少し大きくなった僕ら sideルカ
「猫さーん、おいで!」
僕らはあれから順調に魔法制御力を上げ、大きな問題も起きないで二年過ごすことができている。言葉をうまく話せなくてイライラしていた三歳児組だって、もう五歳。ルームの影響がばっちり出て、三人ともスラスラと話せるようになってるんだ。
で、今は何をしてるかと言うと。
アオイが小さな頃から息をするように使っていた「動物との意思疎通」という能力の検証中だったりする。アオイは虫が嫌いなので、無意識に虫が近寄らないようにしていたらしい。この子のそばにいると、まず蚊に食われることがない。
で、注視していたらゾッとするようなものを見るはめになった。猫は大好きだけど虫が嫌いなアオイは、何も意識していなくても、猫ノミを駆除してしまうんだ。だから猫を呼び寄せて近くに集まってきたと思ったら、猫の身体中から猫ノミがざーっと四方八方へ逃げていく様を目撃してしまった。
き、気持ちワル…!
僕とクレアで検証してたんだけど、二人で「ヒー!」って言っちゃったじゃん…
「あ、お腹に赤ちゃんいるのー?また仲間増えるね、がんばって元気な赤ちゃん産んでねー?」
「にゃー」
「そこまで分かるんだ、すごいねアオイ」
「おしゃべりできるの?猫が返事したわ…」
「ううん、なんとなくお互いわかるだけー。猫さんも、なんとなくだと思うよ?」
猫の庭近辺には、鳥類が一番多く生息してる。次が野ねずみに野良猫に野良犬。たまにモモンガもいるんだって。誰かが調べたんじゃなくって、アオイの感覚での話だけどね。
なんで僕らだけで検証してるかっていうと、ルームでたくさん話すうちに「自分たちの特殊能力をちゃんと把握しよう」ってことになったから。一般的なユニーク魔法発現時期が五歳っていう話だったから、いまはアオイとウゲツ、レビの三人をみんなで見ているんだ。
でもウゲツは自然の体現者だし、レビはユニークじゃなくって「マナ同調者」だからあまり検証のしようがない。アオイだけは「見ればわかる」能力だから検証しようってことになったんだ。
これはライノたちが大反省していた「ユニークを未熟者が安易に行使するのは怖い」っていう教訓を生かしている。みんなの特殊能力をみんなが理解して、「もしこうなったら怖いんじゃない?」と気付いたら、すぐさま話し合ってアロイス先生たちへ報告している。
ちなみにクレアは五歳になる直前に「思考増殖」のユニークをあっさりと発現させた。脳内で複数の自分と議論することもあるけど、やろうと思えば一人だけマナでできた自分を出現させて、本当に話し合うこともできる。
パウラお姉ちゃんの話では、練度が上がれば楽勝で五人は自分を出して議論できるようになるだろうって言ってた。もうクレアの頭の中がどうなってるのか、僕らには想像もつかないよ。
でもクレアのおかげで、僕らはルームで密度の濃い話し合いや情報共有が出来ている。アオイたちももうすっかり話せるんだから、ルームが必要じゃなくなったかと思ったら大間違い。天井知らずに上がって行くクレアの知識に引っ張られた僕らがルームで話す内容はかなり高度だ。
リア先生によると、たぶん高等学舎か、それ以上。
下は五歳、上は九歳の僕らは普段そこまで天才的な頭脳を持つわけじゃないけど、潜在的な「情報の理解度」はかなり高いっていうわけだ。
うん、天才はクレア一人です。
だからこそ五歳児の能力検証なんていうことを、僕らが自主的にやり始めたわけなんだよ。クレアはほんとにすごい。
今日なんで僕とクレアだけで検証してるかっていうと、レティはセリナさんのところへレッスンに行ってるから。ユリウスから「いまセリナはこの座標にいるよ」と教えてもらい、大人に連れて行ってもらう。レッスンが終わると迎えに来てもらうって感じで、確か今日は緑青と中央の間にある宿場町に行ってるはずだ。
旅芸人のセリナさんたちを追いかけるようにレッスンしてもらい始めて、早二年。レティはもともと運動神経のいい子だったけど、最近は体も柔らかく、体幹が鍛えられてるって感じのしなやかな動きをしている。
剣舞を教わり、中央の鍛冶工房で見学し、金属の生成について勉強しまくる。ほんと、あの集中力はすごいと思うよ。マリー先生に自宅でもつきっきりで魔法制御を習ってるらしいし、とても密度の濃いマナを練る。
―え?僕はなんでのほほんとしてるのかって?
それ、聞いちゃう~?
僕だってボンヤリとしてるわけじゃないってば。ただね、僕も魔法制御はレティ以上にはできてるんだ。そのレベル自体は同年代の子より抜きん出てるらしくて、自信を持っていいって言われる。しかも必死にやらなくても元から制御力が高いから、努力すればするだけ伸びるのがすごいって褒められた。
ただね。
僕のユニークって占術系でしょ。
いつになったら自分の意志で行使できるようになるのか、まったく先が見えないんだよ。周りの子がどんどんユニークの能力を磨いていっている中で、磨くべき能力が今現在ないっていうのは、けっこう辛い。
だから、僕がいま熱心に取り組んでるのは修練と、他の子のお手伝いってわけ。
クレアはもとからブレーン的位置づけだから、僕とクレアでほとんど検証してるんだ。レティがしょっちゅういないのは淋しいけど、クレアがいるから何とかやれてるよ。それに七歳児組が相変わらずなんでねー、淋しがるヒマもあんまりないです。
次回は七歳児組のこと、教えてあげるからね。
ルカ 9歳
レティ 8歳
スザクと双子二組 7歳
クレア 6歳
アオイ ウゲツ レビ 5歳




