過去という名の迷宮(ラビリンス)9
「あはは・・・卒業式の時に冗談で言ったあの話・・・本当になっちゃったね」
「・・・・・」
「何だか昔のことを思い出すね!というわけで、また3年間よろしく!」
「・・・・・ああ」
初等部を卒業してあれから1ヶ月・・・俺は自分の運のなさにため息をはいた
【過去という名の迷宮9】
「またイオスとパートナーになった!?何でまた・・・」
休憩時間、ヒナタは給食を食べながら「知らない、いつの間にか決まってたんだもん」といってフウタのミートボールに箸をつけた
「お前・・・俺の分まで食うなよ!」
フウタは給食を自分の方へ引き寄せると、向こうでひとり給食を食べるイオスを見て言った
「そういやあいつ、いつもひとりで給食食べてるよな・・・友達がいないのか、それともひとりが好きなのか・・・初等部の時、しつこくヒナタが【一緒に食べよう】と誘っても無視だったし・・・本当に変わってるよな」
「そうだね・・・ボク凄く嫌われてるぽかったし」
そう言ってヒナタはイオスをちらりと見ると、早くも半分おかずを食べ終わったイオスと目があい
目があった瞬間彼は勢いよくヒナタから目を逸らすと、再び給食を食べるのに専念しだした
「あれ、今・・・目があったような」
ヒナタは首を傾げると、フウタはスープを飲みながら「きのせいじゃねーの」と呟く
「気のせいかな・・・でも何か言いたそうな顔をしてた・・・ひょっとして、一緒に食べたいのかな?」
「お前初等部の時散々無視されたくせに、よくそういう発想になるよな・・・」
フウタはあきれた顔で「ほんとヒナタもお人よしっていうか、変わってるっていうか・・・どうせあいつ輪の中に入ろうともしないだろ」とイオスの席に向かうヒナタを見て呟いた
「でも、何か言いたげな顔してたしちょっと言ってくるよ!悪い、2人ともちょっと抜けるわ」
「「おう(はい)いってらっしゃい」」
フウタはイオスの席の前に立ち、話をするヒナタを見てため息をはくと
「ほんとあいつ、お人よしだよな・・・」
と呟いた
-------------------
「・・・なるほど、で、戻ってこれなかった訳だ」
「うん、ごめんね!突然ぬけちゃって・・・」
給食の時間はとっくに過ぎ、放課後・・・
ヒナタは帰り仕度をしながら、フウタとリックと雑談していた
「それにしても、ヒナタ君が席についた瞬間説教を始めるとは・・・イオス君も素直じゃありませんね、そんな遠回しなことをしなくてもヒナタ君は彼を誘うつもりだったのに・・・フウタくんといい勝負です」
「はああああ?」
リックの言葉に首を傾けるのとは対象に、フウタはムキになってリックを睨みつけると「何で俺とあいつがいい勝負なんだよ!」と叫んだ
「いい勝負じゃないですか・・・それだからいつまでたっても自分の思いに気づいて貰えないんですよ!まあ、彼女もそうとう鈍いですが・・・このままだといつになっても友達のままで・・・・」
「わーーーーーーッ!ストップ!?リック、これ以上この話をしたらテメーぶっ飛ばすからな!?」
顔を真っ赤にして叫ぶフウタを見てヒナタは首を傾げるが、途中で何かに勘づいたヒナタはハッとした表情をすると、フウタから目を逸らす
「そうだったんだ!フウタ、ごめんね・・・ボク、フウタがそうやって悩んでいたのに今まで気づいてあげれなかったよ・・・」
「「・・・え」」
申し訳なさそうにフウタを見るヒナタを見て、リックは「フウタくん、これはひょっとして・・・」と顔を赤くさせるフウタに耳打をすると、フウタは耳まで真っ赤にさせてヒナタを見た
(くそ、リックがよけいなことをいうから・・・いくら鈍いヒナタでも勘づいちまったじゃねーか!?くそ、明日からどんな顔をしてヒナタと接しれば・・・)
これ以上ない程に顔を真っ赤にさせ、フウタはヒナタから目を逸らしてぎゅっと目をつぶったその時だった
「気づいてあげれなかったボクもボクだけど・・・それにしてもフウタ、水くさいぞ!何で話してくれなかったんだ!?そういうことなら私だって協力したのに!」
「・・・は?」
ヒナタの言葉にフウタはぽかんとしてヒナタを見ると、彼女はさっきの表情とは打って変わってわくわくした表情で楽しそうにいった
「いいなあ、好きな人ができたらきっとドキドキとかして学校が楽しくなるんだろうな・・・フウタに先を越されたのは悔しいけど、そういうことなら全力で応援するよ!!」
「「・・・・・・・」」
