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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
レティシア 喜びをもたらす
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最終兵器ポエム

  







金糸雀の里で出会ったセリナお姉さんの剣舞を見て、私が今までどうして石や土、そしてパパのお宝包丁やユッテ先生の短刀に心惹かれていたのかがわかった。


私、自在に武器を作りたい。

ユッテ先生の大切な業物の短刀も、中央の有名な鍛冶職人が打ったすごい切れ味の包丁も、光を反射していたあのシミターも、コンラートさんが愛用しているカランビットナイフも、サバイバルナイフも、何もかも!


触れたら斬れてしまいそうな、あの刀剣たち。

無機物のはずなのに、生きているような気配のする刃紋を見ていると、まるで催眠術にでもかかったように見入ってしまう。


いつかきっと、自分で作り上げた武器を自在に操って…

セリナお姉さんのように、戦ってみせる。




*****




翌日、授業の後で早速リア先生の所へ相談に行った。

一生懸命リア先生に武器を作れるようになりたいって言ったんだけど、「鍛冶を学びたいってこと…?」と不思議そうな顔をされてしまって。そうじゃなくて、自分の魔法で作りたいのと言ったら「ガヴィみたいにってことね?」と言った後、少し考え込んだ。


―無茶な相談だったかしら。

なにも、私は夢物語を言っているつもりはないの。

なんとなく…なんとなく、いつかできるようになれそうな気がしているから、こんなに夢中になってしまうモノは他にないから、どうしても。


自分だけではどこから手を付けていいかがわからないもどかしさで、居ても立ってもいられない。


お願いリア先生、私がやるべきことを教えてください。



リア「う~ん…クレア!ちょっと来てくれるー?」


クレア「なあに、ママ」


リア「レティがね、こういうことを言ってるんだけど。つまり土特化の宝玉として、武器生成の直感が働いていると推測できる。この場合私としては、玉鋼等素材の分子構造から製造過程まで、全てを知らなければマナで生成するなど不可能じゃないかと思ってしまうんだけど。―でもレティは『魔法』で作るのだし、そこまで科学的な詳細を知らなくともしっかりしたイメージさえあれば作れてしまう可能性も捨てきれない。そこは『本物の宝玉』だから、マナによって事象の直接変換ができてしまう可能性のことを言っているんだけどもね。回り道してでもそういったことを地道に勉強すべきか、鍛冶工房を見学などしてイメージ優先でいろんな出来合いの刃物を見て行くべきか、悩みどころなのよね」



私とクレアはちょっと呆気にとられていた。


リア先生、どうしちゃったの??


クレア、四歳なのよ?


六歳の私の悩みに対してここまで真剣に考えてくれているのは感動しちゃうくらい嬉しいんだけど、パパたちに相談じゃなくて、クレアに相談なの??


クレアは少し面食らった後、ちょっと探るようにリア先生を見た。



クレア「ママ、気付いちゃった…と、思っていいのかしら」


リア「ふふん、クレアを産んだのは誰だと思ってるのかしらあ?たった四歳の娘が高度な知識を有していることに喜ばない親がいると思ってる?何で隠してたのよお、水くさい!いっくらでも、何っでも教えてあげるのに!」


クレア「 ―参りました。 えーと、私は両方同時進行で勉強した方がいいと思うわ。玉鋼の分子構造まではどうかと思うけど、玉鋼やその他金属の抽出・製造過程は必須だわ。それとレティはつかの拵えまで作れるとは限らない。金属でできていない部分まで作りたいのか、あくまで刃の部分だけ作りたいのか、何もかも金属で形作りたいのか。それらを見極めるためにも鍛冶工房の見学には賛成よ。それと、この件に関する考察チームにフィーネ先生とパウラお姉ちゃんとガヴィが欲しいわ。レティの能力を存分に開花させるために全力を尽くす、シンクタンクが欲しい」


