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2014/12/18 後書きのスマホゲーム設定に訂正・追記箇所あり

 小学校の時からずっと仲のいい友だちから、アプリを押し付けられた。

 曰く、自分には無理だったと。

 じゃあ私にも無理だと言ったのに、スマホのチャットアプリから無理やりデータを送ってきた。まだ了承もしてないのに……。


 怪しげなURLは一旦放置で、ミユキ――件の友達の名前だ――にチャットアプリから、直接連絡をとろうと言ってみた。


ミユキ>なんで?

ミユキ>別にスマホで電話でいいじゃん

ミユキ>めんどくさい

>説明不充分すぎ!いきなりにも程があるよ

>それだと、URL開けない

ミユキ>ふーん

ミユキ>じゃパソコン立ち上げてくる

ミユキ>こっちから勝手にかけるから

>わかった


 ミユキ打つの早いって!私の指が追いつかないうちに、話が終わってるし。


 もたもたしながらなんとか自分のパソコンを立ち上げた。そしたら、即パソコンの通話アプリに着信がきた。だから早いって!

 急いで通話ボタンをクリックして、ヘッドマイクをつけた。


『もしもーし?なお?聞こえる?』


 なお、は私の名前だ。


「聞こえるよ。相変わらず早いね」

『そっちが遅いだけだって』

「う……。そ、それより!このURLどういうこと?」

『ああ、それね。ちょっと待って。URLまだタッチしないでね』

「言われなくてもしないよ……」


 誰がタッチするものか、こんな怪しげなURL。

 好奇心旺盛な人ならまだしも、私は自他共に認める警戒心の塊だ。小動物並みって言われたこともある。失礼だけど。

 とにかく、何でもかんでも一度疑ってみないと気がすまない。それで安全って自分が納得できないと絶対にしない。逆に、安全だと思ったらそれはするし、安全と思えるまで情報収集は欠かさない。


 石橋を叩いて渡る、が信条。座右の銘でもある。

 

 ……たまーに、叩きすぎちゃって石橋が崩壊して損することもあるけど……それはそれ!


 その時、ポップなSEがパソコンの方からした。見てみると、アプリのチャット欄にURLが届いていた。そのURLを見たら、微妙な既視感。


「ん……?これ、スマホのと一緒?」

『そそ。って言っても、今送った方はTOP画面だから。まあ見てみてよ』

「……スパムとかウイルスとか、大丈夫?」

『石橋叩きすぎだって!ただサイト見るだけだってば!』

「ふーん……」


 恐る恐る、カーソルを動かしてURLをクリックする。

 それで開かれたサイトは――


「『ふぁんたん!』……? え、なにこれ。すっごい怪しいんだけど」


 正直趣味じゃない。

 チラ見だけして、すぐにマウスカーソルを右上のバツマークに持って行って、


『まさかブラウザ閉じようなんて思ってるんじゃないでしょうね?』


 速攻でミユキにバレた。 

 仕方なく、カーソルをずらす。


「なんで」

『うわー、すっごい嫌そうな声。なんでいつもそうかなあ。面白そう!とか思わないの?』

「ぜんっぜん!」

『夢なさすぎ!なお、アンタそれでも花のJK?』

「花はないけどJKだよ」

『そんなJK嫌すぎるわ……』


 ……確かに。 


『とにかく、そのTOPちゃんと見てみなさいよ』

「はいはい」


 言われるままに、パソコンの画面に映し出された『ふぁんたん!』TOPにある説明を読んでみる。


 『ふぁんたん!』はアプリ名らしく、煽り文句は『ファンタジーな職業を体験しよう!』だった。ファンタジー?ファンタジーの定義ってなんだっけ……。


『……もしもーし?なお?黙りこくってどうしたの?』

「あ、ごめん。ファンタジーってなんだったか考えてた」

『はあ?それより、ちゃんとTOP見たの?』

「煽り文句までかな?でも、うん、まあ……正直、私なら絶対手を出さないアプリかなあって……」


 煽り文句見る前に、まずアプリ名でそう思ったけど。

 心の中でそう付け加えた。


 ヘッドフォン越しに、ミユキのため息が聞こえてきた。絶対わざと聞こえるように言ったな!