キラキラとした表情のヒナタとは対象に、フウタはがっくりと肩を落とすと「お前が余計なことをいうから、ヒナタが勘違いしたじゃねーか!?」と叫んだ
「ヒナタ君・・・鈍いとは思ってましたが、まさかここまで馬鹿だとは思っていませんでしたよ・・・」
リックはそう呟くと、ヒナタは馬鹿という言葉に青筋を浮かべつつも「ひょっとして、違うの?」と残念そうに言った
「うーん、まあ・・・フウタ君が好きな人に素直になれず苦悩しているのはほんと・・・むがッ!」
「テメー!まだ余計な事をいうか!?」
フウタはリックの口を塞ぎ「ごほん」と咳払いをすると「まあ、どちらにせよお前には一生関係のない話だ!先帰ってろ、今からリックと話があるからよ」と赤い顔をして言った
「えー」
その言葉にヒナタは面白くなさそうに顔を膨らますと「いやだ」ときっぱりと答えた
「そう言ってボクを仲間外れにして、2人で【彼女とらぶらぶ作戦】でも練るんでしょ?そうはいかないよ!こんなに面白・・・いや、友人が困ってるのに、ボクもほっとける訳ないじゃないか!」
「言いなおしたが、今面白いって言おうとしたよな・・・お前」
フウタは呆れたように呟くと、ヒナタは「気のせいだよ」といって苦笑する
「それにしても、フウタが恋・・・かあ!フウタの好きな人ってさ、ボク達が知ってる人?」
「「!?」」
ヒナタの唐突な発言にフウタは思わずリックの口をおおっていた手を話すと、チャンスとばかりにリックはフウタから距離を取って「ええ、そうです」と言った
「リック!?テメー!!」
フウタはリックを追いかけようと、走ろうとするが「そうはいかんぞ!?」と叫んだヒナタに羽交い絞めにされ身動きが取れないようにされた
「な・・・離せ!?ヒナタッ/////」
ヒナタの身体が背中に密着し、フウタは顔を真っ赤にさせて悲鳴のような声をあげると「ふっふっふ、観念しな小僧」と後ろからヒナタの楽しそうな声が響いた
「ねえリック!その人ってこの学校だよね!!誰なの?」
「リック!テメーばらしたらマジしばくからな!!」
目の前で攻防を繰り返す2人を見て、リックは苦笑をすると
「悪いけど、それだけは教えられないな・・・でも、ヒントならあげてもいいですよ?」
「ほんと?」」
その言葉を聞き、目を輝かせるヒナタとは対象にフウタは顔を真っ青にさせた瞬間
ガラ・・・
「さっきから騒々しい、何をしているんだ」
イオスはヒナタの顔を見た瞬間、あきれたような顔をして教室に入ってきた
「あ、イオス!帰ったんじゃなかったの?」
イオスは真っ直ぐに自分の机へと向かうと「忘れ物を取りにきた」と言って自分の机から筆箱を取りだした
イオスの登場にヒナタとリックが気を取られている間に、フウタはチャンスとばかりに「この話は終わりだ!」と叫びヒナタの腕を振りほどく
「・・・あ、しまった」
フウタに逃げられヒナタはハッとすると、フウタは怒鳴るようにして叫んだ
「とにかく!ヒナタはこれ以上知る必要もないし、俺も話すつもりはない!?!それとリック!お前ヒナタに話したらマジで口聞かねーからな!?覚えとけ!!先に帰る!!」
ビシャンッ
扉が壊れるかという程、音を立てて教室から出ていくフウタを見てイオスは「何があったんだ」と呟くと、リックは(少しからかいすぎましたか・・・)と反省した
「フウタ、怒っちゃったね・・・それにリックには教えてボクには教えてくれないなんて不公平だよ」
しゅんとして呟くヒナタに対し、リックはため息をはくと「僕も彼の口からは聞いてませんが、あまりにも態度にでてるので気づいたんですよ・・・」と言った
「態度にでてる・・・か、そういわれても全然気づかないし!つか気づくリックが凄いよ」
「あなたが馬鹿で鈍いだけです!普通は勘づくはずです!!」
「何だよ・・・それじゃあ、勘づかないボクが鈍いみたいな言い方じゃんか」と頬を膨らますヒナタを見て(クラス全員にばれてる程、フウヤ君はわかりやすいのに、本人には気づかれないなんて)とリックは思い苦笑すると
「まあ、フウタ君の気持ちに気づいてないのはイオス君も同じですか」
と呟いた
「とりあえず、ヒナタ君にばらしたら口聞かないとフウタくんにいわれましたからね・・・諦めて下さい」
とやんわりと言うリックにヒナタは舌打ちをすると「ちぇ・・・わかったよ!どうせボクは仲間外れですよ・・・つーんだ」と言って、カバンを持ちあげた
