B-801 sideライノ
ういーっす。
今日は俺ん家な。
あ?
ライノだっつの。レイノはあっち!
部屋番号は~…B-801だと思うぜ。
いいじゃんか、アバウトでも何でも部屋は勘でわかってるんだよ。
親父はカイで、母ちゃんはユッテ。知ってんだろ?
カイは猫の庭で一番ヤベェ筋肉持ってる。
ユッテは猫の庭で一番ヤベェ速さを持ってる。
えー!どうヤベェかっつーのも説明すんのか!?
まあいいけどー…
カイの筋肉はとりえず暑苦しい。
俺らがまだチビの頃、昼寝させようとしてカイが両脇に俺らをセットしてガーガー寝ちまったらしいんだけどよ。カイの筋肉熱量と俺らのコドモ体温の相乗効果で、真冬だったのに熱中症寸前だったらしいぜ。ユッテが半泣きで「殺人筋肉はヨソで発揮しなよ!」と無茶苦茶な怒り方して、カイはそれ以来俺らとは寝ない。
でもカイの筋肉はかなりおもしれえ。
寝てるとこ見てると、胸筋がビコビコ震えてることがあんだよな。その上に馬車の模型乗っけとくと、胸筋が震えるたびに馬車がカイの腹に向かって走ってくんだ。俺ら楽しくなっちまって、家中の模型を集めてカイの胸筋の上に置いたらさあ、とっくに気付いてたカイがバボン!って胸筋膨れ上がらせたもんだから馬車が飛んでって壊れちまった。あれは危険だからもうやらねえ。
んで、カイの筋肉は最強。
俺ら、家でもかなりカイに勝負仕掛けてんだけどよ。まあ、俺らみたいなガキじゃ敵わねえわな。そんでよ、腕相撲すんのに「カイは小指一本」「俺は両手と体重かけてもいい」っつークツジョクテキなハンデ戦やったことあんだよ。まー、勝てねえ勝てねえ。全身筋肉鎧だから不意打ちしても何しても、ダメージ入らねえんだ。
ちなみにユッテから聞いた話によると、俺らは一度だけカイに勝ったことがあるらしい。
俺らがまだカイと一緒に寝たりしてた頃のことだ。
チビの時から寝相が悪いから、俺らはベッドを縦横無尽に荒し回ってたんだってよ。
で、熟睡してるカイの鼻っ柱へレイノが裏拳。
同時に俺が金的へ踵落とし。
「文句なしの快勝だったね、あれは」とユッテが言ってた。
…覚えてねえっつーの。
マジすまんかった、カイ。
痛かったろーなー、話聞いただけで股間がヒュッとしたわ。
あー、後はユッテか。
ユッテはさあ、かなりマトモな神経してると思うんだよな。猫の庭の父ちゃんズ母ちゃんズってのはどっかしらヘンなのが多いんだけどよ、意外とユッテは常識派だったりすんだよ。で、意外だと思うだろうが常識派仲間はコンだ。
マジメな話してて、一般的で常識的な意見が聞きたいならユッテとコンだな。
良い子の模範解答聞きてえならオスカーだ。
優しい意見が聞きたきゃナディヤ。
それ以外?
ダメダメに決まってんだろ?
お前らもまともに生きたいなら意見聞くやつは選べ、破滅すんぞ。
んで、ユッテのヤベェ速さの話な。
…あー、また股間がヒュッてしちまうけどガマンして話してやんよ。
えーと、俺とレイノがクローゼットからグローブ持ち出した時な。
ユッテの業物短刀「オサフネ スケミツ」は俺の股間から二センチ下。
「オサフネ キヨミツ」はレイノの股間から二センチ下。
説教から逃げ出そうとピクッと動いただけで、もう刺さってた。
もちろん峰じゃなくて刃が上向いてたさ…
あとはユッテの好物、「ナディヤのさくさくサブレ」を盗み食いしようとした時な。
サブレに指が触れた瞬間、俺の尻に「オサフネ スケミツ」が。
ライノの尻に「オサフネ キヨミツ」が。
割れ目に沿って、キレーイに峰が挟まっててさあ。
掠れた声で「食い物の恨みは恐ろしいよ…?物理で尻に『地壊』の効果出してやろっか…」って耳元で言われたんだわ。背後にいたこと、マジでわからんかった…
んで、草原で俺らとスザクがボール蹴って遊んでたら、丁度草原に出てきたルカの頭にクリーンヒットしちまったんだ。「ルカ悪ィ!ボール取ってクレー」って言ったらユッテが出てきてよー。「謝り方、忘れたッポイね?アホか、アホなのかアンタら?」ってドスの効いた声で言われてよ。
そっからのユッテの動きは俺らに追えなかったぜ。
ドリブルしながらバコンバコン俺らにボールぶつけてくるんだけどよ、跳ね返ったボールが行く方向に、必ずユッテがいるんだよ。全然ボールを奪えないわ、集中して狙われた尻は腫れ上がるわ、マジドゲーザでルカに謝ったっつの。
―なあ、もうヤベェ話はこんくらいでいいかあ?
段々シリまで痛い気がしてきたからよ…
ま、俺らがやらかしちまうとこういう目に遭うんだけどさ。
普段はかなり仲がいいぜ?
スリリングで笑えることが大好きだからな、俺ら。
「ライノ、レイノ、これ見てみ…ぶふ!」
「なんだよユッテ…ブッファ!」
「なんだあ?………だーっはっは!」
「お、お前ら何面白そうなモン見てんだ?」
「カイ、お帰りー!見てよこれ。アルマの新作なんだけどさあ。またガードにダマされたらしいんよ」
ユッテが俺らに見せたのは「アルマの異文化コラボ作品ナンバー24」だった。
コン用の「全身カーキ色だから差し色コーデ☆」を作るつもりで、下から上へ白・黄・オレンジ・赤のグラデーションTシャツ。んで異文化コラボだからガードに古代語教えてもらって書いたんだと。
【温度計 危険域】
書かれた文字がコレで、背中にカイのお宝映像記憶「サーモメーター・コン」のプリント付き。
これは…ヤベェ。
アルマが作るから、使われてるコンの顔面画像がカッコ良さ気なのに真っ赤だってのが更にツボ。
俺ら四人はいったんツボると笑いが止まらねえんだよ。
しかもツッコミ担当がいねえから、酸素不足でみんな死にかける。
ハヒハヒ言ってると、なんとか冷静になったカイが「今だお前ら、アブドミナル・マッスルに鞭打つタイミングが来たぞ!」と叫ぶので、全員で腹筋がっしがっし鍛えて終了だ。
あー、今日もいい汗かいたぜ。