『アンタのアプリ、ゲーム類一切ないものね。ほんっと、花なさすぎ。ていうか枯れてる』

「ええー……」


 ひどい言いようだ。

 スケジュール管理アプリとか、家計簿アプリとか、結構いいと思うんだけど……。

 面白いゲームはパソコンで出来るし。通勤通学は自転車だから、別にスマホで時間潰すこともないし。だからスマホゲームに食指が動かないんだよね……。


「アプリにゲームがないだけで、私がゲームするの知ってるでしょ?ただスマホゲームをしないだけだって」

『二回も言わなくても知ってるわよ。もう。

 アンタ以外とゲーム好きだものね。今のブームはパソコンだっけ?確か……MOとかいうの?よくやるわねー。時間あるの?』

「作ってるの!あとミユキ、私がやってるのはMMOの方」

『はあ? あー、もう。あたしにはそこら辺わけわかんないわ。違いもぜんっぜんわかんないし。

 なおアンタ、そのMMOっていうのをパソコンではやってるくせに、それの連動アプリはしてないんでしょ?』

「する意味がわからないね。MMOはパソコンで十分だよ。あと、やってるMMOは連動アプリじゃマルチプレイできないし」

『はいはい、さすがゲーマーね』

「うわてきとうな……。これでゲーマーならほぼ全世界の人がゲーマーだよ……」


 とかミユキと喋りながら、『ふぁんたん!』のTOPをもう少し見ていった。


 煽り文句通り、このアプリはプレイヤーがファンタジーな職業をロールプレイングするものらしい。

 へー、職業結構あるんだ。全部で何種類かは内緒って、なにこの運営。喧嘩売ってるのかな。買わないけど。ふむふむ、シークレットとかレア職もあると。

 基本は周回プレイかな?職業ごとの目標を達成したらクリアってあるし……んん?これは、周回プレイっていうよりクリアごとにリセット?


 あとは……あっ。


「スマホアプリ初のMMO……?」

『あ、そうそうそれ。あたしMMOの意味わかんなくてさー、だからやめちゃったってのもあるんだけど。MOってのもわかんないけどね』

「いや話飛躍しすぎだって!」

『じゃあMMOの意味教えてよ。丁度いいや』

「……ハー、わかったよ。そうだなあ……あのね、まずMOがマルチプレイオンラインの英単語頭文字をとってるの。MMOはそれの大規模版って感じ。オンライン麻雀とかはMOで、よくあるRPGものはMMOかな」

『へー』

「自分からふっといて、なにその興味なさそうな返事……」

『えー?だってさ、要するにそれって、リアルタイムでたくさんの人が一つのゲームで思い思いのことできるってことでしょ?

 あたし、他人と協力してっていうのとか、どーも合わないんだよね』

「ああうんそれは知ってた」


 でなきゃ小学校から高校まで、ずっと一緒にいられないからね。流石にミユキのことはそれなりに理解できている。彼女はソロプレイで輝く人だ。というか、ソロじゃなきゃ無理なタイプ。


 にしても……私のあの説明を一瞬で噛み砕いてわかりやすくするなんて。ミユキ、恐るべし。学年で成績上位者に入ってることはある。見た目も言動も、今時なギャルっぽいJKなのに……。うーん、見た目詐欺だ。


『今なんか失礼なこと考えなかった?』

「えっ!?べ、別になにも?」

『……ふーん。ま、いいわ。で、その時はMMOとかよくわかんなかったんだけど、たまたまそれが広告で出てきて。まーおもしろそうだったからダウンロードしたわけ』

「あ、本題に戻るのね」


 ミユキは、気になったものはなんでもやってみる、私とは逆の好奇心の塊みたいな人だ。

 でも飽き性で、すぐにやめちゃうから大体その後釜というか、尻拭いを私がしている。彼女が途中で放り出したやりかけのゲームとかは、大体私に流れてきて(押し付けてきて)、そして私がハマるっていう流れができてたりするけど……。


 今回も?まさか、まさか……ねえ?