リア「ん~、サイッコー。なんて良い日なのよ今日は。うちの子天才。うちの子賢者。レティ、任せなさい。ちょいとフィーネへ話を持って行けばほぼ全て揃うでしょ。後はそうねえ…その旅芸人さんの映像記憶が山吹や金糸雀のライブラリーにないか、ダンとインナにも聞いてみるわ。見たいでしょ、レティ?」


レティ「み、見たいっ 白縹のライブラリーでは見つからなかったの!」



身を乗り出して力いっぱい返事すると、リア先生は「やる気のある生徒っていいわぁ~、がんばりましょレティ」と言って、それはそれは綺麗な笑顔になった。


そしてフィーネ先生へ通信し始めたので、私はクレアに向き直った。



レティ「クレア、ありがとう!すごく嬉しいわ、私。でも、その…良かったの?お勉強しまくってたことを隠してたんじゃ、ないの?」


クレア「ふふ、問題なんて何もないわ、レティ。ルームでみんなの論理的思考が飛躍的に上がっていたのは私から見ても顕著だったし、ママならすぐに気付くと思ってたもの。ナイショにしてたのはね、パパとママをびっくりさせちゃおうって思ってたのと、少しだけ『気味悪い』って思われたくないなって考えてて。でもまあ、ママならこうなるだろうって思ってたわ。後はパパを驚かせちゃおうっと」


レティ「あら、意外だわ。クレアのことを気味悪いなんて、誰も思わないのに」


クレア「猫の庭の家族なら大丈夫でしょうけど。何も知らない第三者が見たら、こんな四歳は薄気味悪いに決まってるわ。だからバレてスッキリしたかな」


レティ「あは、じゃあ私もオスカー先生がびっくりするとこ見たいわ。どうやって驚かせるのお?」


クレア「んー、ここはママにも協力してもらおうかしら。古文書の解釈に関するディスカッションでもしてるとこ、パパに見てもらうとか?あ、歴史書でもいいかな」



私とクレアは目を見合わせた後、プハッと吹きだして笑い転げちゃった。


面白そう、それ!


「せっかくだから、もうみんなが居る前でやっちゃえば?」なんてクレアに言うと「それってあざとくない?…なんだかデビューっぽくてヤだな」と渋い顔。


すかさず通信を終えたリア先生が話に入ってきて、「なによう、天才が派手にデビュって何が悪いの!」と鼻息が荒い。


―しまった、クレアってオスカー先生とこういうところが似てて、あんまり自分が前に出るのって好きじゃないのよね。


でもクレアは負けなかった。

さすが、リア先生の娘歴四年。

リア先生のこと、よく分かってる。



クレア「ねえママ。私はパパだけびっくりさせたいの。だからみんなの前で派手にパフォーマンスするなんて、白霧が増えるほど嫌なの。私の修練が遅れて、勉強はできるけど濁り玉だなんて言われたい?濁り玉じゃあ『うちの子天才』なんて言っても説得力がないわ」


リア「クレアが濁り玉に?ハッ!そんなの万が一にも有り得ないわね。わーたーしーの、娘なのよ?アリエナーイ」


クレア「ママったら、そうやって欲に目が眩むと論理的思考力が一瞬で破綻しちゃうのね。あの金糸雀歴史書第16巻847頁に挟んである栞にこっそり書いてあるポエムはこの状態の時に作られたと推測していいと思うの。えーと、確か『オスカーの腕は揺り籠のよう―「キャアアアイヤアアアアアやめてえええええええ!」」



私はリア先生が土下座してクレアの足にしがみつくという、この世で一番みじめな命乞いを見ることになりました。


もしいつか恋に落ちてもポエムだけには手を出すまいと心に刻むことができたので、クレアにもう一つ感謝することが増えたのでした。







  

白縹の瞳は修練が足りないと白い霧がかかったような、

透明度の低いくもった結晶のままなのです。


深い悩みが発生したり、煩悩が払拭できない状態のことを

「白霧が増える」とか「白霧にまみれる」という慣用句として彼らは使います。


また精神年齢が低すぎたり、魔法の威力が弱い人への蔑称として

「白霧が払拭できないひどい未熟者」=「濁り玉」という言葉があります。


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