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明日へと続く物語 【番外編】  作者: カノン
明日へと続く物語【番外編】
8/10

過去という名の迷宮(ラビリンス)7

「今回の小テストの満点は【ヒナタ】君と【イオス】君だ!今回は結構難しめにつくったんだが、まさか2人も満点が出てくるなんてな・・・」




バチバチッ




先生の言葉を聞いた瞬間イオスとヒナタの間に火花が飛び散ると、その周りにいたクラスメイトはひそひそと呟き始めた


「なあ、あいつら一体どうしたんだ?期末が終わって以来ずっとあんな調子だろ・・・確かお前ヒナタの方と仲いいよな、フウタ」


クラスメイトの問いにフウタは(多分あれが原因なんだろうな・・・)と苦笑をすると、未だ火花をまき散らす2人を見てため息をはいた








【過去という名の迷宮ラビリンス7】








「く、無念だ・・・」



中間だけでなく、期末考査も見事ヒナタに敗れたイオスは、隣で喜ぶヒナタを見てギリッ・・・と拳を握りしめると「1点差・・・前日、睡眠さえ取っていれば」と呟いた



(だが、実技試験は完璧に出来たはずだ・・・そろそろ貼り出されてもおかしくない頃の筈・・・)



イオスはきょろきょろと辺りを見回すと、向こうから数名教員がやってきて期末考査の紙の隣に実技試験の結果表を貼り出した


「おおッ」


その瞬間再び辺りはざわめきだす



「やっぱりイオスが1位だ!流石だな!!」



その言葉を聞き、俺は口角を上げ(当然だ・・・)と心の中で呟いたその時だった・・・



「・・・と思ったら1位が2人だ!!ヒナタって転校生、実技までイオスとならぶだなんてやっぱただもんじゃないな!!あいつ、何者だ!?」


(何だと・・・?)



一瞬自分の耳を疑い、俺は実技の結果表を見ると



実技「3種目」


1位 イオス・エリクソン  応用技術:95  分析能力数値:91  スキル:80  

1位 ヒナタ・シンクレア  応用技術:91  分析能力数値:95  スキル:80 

3位 フウタ・リバルダ   応用技術:79  分析能力数値・88  スキル:85




「・・・・・・・」



お互い反対の種目で均一を取り、見事2人同着の1位を見てイオスはため息をはきながら「なぜこうなる」と呟くと、隣で「よかった、実技も何とかクリアだ!」というヒナタと一瞬目があった



「そういえば、イオス君!前からいいたかったのだけど・・・」


「何だ?」


先ほど喜んでいた顔とは打って変わってヒナタは真剣な表情をすると「最近ボクのこと睨んでる?何かをするたびに視線を感じるんだけど・・・」と直球で俺に聞いてきた


「別に・・・きのせいじゃないか?」


しれっとして答えるイオスにヒナタは「うーん」と首を傾げると


「そうかな・・・もともとイオス君の顔ってしかめっ面だし、そう感じただけなのかな!でも今さ・・・」


はっきりしないヒナタに俺は腹を立てつつ「何だ」と言うと、ヒナタは目を逸らしながら言った


「こっち見て完全に負のオーラ出しまくってたじゃん・・・さっき目があった瞬間凄く凄く怖かったんだけど、今も怖いし・・・」


(ああ、だからさっき目があった瞬間一瞬逸らしたのか・・・)


イオスは「自意識過剰なんじゃないか」と呟くと、少しムッとしたのかヒナタは「いい加減にしてよ!」と口調を強めて言った


「初めはイオス君の言う通り自分が自意識過剰なだけだと思ってたけど、ことあるごとに負のオーラ出されたらめちゃ怖いんだよ!!言いたいことがあるならはっきりいいなよ!」