『なお?また意識でも飛ばしてんの?てかあたしの話聞いてる?』

「聞いてる聞いてる。ダウンロードしてやってみたはいいけど思ってたのと違って正直面白くなかったって話でしょ?聞いてる」

『……ま、一応ざっくりでも把握できたならいいわ。それで、いつもほんっと申し訳ないんだけど、アンタにこれ、引き継いで欲しいの』


 ほらね!出たよ尻拭い!!

 あと微妙に、声の調子とかで私が残念な子って感じに言うのやめて欲しいな!今更すぎて言わないけどね!!


「……今度、課題手伝って」

『今度というより今回でしょうに。はいはい、わかったわよ。

 ほんとに夢も希望も花もないガッカリJKよね、アンタ』

「黙らっしゃい!」


 というわけで、しぶしぶながらも『ふぁんたん!』をやることになったけど……。


「今更なんだけどさあ、このアプリって他人に委託できるの?」

『あー、それね。できないわよ。てか、それが普通でしょ。何言ってんの?』

「えっ!?じゃあ私は何をするの!?ていうかそれなら引き継ぎじゃないじゃん!」

『今から説明するって。なんかね、“後継者”っていうコマンドがあるらしくてー……あ、あったあったこれだ。ぽちっと』

「ぽちっと?」


 ミユキ、今『ふぁんたん!』立ち上げたの?ていうか、何押して……。

 とか思ってたら、そばに置いてた私のスマホが鳴った。


「メールの音?こんな時間にメール……って、まさか……」

『あ、ちゃんと届いた?』

「……“ふぁんたん!よりミキさんの後継者に選ばれました!”ってこれ……ミユキ……このミキっていうのは……」

『モチあたしだって。よし、届いたわね。おけおけ。じゃあそのメール開いて』

「嫌だよ!ていうか後継者ってなに!?」

『あー、そうね。説明忘れてたわ』


 ミユキさん曰く。

 『ふぁんたん!』には友達招待機能もあるけど、それとは別に“後継者”コマンドとやらが存在してるらしい。

 その“後継者”コマンドとは。

 その名の通り、自分が『ふぁんたん!』サービスを退会するにあたって、それまで自身がロールプレイしてた職業をその状態そっくりそのまま他人に引き継がせられるものらしい。

 ただし。

 自分がそれまで友達招待してない人、厳密には『ふぁんたん!』に登録していない人が対象となるとか。あとそのコマンドを実行するにあたっては、退会以外にも条件があるらしい。彼女が覚えてる範囲では、課金をしてないだとか連続不ログイン日数が何日だとか。なんで退会以外にも条件必須なんだろうか……謎だ。

 とにかく。件のコマンドは、色々条件が揃ってないと押せない常時グレーなコマンドらしい。


「なんでそんな幻コマンドが実行できるんですかね、ミユキさんは」

『そりゃ、その条件全部当てはまっちゃったからに決まってんじゃん』

「あー……つまり?」

『初めて数十分、チュートリアルだけ見てすぐやめたわよ。それから……そうね、ふぁんたん!サービス開始すぐくらいにダウンロードして放置してたから……大体半年以上?』

「長っ!?

 ていうか、それやり始めたの結構前だったの?私にはなんの話もなかったけど」

『そりゃ、開始即放置で忘れてたからね』

「スマホの画面にはアプリの出てるでしょーが……」

『それね、画面の飾りにしてたわ。結構可愛いし。

 今回アンタに任せようと思ったのも、アプリ整理してみたらまったく触ってないスマホゲームが出てきたからよ。丁度いい機会だから、アンタにスマホゲーの楽しさを知ってもらおうと思って』


