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明日へと続く物語 【番外編】  作者: カノン
明日へと続く物語【番外編】
3/10

過去という名の迷宮(ラビリンス)2

帝国騎士育成校初等部


その中でもエリートクラスと呼ばれるA組に

不愉快な歌声が響き渡っていた




「残っりものには福がある~!ららら~♪」


「はははッ、ヒナタ!その歌何だよ?」


「えっと・・・これは今ボクが創った歌で【残りものには福があるの歌】」


「そのままじゃねーか!」







(うるさいな・・・)





転校生がこの学校に来て1週間が過ぎた


やはり俺の思った通りヒナタというやつは天然な上、能天気な人間で

運が悪く隣の席になった俺はいつもそいつの騒々しさに毎日ため息をはいていた




「転校生、落ち着いてくじすらまともに引けんのか?騒々しくてかなわん!」




そしてとうとう堪忍袋の緒が切れた俺は、転校生に向かって刺のある言葉を投げかけると

ヒナタはきょとんとした顔で俺の方を向いた





「やべ、イオスを怒らせたぞ!?」

「怖えッ!イオスの周りから怒りを通り越し、負のオーラが漂ってやがるぜ!」



まわりの連中が俺から目を背け、逃げるようにして自分の席へと戻っていくが

転校生だけはその場に立ち尽くし、じっと俺を見つめてきた




「何だ?」




穴が空くかという程見つめられギョッとする俺に対し、転校生はなぜかキラキラとした視線を俺に投げかけると、手が握り潰されるかと思うほ程の力で手を取られ、無理やり握手をさせられる形になる




「そういえば、君と話すのは初めてだよね??確かイオス君・・・だったっけ!!」


「あ、ああ」






転校生の唐突な行動に俺は思わず間の抜けた声を出してしまうと

さらにそいつは嬉しそうな顔をして俺の手を掴んだまま上下に振りまわす




「ボク、イオス君とも喋ってみたかったんだ!!でもいつも本ばかりよんでるから話しかけづらかってさ」





「ひー、あのイオスにあんなことがいえるだなんて、さすが転校生!」

「怖いもの知らずだ・・・」




周りのものは、俺と転校生が会話をしていることがそんなにおかしいのか、ぼそぼそと何かを呟きあっている

しかし、噂をされている当の本人は全く気にしてないのか歯茎が見えるほど「にかッ」と笑いかけてくると「よろしくね、イオス君」と言ってきた








(本当に何なんだ・・・こいつは)






俺はヒナタが起こす行動を唖然として見ていたが、まわりのざわめく音にハッとするとジロリと目の前の転校生を見た






(こいつの頭の中はどうなっている!?刺のある言葉をはかれて、周りの奴らのようにおとなしくなるわけでもなく怒るわけでもない・・・それどころか)




笑って握手までされた・・・



(何だ、こいつ!?)





俺は、目の前の転校生が未確認生物に思えてきて冷や汗をかくと「ふんッ」といって繋がれていた手を振り払うと、ギロリと転校生を睨む




「何のつもりなのかは知らんが・・・」




きょとんとした表情で見つめ返してくる転校生を見て(こいつははっきりと言わないとわからないタイプか・・・)と解釈し、俺はめんどくさくなりため息をはく





(あまりこういう事は口にしたくないのだがやむを得ん・・・それにちょうどいい機会かもしれない、これ以上関わられる前にきっぱりと言っておこう



そう思い俺は口を開けると、転校生にとって残酷な言葉を言い放つ



「俺はお前と馴れ合うつもりもないし、関わるつもりもない」




そうきっぱり言い放った時、クラスがどよめくとどうじに転校生の青い瞳が少し揺れた気がしたが

俺はそれを見ないようにヒナタから目を背けた





「話はそれだけか」





俺はヒナタの顔を見ず、再び読んでいた教科書に目をおとす



(ここまで言えば、さすがにこいつでも理解するだろう・・・これでもう俺と関わろうだなんて気は起きないはずだ)


そう思い、ほっと息をはいた時だった・・・







「おい、大丈夫かよヒナタ」




転校生の席の前に座っていたクラスメイトが、同情した表情でヒナタに話かけていた


「え?何が??」


「何がって・・・イオスにきついこといわれてただろ!あいつ、かなりの変わりものだし気にするな!」



(悪かったな、変わりもので)





俺は心の中で悪態をはくと、先ほど引いたくじの紙を広げるとため息をはく



(確かこれで3年間行動を共にするパートナーを決めるといってたな・・・俺にとってはそんなもの不要だし、正直誰となっても構わない)



先ほど教師から受け取った4つに折りたたまれた紙を広げると、そこには【7】という文字が書かれている



俺はちらりとクラスを見渡すと、だいたいのやつらがパートナーを見つけたらしい


一緒になったパートナーと握手を交わしたり、話をしていたりして



パートナーが見つからず、残ったものもあと数名となった



(おそらく残ったものが俺のパートナーになるやつだろう・・・自分からパートナー探そうとは思わないし、教科書の続きでも読むか)


そう思い、紙を再び4つに畳んだその時だった



「なあ、ヒナタお前何番?」


「え、ボク?」


特徴のある奴の甲高い声が聞こえ俺は眉間にしわを寄せると、どくんと嫌な胸騒ぎがした



(あいつも残っているのか・・・・まさか・・・・)


嫌な予感がして、俺は思わず話声の方向を見た瞬間






その予感が的中した










「ボクは7番!でもおっかしーな、7番の人が全然見つからないんだよ」






(最悪だ・・・・・)






俺がぐしゃっと自分のくじの紙を握りしめた瞬間、ヒナタと目が会ってしまい、俺は慌てて目をそらすが

そいつはずかずかと俺の所まで来ると「イオス君は何番?」と聞いてきた







「・・・・・・・・・・・」




バンッ


俺は無言でぐちゃぐちゃになった紙を机の上に置くと、ヒナタはそれをを手に取って紙をほぐしていく



「あ、7番!イオス君だったのか、どうりで見つからないと思った」



先ほどあれだけの事をいわれたのに、ひょうひょうと何事もなかったかのように話かけてくる転校生に俺は唖然としていると


ヒナタはニヤリと笑い、ぼそりと呟いてきた


「残念だったね、気に入らないボクとパートナーになってさ」


「ッ・・・」



こいつ!!


俺は目の前がかっとなってぎろりとヒナタを睨むが、当のそいつは軽く俺の視線を受け流すと、にっこりと笑う


「ま、これから3年間あんたにとっちゃ地獄の毎日になるかもしれないけど、ボクにとっちゃ優等生と噂のイオス君と組めてラッキーだったかもね」



そういってヒナタは不敵に笑うと「明日から楽しみだなぁ」と呟いた





(誰か、嘘だといってくれ!!)







馬鹿で天然で、その上能天気な転校生【ヒナタ・シンクレア】

絶対かかわりあいになりたくない人間・・・そう思ってたのに



俺の願いはむなしく・・・




「という訳で・・・これからもよろしくね、イオス君!」




【ヒナタ・シンクレア】と2人1ツーマンセルのパートナーになってしまった・・・







帝国騎士育成校


その中でもエリートクラスと呼ばれるA組の教室内で

イオスは自分の運の無さを呪うと、大きなため息をはいた





                                             続く



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