「はっきり言え・・・か」



ヒナタの言葉にイオスはため息をはくと、周りでざわめくものの目すら気にせずにきっぱりと言い放った



「そこまでいうなら言ってやる、お前が気に食わないからだ・・・」


「ッ!」



その言葉を聞き明らかにむっとした表情をするヒナタに踵を返し「話はそれだけか・・・」と言って去ろうとした瞬間、ぼそりと「ふざけんなよ・・・」という声が聞こえた



「!?」



その声の主が一体誰なのかと認識する前に、俺の頭に向かって物凄い勢いで消しゴムが飛んできて

かろうじてそれをキャッチすると「ち・・・」と舌打ちが聞こえた


(何なんだ・・・一体)


俺は飛んできた消しゴムをちらりと見ると、そこには【ルキア】と名前が書いていて、イオスは以前アリスの言っていた言葉を思い出す





『お兄ちゃん、私の学年にも【シンクレア】って名前の人いるよ・・・えっと名前は【ルキア・シンクレア】っていって、確か転校生だったような・・・なんだかよくわからないけど凄い人だって噂なの!』





「おい、あんた・・・」




俺は声の主を見つけた瞬間思わず目を見開くと、ちらりとヒナタとそいつの顔を見て思った


(ヒナタが2人・・・!?)



ヒナタと髪と目の色が違うものの、あまりにも容姿がそっくり・・・いや、生き写しレベルともいえる程ヒナタと瓜2つな少年が人ごみをかき分けて出てくると、そいつはヒナタを庇うように前に立つ




「あのバッチ・・・初等部2年の生徒じゃないのか」


「何で4年の教室に!?」



まわりはそういってざわめくが、その人物は全くそれすら気にしない様子でヒナタを自分の胸に引き寄せると俺を正面から睨みつけて言った



「てめー、俺の姉貴に向かってなんてこといいやがる・・・【気に食わない?】はあ?ふざけんな!俺からすればお前の方がずっと気に食わねーよ!」


「ちょッ、ルキア!?」



ルキアと呼ばれた少年の言葉にぎょっとしたように目を見開くヒナタ同様に、イオスも唖然とした表情でヒナタを見ると、おそるおそるルキアに問いかける




「おい、お前ルキアといったな・・・今何て言った?」


「はあ?聞こえなかったのか!?もういっぺん言ってやるよ!!」




その言葉にルキアは更に深く眉間にしわを寄せると、イオスにしっかりと聞こえるようにはっきりとカツゼツよく言い放った




「俺はお前の方が気に食わないっていったんだ!!次姉貴にナメた口聞いてみろ!次は消しゴムが飛んでくるどころの騒ぎじゃねーからな!?」




「姉・・・?」




ルキアの言葉にあぜんとするイオスを見て、近くで観戦していたフウタが「いや、顔同じだから姉弟だと普通わかるだろ」と呟いた



「フウタ君、イオス君が驚いているのはそっちじゃないと思いますよ」



リックはフウヤの言葉を否定し、苦笑すると「イオス君、やっぱりヒナタ君のこと・・・」と呟く



「え・・・」



フウタは、唖然とするイオスと今にもそんな彼に今にも攻撃を仕掛けそうなルキアを交互に見て「じゃあイオスは一体何に驚いているんだよ!?」と言うと、リックは面白そうに「見ていればわかります」と呟いた




「ちょ、ちょっと待て・・・ルキアとやら、こいつはお前の姉だといったな!?」



そういって信じられないものを見る表情をするイオスを見て、ルキアは首を横に傾けつつ「ああ、そうだ!俺がヒナタ姉さんの弟だということに何か文句でもあんのか?」と拳を向けた瞬間だった・・・









