私が離れたらニーナ、お願い』
『ヤー!』
クレアが離脱するとライノが身軽にカミルの肩へ駆けのぼり、鼻をつまんで口を開けさせた。その機会を逃さずニーナが「おしおきレーション」を口へ放り込み、ライノがガムテープで口を塞いだ。
カミルが「もが!」と呻いた瞬間に僕は氷を解除し、レティが駆け抜けざまに本の入った密閉容器を奪った…はずだった。
「ふふーん、俺がいつまでもユッテを撫で繰り回してると思うなよ…?」とカイがニヤリと笑って本を持っていた。ユッテ先生はカイが結界に閉じ込めたらしく、その後いつのまにかカミルの背後に来ていたらしい…!
その時、焦った声でレイノとノーラの声が聞こえた。
『悪ィ、コンに捕縛された!』『…ごめん』
『フォーメーション・ダイヤモンドへ変更です!二人の救出へ私とニーナ、残りは透明化した右翼に警戒して、攪乱よろしく。立て直します!』
『ヤー!』
くっそ…また最初からかああ!
こうして延々と「質草奪還筋肉マツリ」は続いたのでした…