 うまいこと言ってるつもりだろうけど、ミユキそれ、要らないものをフリマに出すっていうのと同じことだからね。

 とは思うけど、絶対に口に出さない。言い負けるのが目に見えてる。勝ち目のない戦はしたくないんで、ハイ。あと単純に、ミユキが口喧嘩に強すぎる。勝てた覚えがない。


『なお、というわけで後継者、任せたわ』

「話の戻し方強引すぎだし、まずもう拒否権がないというあたりがもう……」


 思わず頭を抱えた。ほんともう、頭痛い。近い中間考査も相まってひどい。頭痛が痛いって言いたくなるレベルでひどい。


『あ、ちなみにだけど。引き継ぎされるって言っても後継者は新規と同じ扱いらしいから、チュートリアルはちゃんと見れるわよ。よかったわね』


 追い打ち来た。

 チュートリアルが受けられるだけ、まだマシだと思えということですかそうですか。


 たまにあるもんね。結構やってから私に流してきて、操作方法もわからないままやらせるっていうの。今回はそれじゃないだけマシってことね。


 もう引き返せないらしい。


 私、なお。それなりに忙しい女子高生生活の合間に、スマホアプリでファンタジーな職業をロールプレイしていきます。わーわーぱちぱちぱちー。……どうしよう、全然テンションあがらない。始める前からモチベーションが最悪すぎる。


 ローテンションのまま、そろそろ通話を切ろうかとミユキと喋っている時にふと気になることを思い出した。


「ちなみにミユキさん」

『んー?なに?まだ何かあった?』

「私が引き継ぐファンタジーな職業って、何なの?」

『ああ……、




 奴隷商人よ』


 ……。


「えっ」


 ど れ い し ょ う に ん ?








【『ふぁんたん!』とは】


「ファンタジーな職業を体験しよう!」がコンセプトであり煽り文句のスマホアプリ。


技術が進み、スマホゲーでもMOマルチプレイヤーオンラインができるようになった中、遂に待望のMMO(この連載では大規模なMOという解釈)、しかもRPGとして登場したのがこの『ふぁんたん!』である。


煽り文句通り、ファンタジーと聞いて考えるような職業をロールプレイするゲーム。

世界設定は、剣と魔法の概念がある中世ヨーロッパ風な文明の世界。通貨は全てゲーム内通貨、Gゴールドで統一されている。

冒険は一切ないと言っても過言ではない。冒険という名の仕事コマンドが一部職業にあるのみ。


総職業数やどのような職業があるかは、公式側から一切発表されていない。

自分で選ぶことのできるリスト(乗っている職業は20程)の中から、オーソドックスで人気のある職を選ぶことができる。リストは基本更新できない。

また、ランダム選択というものもあり、そちらは5回まで押すことができる。押すとランダムで一つ職業が選択される。ランダム選択のみでしか出ないレア職もある。


どの職業を選択しても、必ずガイドキャラがつけられる。性別は男女より選べる。稀にオカマさんがいたりする(という噂がある)。ファンタジーらしく、ガイドキャラにも種族があり、その種族も選べる。が、職業によっては種族固定もあるので注意。

※追記、プレイヤーは種族“人間”で固定である。


細かな質問でプレイヤーをゲームに反映する。やけに忠実に反映されると評判。(異世界と繋がっている都市伝説の由来1)

NPCに高度なAIが搭載されているのか、多彩な性格、会話を楽しめる。しかも同一キャラクターが存在しない(という噂がある)。また、結構リアルで死ぬと生き返らず、新たに赤ん坊が生まれることもある(らしい)。(由来2)

ゲームとして異色な、「会話機能」がある。プレイヤーが文章を打ち込むことで、コマンド操作できたりNPCと会話できたりする機能。文章として成り立っていれば通じる。プログラミングが謎すぎると話題に。(由来3)

PCでMMOをするときのように、サーバーがある。サーバーごとに国として成り立っていて、そのサーバー内のプレイヤーとはチャットできる。ギルド機能はないが知り合い機能によりフレンドにはなれる。(由来4)

NPCの中に、サーバーを移動するものがいる(らしい)。(由来5)

これだけ高度なのにスマホゲームというお手軽さ。(由来6)


真相は定かではない。公式側も謎が多い。


『ふぁんたん!』の欠点。

無課金じゃ厳しい職業があること。

課金金額が高いこと。

高度すぎるゲームなのにスマホ対応なせいか、フリーズやバグが多いこと。また充電消費が速い。燃費悪すぎ。

ものを調達するときは、プレイヤーよりもNPCからの方がどう頑張っても懐に優しいこと。



追加事項等は本編内で出てくるかもしれない。

あってないような『ふぁんたん!』設定。漠然と「ファンタジーなんだなあ。異世界と繋がってるのかなあ」と思うことができれば大丈夫です。ついていけます。


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