「ヒナタ・・・お前、女・・・だったのか?」










「「「「「「「!?」」」」」」」










イオスの言葉を聞き一瞬静寂が走ったかと思えば、次のヒナタの言葉によって周りの沈黙が破られる






「・・・・・は?」






ヒナタの間の抜けた声とともにあぜんとしていた周りも我に返ると、さっきの静寂が嘘のように辺りはざわめき出す




「マジで!?イオスのやつ、ヒナタのこと男だと思ってたのかよ!?」


「どおりでヒナタ君に対して態度だ冷たかった訳だ!!」





「な・・・ヒナタが女!?お前達、気づいてたのか!?」




イオス同様、かなり驚いている様子のフウタを見て「はい、おそらく気づいていなかったのはイオス君とあなた【だけ】だと思いますよ」とリックは耳打ちをすると


フウタは「まじでか!?」といって叫ぶと、すぐに近くにいたクラスメイトにつっかかっていった




「ちょっと待て、気づいてたんなら何で教えてくれなかったんだよ!?嘘だろ、ヒナタが女の子!?」




顔を真っ赤にして叫ぶフウタを見てクラスメイトはぎょっとすると「まさかお前も気づいてなかったのか!?」と驚く




「何でって、普通人から言われなくても気づくだろ!?」



「別にヒナタ君の性格があんなんだしな・・・あいつの場合女の子としてあまり意識することもないし、どっちでも別に支障はないんじゃねーの?」


「フウタまでヒナタを男だと思ってたのか?つかお前、ヒナタと仲いいくせに何で今まで気づかなかったんだよ、俺はそっちの方が疑問だ!!」


「そうだ、着替えの度にいなくなる時点で気付け!あと、弟さんも初めにヒナタのこと【姉さん】て言ってたじゃねーか!お前勉強が出来るくせにそういうことは鈍いよな」




「・・・・・う」



クラスメイトに散々言われフウタはたじろぐが「そ、それを言うならあいつだって!」と言うと、未だぼーぜんと立ち尽くすイオスを指さして叫んだ


「イオスだってパートナーの癖に、ヒナタが女の子だって知らなかったじゃないか!?俺ばかり間抜けみたいな風にいうけどよ、そういうあいつはどうなんだよ!?」



「!?」



フウタの言葉でようやく正気に戻ったイオスはギロリとフウタとクラスメイトを睨みつけると「仕方がないだろ!」と声を荒げて言った



「今まで男しかいなかったA組に、何の違和感もなくすっかりなじんでるあいつを誰が女だと思うんだ!?ヒナタもヒナタだ、女の身でありながら何故一人称が「ボク」なんだ!?」


「そうだ、トイレ掃除の時顔色ひとつ変えず男子トイレに入るお前を誰が女の子だと思うんだよ!よくも俺とイオスを騙してくれたな!?ヒナタ!!」




「はあああああ?」




少なくとも先ほどのイオスの言葉にショックを受けて放心していたヒナタは、イオスとフウタの言葉でハッとすると、「誰が誰を騙したって・・・?」と言ってフウタの胸倉を掴む



「ふざけんな、こっちは勝手に性別を勘違いされて少なくとも傷ついてんだよ・・・つかお前までボクを男だと思ってたのか?悪かったな、全然女の子らしくなくて!!」



不敵な笑みを浮かべながら目を据わらせるヒナタに至近距離で見つめられ、フウタは顔を引き攣らせると、ほぼ悲鳴に近い声で「ひ・・・わ、悪かった!俺が悪かったから!!大丈夫、よーく見たら女に見えてきたから!?だからそんな怒るなよ・・・な?」と叫んだ



「よーく見たら・・・だと?」



フォローの言葉を言ったつもりが逆にその言葉が彼女の逆鱗に触れることになり、ヒナタはぴくりと顔を引き攣らせ「ふざけるなッ」と叫ぶと、フウタに向かって怒りの頭突きをお見舞いした






ゴンッ





「フ、フウタ君!?大丈夫ですか!?」





ゴンと鈍い音を立て地面に倒れるフウタを、パートナーであるリックが解放すると「フウタ君・・・気持ちはわかりますが、さっきのは怒って当然ですよ」と呟く








見事な頭突きで一撃でフウタを仕留めたヒナタは、クワっと瞳孔を開かせると

「・・・で、次はイオス!!テメーの番だ!!さっきはよくもボクのアイデンティティーを傷つけてくれたな!?おかけで私の心はズタズタだ、どうしてくれる!?」と自分の胸に手を当てながら叫んだ




「アイデンティティーて・・・ヒナタ君、さっきの語学の授業で習った単語を使いたくなる気持ちはよくわかりますが、多分使い方を間違ってます」




※【アイデンティティー】

自己が環境時間の変化にかかわらず、連続するものであること。主体性。自己同一性。

本人に間違いないこと。身分証明。       【国語辞典(大辞泉)より】





リックはフウタを解放しながら、特徴ある丸眼鏡をくいっとあげるとアイデンティティーについて永遠と語りだした



「そもそもアイデンティティーという言葉は、自己が環境時間の変化にかかわらず連続するものであること、主体、自己同一性本人に間違いないことで、それは身分証明という意味を持ちますが、先ほどヒナタ君が引用して使っ・・・・・」



(げ・・・リックの暴走が始まった!?)



