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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
【猫の庭 家庭訪問】
23/103

B-601 sideレティシア





ここはB-601号室。住んでいるのは私の家族、全部で四人。

パパがアロイス、ママがハイデマリー。

私がレティシアで六歳、弟のウゲツが三歳。



パパは白縹の軍部組織ヴァイスの統括長っていう役職と、グラオのトップという顔も持っているの。こう聞くとすっごく厳しそうな人って感じなんだけど、全然違うのよ?私やママに言わせると「根っから苦労性の世話係気質」という感じ。


普段のパパはふんわり優しい人で、猫の庭では毎朝の子供たちの修練を指導してくれる。元教導師だから、悩みがあったり修練の進み具合がおかしいとすぐに気付いて話を聞いてくれる。みんなが頼りにしているし、私もウゲツもパパを尊敬してる。


でも家にいるとねえ、ママにすっごく甘えるのよね。そういうところは「男のプライドにかかわるから、他の人に言っちゃだめよ?」ってママに言われてるから、バラしたことはないけど。


きっとヴァイスのことやグラオのこと、それに教導師の役目のこともあって、いつも外では気を張ってるのかもしれない。だから私もウゲツも家ではパパにお茶を出してあげたり肩を揉んであげたり、いろいろするようにはしてます。


そうすると、パパはあまーい顔になって私とウゲツを抱っこする。「こんなかわいい子が二人もいるなんて、僕ってかなり幸せ者だよね」と言うパパは、ママと目を見合わせてもっともっと甘い顔になる。私たちはみんな、パパが大好きなの。





ママはレア・ユニーク魔法の保持者で、魔法の名前は「幻影ファントム」。今現在白縹にはレア持ちはコンラートさんとママだけしかいないわ。レア・ユニークと認定されるのはマザーの基準によるところが大きいけど、ユニークが「本人の資質もあるけど、主に努力で開花する」魔法なのに対して、レアは「完全に本人の資質でしか発現しない」というのが一番の違いなんですって。


私もウゲツもパパの資質を引き継いだのか、自然の体現者としてほぼ確実な宝玉候補。でも、二人のどっちかがレア・ユニークの資質を引き継げばよかったのになあって少し残念な気持ちもある。だって、ママはすごいから。


ママはいつだって陰で努力する人。表では「何てことないわ」って涼しい顔して皆の話を聞いたり、必要があれば矢面に立ったりする。だけど家では「何その制御、人間ってそこまで魔法制御力を手に入れられるの?」っていうほど緻密なことを自分に課して訓練しているのを見かける。


この前見たのは、つまようじを千本くらい使って「猫の庭模型」を作っているところだった。接着も何もなしに、バランス制御するマナだけを緻密に使って一階の厨房と食堂、パティオに水晶の修練ルーム、紅たちが使っているコンシェルジュカウンター…その全てを汗だくになりながら、すごい速さで作っていた。


ママは私とウゲツとパパにだけ、そういう姿を見せる。「あなたたちは私の可愛い子供だから秘密を見せるのよお?外では、ナイショ。これは女のプライドよぉ?」なんてウィンクするママはとってもきれい。そうやって努力して得た力を、みんなのために使うママを見ているから…だから、ママは私の目標なの。




ウゲツは三歳の、私の可愛い弟。家の外ではお互いに「男のプライド」と「女のプライド」がわかってるから、あんまりベタベタしないけど。家ではもう、ベッタリ。私がウゲツのこと可愛くて仕方ないのもあるんだけど、ウゲツはウゲツで私のことを大事に想ってくれてるのがわかる。


ルームで話すようになって、それはもっとはっきりした。



「レティも僕も自然の体現者だけどさ、僕もたぶんちょっと変わった能力になる気がしてるんだ」


「あら、そうなの?私みたいに特化型なのかしら」


「んー…僕にもさすがにそこまでわかんない。でも能力発現時に何か危ない感じがしたら、レティはすぐに僕から離れて逃げてね」


「何言ってるのウゲツ!そんな訳ないでしょ、ウゲツを置いて逃げるなんて、ありえないわ」


「もう、そう言うと思ったよ。そうじゃなくってね、僕は自分の能力なんだから、どんなに苦しんでも自分を殺すことはないと思う。でもレティはどうなるかわからない。そしたら、僕からとにかく離れて、パパやママの助けを呼んでくれるのが一番いい方法でしょ。大好きなレティにだから、お願いするんだよ」


「…わかったわ、約束する」


「よかった、レティが約束してくれるんなら安心だよー」



この話をした後、ウゲツは家にいる時に前よりもっと私と一緒に行動するようになった。「レティー、レティー」と舌たらずに私を呼んで、手をきゅっと握って、笑う。一緒に絵本を読んで、一緒に眠くなる。


何かの特殊魔法の予感があるのか、「自分がどんなに苦しんでも」なんて言うウゲツを見てると心が痛い。可愛い弟が苦しむかもしれないなんて怖いし、このことはパパとママにはもう話してあるけど。


おかげで私は「ウゲツがかわいすぎる!」って感じになってしまったし、ウゲツは「僕がお姉ちゃんを守る!」って感じになってしまったし、ママもパパも呆れるほどベタベタした姉弟なの…みんなには知られないようにしてるけどね。





「ウゲツはレティが大好きだねえ…なんか心配になっちゃうよ、シスコンってどういう弊害があるんだろう…」


「パパったら、そんな変な子みたいにウゲツのこと言わないで?それを言うなら私はウゲツ大好きのブラコンよお」


「うーん…」


「アロイスぅ?重度のシスコンのあなたが言っても説得力ないわよ…あなたを見てたらシスコンはすごい才能の持ち主ってことになるわよ?だったらウゲツもすごい才能の持ち主よ。ねえウゲツ?」


「うん、がんばう」


「え、僕ってすごい才能とか思ってるの、マリー」


「そうよお、あなたのやってること、他の誰ができるっていうの?グラオのクセの強いみんなを纏めてミッションをこなし、子供たちの教導師をやって、ヴァイスで中枢や軍上層部をダマくらかして、風通しのいい組織にしていって。猫の庭へ帰ってくればみんなにおいしいごはんを作っちゃう。ね?すごいでしょう私の旦那様は」


「もー、マリーかわいい!反則!」


「私もウゲツも、パパのことすごいって思ってるわ。ルームでいつもその話してるわよね、ウゲツ」


「うん、ママもー、パパもー、しゅごい」


「もー、レティもウゲツもかわいい!反則!みんなズルい!なんで家に入ると僕のことだけみんなで甘やかすんだよー」


「パパが大好きだからよ、当たり前じゃない。ねえママ」


「ふふ…そろそろ勘弁してあげてレティ、アロイスが顔真っ赤にしてるわぁ」


「そっかあ、もっとパパの肩揉んであげたかったけど…照れちゃったパパの担当はママだものね。私はウゲツと絵本読んで寝るから、パパをよろしくぅ」


「あら、ありがとうレティ。じゃあウゲツもお休みなさい、お姉ちゃんの言うこと聞いていい子で寝てね?」


「あーい」



パパが真っ赤になっちゃうと収拾つかないので、「アロイスのプロ」のママが寝室で宥めてあげないとおさまらないんですって。


私は大好きなウゲツに絵本を読んであげようと思います。

ではお休みなさい。




  

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