B-501 sideルカ
あ、僕ん家が最後の紹介なの?うわー、なんか緊張する。
ここはB-501、僕の家族は父ちゃんのコンラート、ママがナディヤ。
ま、何回も紹介したから知ってるよね。
父ちゃんは軍人で、ママはナニー。
父ちゃんは乱暴者で、ママは超優しい。
ほんと、よく父ちゃんはこんなきれいなママをゲットしたもんだなっていつも思ってる。そんな事言うと何されるかわからないから、口に出したことはないけどね。
クレアから聞いたところによると、二人がつきあうようになったきっかけをリア先生が作ったらしい。失言クイーンがそんな気の利いたことをするなんて信じられないけど、もしかしたら奇跡の失言があったのかもしれない。
―これも、リア先生には言えないけど。
父ちゃんは筋肉マツリとかになると悪魔さながらのクソコンになるから面倒臭いんだけど、実は話の分かる人だったりする。だから僕も本当に嫌ったりはしてないし、仲が悪いわけじゃないんだよ。
本当に誰かが困ってたりすると、すぐわかる。そんで、さりげなくフォローに回る。面と向かってお礼を言われたりすると、照れ隠しに相手をからかう。
そんな父ちゃんのいい所をわかるようになったのは、実はつい最近だったりするんだ。
クレアからルームで聞いた、「グラオ」や「シュヴァルツ」や「ヴァイス」の実態。軍の中でも特殊すぎるこの組織の中で、僕の父ちゃんは最初から「汚れ仕事」をやっていたらしい。
そういう仕事をやるっていうのは、気持ちいいものじゃないだろう。だけど父ちゃんはそういう仕事をしてるからこそ、仲間を大事にする気持ちがたくさん持てるんじゃないかと思う。
僕も偉そうに言ってるけど、これはママを見ていてそう思ったんだ。
だって、そういう人じゃなきゃ、ママが好きになるはずがない。
だから今はかなり父ちゃんを見直してるんだけど、絶対言ってやんない。
父ちゃんは僕たちみたいなチビをからかって遊ぶのが大好きなクソコンに変わりがないからね!
ママのことは、正直言ってどう言えばいいのかわからないんだ。
「優しい人」
もう、この一言で終わっちゃうんだよなあ…
ママはナニーの仕事に誇りを持っていて、自分の天職なのよって言う。
これはママを知っている全員の一致した意見でもあるし、僕らだってそう思ってる。
でも僕から見るとさ、「ママは何か別の世界を見てないかなあ?」って思うことがある。ママが誰かを心配そうに見るタイミングって、他の人とまったく違うことがあるんだ。
すごく元気に機嫌よく笑ってる人の目を見た時に、ふっと表情が曇ることがある。そんで、そういう時は必ずその人のそばにいるようにして、ちょっと声をかけるんだ。そうするとその人はホッとした表情になって柔らかい雰囲気になったり、もっとすごい時は急に泣き出したりする。
そんでママに縋ってその人はたくさん泣いて、すっきりしたいい笑顔になったりするからびっくりする。
そういう僕だって、ママに「ルカはちょっと疲れてるわね?」とか「あんまりスザクたちのやんちゃを気に病むことはないのよ?」とかいろいろ言い当てられて、肩の力が抜けたことが何度もあるんだ。
大人たちはみんな「ナディヤは昔からそういう直感が鋭い」っていう認識でさ、不思議だねーって言って終わってる感じ。でもなぜか僕はわかる気がするんだ。
ママは「星」を見てる。深淵の星じゃない、他の「星」を。
なんでそう思うのか、これがまた自分でもよくわからないんだよね~…
ごめんね、こんな訳のわからないこと言って。
とにかく、僕の父ちゃんとママはこういう人だよ。
そう言えばさ、僕がルームの中で寝こけちゃった後から父ちゃんの態度が変わったんだ。前までは僕のことをとにかく父ちゃんがからかいまくって、僕がムキー!ってブチ切れて、ママに言い付けてやる!ってなっちゃうパターンだったんだけど。
最近、さらっと真面目に返事することが多くなったんだよね。思うに、父ちゃんの中で「話すに値するほど成熟してるかどうか」がターニングポイントなんじゃないかと思う。ルームで一気に国語の成績が上がった僕らへ、普通に返事するようになったんだ。
「…ルカ、何か困ってない?」
「え?あー…ママにはわかっちゃうよね。えっとさあ、レティのことが少し心配なんだ」
「まあ、レティ?どうして?」
「レティが土特化っていうことで、フィーネ先生たちがチーム作ったでしょ?でもレティはさ、ほんとはちょっと脆いっていうか、繊細な子だと思うんだよ。なのに作りたいのが武器って…なんかアンバランスなんじゃないかなって気がして」
「…ふふ、そうね、レティはとても繊細で真面目な子よね。でもルカ、それでもレティは自分で動き出したわ。あの子が本気で何かを掴もうとしてるなら、信じて見守ってあげるのもいいんじゃないかしら。もし失敗しても、フィーネたちがいる。それに、心配して見守ってるルカもいるじゃないの。レティが辛い時に、気付いて支えてあげればいいと思うわ」
「そっか、そうだよね。いまレティは楽しそうだし、やる気で目がキラキラしてるもんね」
「おぅいルカァ、お前レティのことあんましナメんな~?」
「ナメてなんかないよ。なんでそんなこと言うの、父ちゃん」
「レティの芯は強いぜ?お前だってそれはわかるだろ」
「うん」
「そういうやつに『転びそうな気がするから心配だ』っつーて、お前が先回りして躓きそうな石ころどかして何になるよ。自分の目標が定まったやつは、石につっかかって転んでも自力で立ち上がる。お前ができるこたぁ、その頑張ってるトコをよく見ててやることだけだ」
「…そっか」
「おう、お前そういうの得意だろ。見ててやれや、それが一番レティの力になる」
「わかった。ありがと父ちゃん、ママ」
「ふふ、ルカが優しい子で嬉しいわ」
「あー…ルカ、でもお前、あんましレティばっかりに構うなよ…俺は永久凍土でアイスマンになりたかねえ…」
「は?」
「コンラートったら、まだそんなことを言ってるの?」
「お前はあいつのヤバいとこ知ってるだろ!やるっつーたらやるんだよ!」
「…そうね、完全犯罪になりそうね。ごめんなさい、私じゃあなたを助けられないわ。頑張ってねコンラート」
「ひでえなナディヤ…」
「何の話してんの?」
「報復上等で隠密抹殺な趣味を持つヤツの話だ…」
「 ? わかんないけど、その人強そうだね。がんばれ父ちゃん、おやすみ」
父ちゃんがこういう話し方をする時は、僕に言いたくない時。それをいくら教えてって言ったところで絶対話さないからね、「面倒臭いコン」になっちゃう前にさっさと離脱するに限るよ。
「諦め早えーな!」とか背後で言ってるけど、気にしなーい。
サヨーナラー、グッドラックゥ~☆