一体彼はどこで息継ぎをしているのか、一息で長々と語りかけてくるリックにヒナタはギョッとすると(これでは、話が前に進まない)と思い、未だ語り続けるリックのうんちくを遮っておそるおそる言った



「あの、リック君!わかった、全然意味も知らない癖にちょっと英語を使ってみたくなったからって、難しい言葉を使ったボクが悪かった!!自分の過ちにもちゃんと気付いたし、話を前に・・・」



「何を言っているのです!?ヒナタさん!まだ 自己同一性とは何か説明を出来てないのですよ!?本当にちゃんとその言葉を理解して使わないと、社会にでてから恥をかくのは貴女なんですからね!?」



(勘弁してくれ・・・)



ヒナタは前回、リックに約2時間程【幽霊と科学的証明】について無理やりうんちくを聞かされた事を思い出し、思わず顔を青くすると「大丈夫、家に帰ってからちゃんと社会や言葉の使い方についても勉強するから!だから今は勘弁して・・・」と力なく言った



「何を言ってるのですか!?」




ヒナタの言葉にリックはクワっと瞳孔を開かせた瞬間、ヒナタの隣にいたルキアは「ひ!?」と悲鳴をあげると、慌ててヒナタにしがみつく



そして恐ろしいものを見るかのようにリックを見て「ね、姉さん!こいつマジ恐ぇしやべーよ!?」と叫ぶとヒナタは「大丈夫、ルキアは私が守るから」と言った



「あのさ、リック!ボクの弟も恐がってるし、もうそろそろ勘弁してくれない・・・?」



ヒナタはルキアを自分の後ろに隠すと、リックは「少年、何も恐れることはありません!」と言って逃げるルキアの腕を無理やり掴んだ



「人間は間違う生き物です!そして、それは正されることによって改善されていくのです!確かにあなたの姉は間違いを犯しましたが、それはヒナタさんが一歩進歩する上で必要な事なのです」



「うわあああッ、恐い!寄るな!手を引っ張るな!?」



「あの・・・まじでルキア怯えてるからそろそろ・・・・・」



本気でリックに怯えるルキアを不憫に思いつつ(こんな時に限って唯一暴走を止められるフウタは寝てるし)⇐【自分がやった】と呟くと、暴走しつづけるリックを見てため息をはく



