表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
レティシア 喜びをもたらす
11/103

あなたがいないと、こうなる

  






ルカは二日後のお昼くらいに目覚めた。

でも、自分が何でこんなに長く眠っていたのかわかっていない。



一気に十人もの対象者へ魔法行使したから、疲れ切っているんだってパパは言ってた。


でも目覚めて一番に「お腹すいた、とんかつ食べたーい」って言ったらしいから、もう元気いっぱいだけど。





***** ***** *****




パパはダイブアウトした後に「あ、いけない…これ言い忘れてた」と言って、三歳児も含めた全員に話しかけた。



アロ「えっとね、たぶんルカはラック・チェインを使ったこと、覚えていないと思うよ」


クレア「…え?自分で魔法行使、したんでしょ?」


アロ「あは、これもパウラの受け売りなんだけどね。占術師は力が安定しないと、その途方もない力の世界に飲まれて正気を保てなくなるんだって。だから、今はその記憶を忘れることで自分を守っているらしいよ」


レティ「…じゃあ、もしかしてルカってとっくにユニーク発現してたの?」


アロ「ルカが初めてラック・チェインの行使をしたのは二歳になる直前だったかな」


クレア「に…二歳…!?」


アロ「もちろん、その時のことを本人は覚えてないよ。幼すぎて覚えてないのか、パウラの言う通り防衛本能で忘れてるのかはわからないけどね。だから、ルカに何を思って魔法行使したの?とか聞いてもわからないと思う。この話、ウゲツたちに今度のルームの日にでも教えてあげてね」


レティ「うん。わかったわ、パパ」



それだけ言うと、パパはリア先生へ顛末を話しに行く。

眠っているルカは、ヨアキムが羽で運んで行った。


私はナディヤママがルカについていたいだろうなって思って、話をしに厨房の方へ行った。ナディヤママはコンラートさんと話していたけど、私が近づくと二人して「どうした?」って顔をした。



レティ「ナディヤママ、コンラートさん。ルカがラック・チェインを使って眠っちゃったの。詳しくはパパが話してくれると思うけど、今日はちっちゃい子のことをプラムたちとヨアキムにお願いして、ルカについててあげてほしいの」


ナディ「まあ…そうなの、わかったわ。ありがとうレティ」


レティ「ううん。そ、それと…もう一個話があるの」


ナディ「なぁに?」


レティ「私が弱くて、泣いちゃったせいで、ルカ、ユニークを使ったんだと思うの。ごめんなさ…」



泣くな、泣くなって思ってたのに、どうしても我慢できなくって。

ぽろぽろと零れる涙が、すっごく、すっごく憎たらしかった。

何て弱い私。

何て情けない私。


ナディヤママは厨房のカウンター越しにコンラートさんとしゃべっていたから、スッと外へ出てきて私を抱き締めた。



ナディ「もう、レティったら。あなたのせいじゃないわ。ルカは眠ってるだけなんだもの、何も心配しないで」


コン「レティはハイデマリーに似て真面目すぎだぜ?ルカが起きたら、おめーのせいでレティが泣いたぞっつーて一人筋肉マツリさせとくからよ、もう泣くな」


レティ「だ、だめー!ルカじゃなくって私が受ける!」


コン「うぇ!?ぶっはは、冗談だっつの。あんがとなレティ、ルカはなんも心配ねえよ安心しな。お前の父ちゃんが頼りになるやつなのは知ってるだろ?」


レティ「…うん」



コンラートさんに頭をガシガシとされて、鳥の巣みたいになった頭のままみんなの所へ戻った。するとリア先生が来て「レティ、今日の授業はお休みしましょ。週末と合わせて三連休よ~」と言う。コクンと頷くと「もー、美人はこんな頭のままウロチョロしちゃだめ!」なんて言いながら、髪をとかしてくれた。





その日の夜は、ママが私のほっぺたにたくさんキスした。そして「よく頑張ったわレティ。それと、自分の弱さを知った人の方がたくさん強くなれるのよ、知ってたぁ?」と言った。


次にウゲツのほっぺたにもたくさんキスして「ウゲツ、ライノたちを庇って、自分たちがワガママ言ったから悪いんだってパパに謝ったんですって?素敵よ、素直に謝れることも、仲間を思いやる気持ちも。二人とも、自慢の娘と息子よ?」と、私たちを抱きしめる。




そんなママを見て、パパも笑ってる。

ああ、今まで気付かなかった。

猫の庭の大人たちは、私たちをこうやって守ってくれてたんだ。

私たちが罪悪感で落ち込まないように、みんなして心を守ってくれてたんだ。



じゃあ、私はきっと、うじうじ悩まず、前を向いて歩けば、いいのね。

後悔も、懺悔も、ルカが今日のことを思い出した時までとっておこう。

明日からはいつものレティシアに、戻ろう。







*****







次の日、約束したわけでもないのに全員がルカの家に集まっていた。



レティ「…で、スザク。これはなあに?」


スザク「猫団子だな!」


アオイ「だなー」


レイノ「スザク、問題はソコじゃねえ。なんで寝こけてるルカの周囲にこんなに猫を集めたんだ」


スザク「ばっかだなレイノ!こんなたくさんの猫に囲まれてりゃ、ルカも触りたがって早く起きるだろ」


ライノ「バカはおまえだろ、スザク…これ、絶対寝苦しいぜ?」


レティ「アオイ、せっかくの猫団子だけど…お布団が汚れちゃうわ。この子たち、ブナの森で遊びまくってたんだもの。お願い、帰らせてあげてくれる?」


アオイ「わかったー」



十数匹いた猫を引き連れて、アオイは正面玄関で「ばいばーい、ありがとね」と見送った。私はハウスキーパー隊のメイド猫、コラットに頼んで、猫の毛や、見事にスタンプされた肉球の跡だらけのお布団を綺麗にしてもらった。