「でも、ボク達が知ってる人なら、ばれるのも時間の問題だと思うけどな!!イオスも気にならない?フウタの好きな人が誰なのか・・・」
「全くもって興味もない!くだらん、帰る」
イオスはあきれたようにそう言い放ち、教室から出て行くのを見て、ヒナタは
「イオスってほんと、色恋沙汰に無縁って感じだよね・・・以前にそのことに関して興味が無いっていうか、鈍そうっていうか」と呟く
それを聞いたリックは苦笑しながら
「確かにそうですね、彼意外にモテるのに堅いから・・・それにあなた同様鈍そうですし」と言った
それを聞いたヒナタはムッとして「鈍くないし」と言うと、少し悔しそうな顔をした
「でも、イオスがモテるなんて初耳かも!なんか、それを聞いて敗北感を感じたよ・・・ボクなんて彼氏はおろか、告白すらされたことないんだよ・・・イオスの癖に生意気」
そうぼやくヒナタを見て、リックは
「ひょっとして、ヒナタ君!他のクラスの一部の女子があなたを嫌っていた理由・・・わかってなかったのですか!?」といってあぜんとすると、ヒナタはきょとんとした顔で
「は・・・?」
と声をあげた
「【は・・・?】てひょっとして気づいてなかったのですか?よく他のクラスの女子に呼び出されたり、【イオスに近づくな!】て言われていたじゃないですか!」
「うーん・・・そういやイオスとパートナーになり始めた頃、そんなことがあったような・・・なかったような・・・」
ヒナタはしばらく、考えるように顎に手をあて考えるようなしぐさをすると、ぴんときたのか「あ、あの時か!」と叫んだ
「あれ、イオス関連だったの!?靴箱の中に手紙が入っててその場所にいったら【目ざわりなんだよ!】と言って突然喧嘩売られたんだ!あの時はよく漫画の展開である【転校生いびり】かと思ってたのだけど、違ってたんだね・・・」
その言葉を聞き、リックは苦笑をして
「さすがヒナタ君ですね・・・それではB組の女子が教室に乗りこんでくる事件はどう解釈していたのですか?」と問いかけると、ヒナタは気まずそうな顔をして口を開けた
「あの時は【イオスに近づくな!】てあまりにもB組の人が必死にいうからさ、偏屈なイオスとパートナーになってしまったボクの身を案じて言ってくれてると思って
【ありがとう、心配しなくてもイオスが十分に変な奴だって知ってるし、何とかやっていくよ】
といったっけ・・・あれ、間違って解釈してしまったんだね・・・」
その言葉にさすがのリックも苦笑を通り越し、あぜんとすると
「何故あなたはそう変な方向に解釈をするのですか・・・」と呟いた
「なるほど・・・それじゃあ、あの時ボクの体操服がなくなったのも、歩いていたら消しゴムが飛んできたのも、くつの中にマキビシが入っていたのも、お弁当のおかずだけ食べられたのも・・・廊下にバナナが落ちていてそれを踏んだ私が転んだのもそういうことに繋がっていたのか・・・くそ、イオスめ!自分の女達の不始末に私を巻き込みおって・・・」
「いや、バナナを踏んで転んだのは、あなたがただドジなだけで彼女達とは何も関係ないと思います・・・それに女達の不始末って・・・・・これじゃイオス君が酷い男のように聞こえますよ!」
ヒナタにそう言われ、リックはイオスを不憫に思っていると
「でもさ、今思うと突然他のクラスの人達がA組に来なくなったよね・・・何でだろ」とヒナタに問いかけられる
「ああ、イオスとあなたがぶつかった日があるじゃないですか・・・【中庭破壊事件】!あれを見てあなたに喧嘩を売ろうと思う人はまずいないでしょう・・・本当にヒナタくんは、鈍いっていうか・・・馬鹿っていうか・・・」
「んだと、リック?1度ならず2度も馬鹿っていったな!?」
「正確にはこれで3回目です」
「煩い!何で数えてんだよ!?私に喧嘩売ってんのか!?」
ガンッ
ヒナタはリックに頭突きをくらわし、気絶をしたリックを見てため息をはくと
「リックの言う通り、友達の変化に気づいてあげられなかった私って鈍いのかな・・・」と呟いた
「それにしても、好きな人ねえ・・・今のボクには想像もつかないし、考えられないや」
そして、気絶をしているリックを除き、誰のいない教室でヒナタはもう一度ため息をはき
「いつかボクも、フウタのように誰かに恋をして・・・そうやって悩む日がくるのかな」
と呟くと、リックを肩に担ぎあげると保健室へと向かった・・・
そんな彼女が恋に落ち、それを自覚するのは
5年後の話・・・
続く・・・