「うわああああ、顔近づけんな!?気持ち悪い!!」


「少年、いくらヒナタ君の弟といえど【気持ち悪い】は人に対して失礼ですよ!【親しき仲にも礼儀あり】です!あと人と話す時は目を見て話せといわれませんでしたか?」


「わああああッ!?やめろ!!いつの間に俺達【親しき仲】になってんだ!?それにこんな血走った目なんか恐くて3秒も合わせられるか!?」




ヒナタは必死に自分にすがりつくルキアをリックから引きはがすと「はい、これで終わり!」と言って話を切り上げようとした時だった



「ちょっと、ヒナタ君!まだ彼との話あいは終わってないのですよ!」



リックもヒナタに対抗してルキアの腕を掴むと、ヒナタはぴきっと顔に青筋を浮かべると棘のある言葉で言った



「リックくん、ボクの目から見ればこれは話あいじゃなくて【あなたが一方的に】話をしているだけのように見えるんだけど・・・」



ヒナタの言葉にリックは眼鏡をくいっと上げると「ヒナタ君」というと、再び彼は口を開いた




「あなたは一方的だといいましたが、ルキア君は私の話したことに対し反応を示しています。これは、一応コミュニケーションがな・・・・・」





ヒナタはリックが話終える前に、物凄い勢いで彼の顔面を片手で鷲掴みすると、顔を近づけてどす黒い笑顔を向けて言い放つ




「リックくん・・・ボクがこうやって笑ってるうちに暴走を止めてくれない?さっきからルキア、恐がってるっていってるよね・・・」



「し、しかしだな・・・」



それでもまだ、口を開けようとするリックの顔をヒナタは力を入れて掴むと、そこからミシっと音がなるとどうじにフウタ同様リックにも熱い頭突きをお見舞いしながら言った





「煩い!これ以上喋ったら拳を口の中に突っ込むよ!?あんたのうんちくは長い上に疲れるんだよ!!そこまでいわねーと理解できねーのか、この歩くディクショナリー(辞書)が!」




ガンッ




こうして、リックを倒したヒナタは「ぜーぜー」と息をはくと「もう大丈夫だからね、ルキア・・・」と言った



「あ、ああ・・・」


ルキアは真っ青な顔をしてヒナタを見ると(眼鏡より、さっきの姉さんの方が恐かったような気が)と心の中で思うがあえてそれを口にせず、ヒナタから目を逸らした





「で、話はすんだか・・・」





今までのやり取りを黙って見ていたイオスはため息をはくと、呆れたような顔をしてヒナタを見た




「ああ、邪魔のものは排除したしこれであんたとゆっくり話ができるよ!周りの人たちもリックが暴走を始めた瞬間、逃げるように帰ったからね」



ヒナタは不敵に笑うとどうじにイオスの顔が険しくなると、ようやく復活したフウタが起き上がり「痛たッ・・・ヒナタのやつ、ほんと石頭だな」と呟くと、お互い睨みあっている2人を見てため息をはいた




「でも、俺にしちゃあヒナタが女でよかったぜ・・・この前から悩んでたのことが嘘のようにさっぱりしたよ」



誰にも聞こえない程の声でフウタはぼそりと呟くと「俺別に危ない橋を渡ってた訳じゃなかったんだな・・・」と呟いた









--------------------------------





【5年後・・・】







「へえ、シンクレア先輩って初等部からのエリートだったんだ・・・」


フウヤの言葉にグランは納得したようにうなづくと「なあフウヤ、その話フウタ兄さんから聞いたのか?」と質問した


「ああ、まだまだ聞いたぞ!なんせシンクレア先輩は強く、美しく、フウタ兄さんの憧れの人だったみたいだ、告白する前に死んでしまったみたいだけどな・・・」


フウヤはさびしげに呟くと「もし、生きていてくれたらルキアもあんな風にはならなかったかもしれないのにな」と言った



「過去の事をいつまでも振り返っていても何も始まらないだろう」



「あ、イオス隊長」



イオスはため息をはくと「ヒナタ・シンクレアは死んだんだ・・・今俺たちがすべきことは昔話ではなく、メアリー様の保護だ!ロキから徴集がかかった、すぐに用意しろ」と諦めの混じった声で言った


「「ハイッ」」




フウヤとグランは再び背を向け去っていくイオスを見て「・・・ああはいってるけど、シンクレア先輩がいなくなって一番こたえてたのってイオス隊長だったりしてな」と呟く




「ああ、あの時の隊長の荒れ具合といったら手をつけられなかったよな・・・そういやシンクレア先輩がいなくなってからだっけ、隊長が変わってしまったのは」




フウヤとグランは前で歩くイオスの背中を見て、彼には聞こえないようにひそひそと呟くとため息をはいた




その時の俺たちはあの日、ヒナタが生き延びていたことも知らず【迅速の雷鳴術師】は過去の人物になっていた



だから・・・




『誘拐犯?はッ、言ってくれるじゃんか、武器を持って集団で女の子ひとり追いまわすようなやつらに言われたくないね!』


『メアリーを傷つけるやつはボクが許さない!!』




あんな形で・・・しかもよりによって一番最悪な形で再開するなんて、夢にも思っていなかった







【過去という名の迷宮ラビリンス8】へ続く

                                


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