ハァ、と思っているとニーナとノーラは端末でこそこそと調べ物をしてる。何かイヤな予感がして、優しい声で「二人とも何してるのぉ?」って聞いてみた。



ノーラ「…ルカが早く起きられるように、お薬作れないかなって思って」


ニーナ「そ!あのね、こないだ図書館見てたら『毒薬が少量なら気付け薬になることもある』って書いてあったの。ルカの気付けに何がいっかなーって」


レティ「だめよお?またヨアキムのあの腕見たいの?お勉強するだけならいいけど、作っちゃダーメ」


ノーラ「…やっぱり、ダメよね。じゃあニーナ、あれしかないわ…」


ニーナ「そうねー!最初からこっちにしとけばよかったんだァ!」


レティ「えっと、次はどんなアイデアがあるの?」


「「おまじない」」


レティ「…え? あの、どんなことするの?」


「「ボディペインティング」」


レティ「どんな効果が、あるの?」


「「悪霊退散」」


レティ「ど、どこにペイント、するの?」


「「顔、一択」」


レティ「そ、そう…」



ニーナとノーラはアルマ先生に借りてきた魔石を持っていた。

それにはよく服へ古代文字を書く時に使っている『ペイント方陣』が入ってる。

アルマ先生が「またガードにダマされたァ、もぉ~」って叫んでる時は、大抵これを持ってるの。


一応この魔石に入ってる方陣は水性絵具しか出ないタイプみたいだし、害はないと思う、けど。


チラリとピーチに目を向けると『汚れはハウスキーパー隊が落とせるからOK』とフォグ・ディスプレイを私だけに向けて見せ、ルカの顔面をキャンバスにすることを許可していた。




一時間後、ルカの顔はどこかの先住民が戦いに行く時のような勇ましいものになっていた。眉毛がすっごく太くなってて、虎みたいな縞模様が両頬にあって、般若みたいにコワい顔。これさえ描いておけば、悪霊が恐れて近寄らなくなるんですって…どこでこんなの知ったの?




最初にノーラが眉毛から描いたものだから、作成途中は爆笑していたスザクたち。でも完成したルカの顔面ペインティングを見て目をキラキラさせ始めた。



プチ三バカ「…カッケェ…!!俺らにもやってくれ!」



現在、B-501号室には小さな般若が四匹います…






満足したニーナとノーラは図書館で調べ物の続きを始めた。

そしてウゲツとレビとアオイは三人で真剣におしゃべりの練習中。



レビ「キラキラ、たーくさん」


ウゲツ「みえない…まなぐらしゅマナ・グラス、くらさい」


アオイ「アオイもー」


ウゲツ「アオイ、ちゃんとおしゃべり。ちゃーんと」


アオイ「うー…アオイもーまにゃぐやすーくやしゃい」


チェリー「はい、どうぞー」


レビ「キラキラ、ざぶざぶ」


ウゲツ「レビも、ちゃーんと」


レビ「キラキラ、ざぶざぶ、ここ。みてー」


アオイ「あったー。ざぶざぶねー」


レビ「でしょぉ~?」


ウゲツ「ほんとら。あった。わー…」



マナの波が見えたらしい三人は、呆け始めた。

ウゲツは二人に「ちゃんとしゃべる練習して」って軌道修正に必死ね。

苦労してるわね、がんばるのよ…



クレア「ねえレティ。あれ、いいの?顔面だけならルカも笑って許してくれると思うけど…」


レティ「え?」



…ちょっと目を離したスキに、スザクとライノとレイノは、ルカの胸やお腹をキャンバスにしていた。


ルカの胸にはピンクの星。お腹にはシックスパックの筋肉を書き、鎖骨のあたりに『悪即斬』と少しヘタクソな字で書いてあった。あれ、バルお爺ちゃんが大好きな昔の剣豪の理念とかなんとか…パパがヴァイスを引き継ぐ前の執務室にあの字が額縁に飾られてたと思う。



レティ「…スザク、ライノ、レイノ。やり過ぎだと思うわ…」


スザク「何でだ!この星はカミルが『最強の男には勲章が付くんだよ』ってすげえ怖い顔してたんだぜ?悪霊来なくなるに決まってる!」


レイノ「これ、バル爺が崇めてた言葉だぜ?悪霊なんて斬っちまうって」


ライノ「強ぇ男は筋肉だろ。この腹筋見たら悪霊来ねえよ」


レティ「…じゃあ、もう悪霊も来ないわけだから大丈夫ね。これ以上はやらないでね」


プチ三バカ「おう!」



ピーチに「そろそろハウスキーパー隊、呼んであげて…ルカがかわいそう」と言うと、この家専属メイド猫のコラットがもう一度やってきた。でもなかなか消そうとせず、いそいそとルカのパジャマを上だけ脱がせて、きちんとまっすぐに寝かせる。



レティ「コラット?何で消さないの?」


コラット「あのね、コラットはね、コンラートに指令を受けてるの」


レティ「え…何を言われたの?」


コラット「『チビどもが何か面白いことやらかしたら連絡しろ』って」


レティ「ダ、ダメ!この映像記憶だけで、ルカはこの先十年はイジられちゃうわ!」


コラット「ごめーん…もう送信しちゃった…」


クレア「…レティのせいじゃないわ。元気出して、ね?」



ルカ、あなたがいないと私だけじゃ…!!


守れなかった私を、許してくれるかしら、ごめんなさい…






  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