不合格
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合格者の番号が書いてある板が、職員の手によって、壁にあるフックへと立てかけられた。
俺はその板を端っこから順に追っていった。そして、俺の番号のひとつ前の番号を一番下に見つけ、すぐさま、その横列の一番上へと目を移した。
しかし――そこに自分の番号は無かった。
愕然として、自分の番号は頭に叩き込んでいるはずなのにもう一度、鞄から受験票を取り出して、見た。
やはり、俺の頭の中にある番号と同じだった。
横にいた同じ学校の友人が「あった! やった!」と声を上げ、その隣にいるもう一人の学校の友人と颯爽と事務室前へと書類を取りに行った。
取り残された感じがあった。周りの人々は歓喜の声をあげ、泣いたりしている人もいた。
一人だけ、別世界にいるようだった。
この人たちは受かっているというのになんで泣いているのだろうか……?
疑問は雲のように流れていった。
泣きたかった。だが、耐えた。
泣いた方が悔しさも飛ぶ。しかし、人の前では泣きたくなかった。
そして、帰りのバスを待っている時間や、バスに乗ってからの間にはもう、涙が治まっていた。
学校に報告しなければならなかった。
その道中、報告して帰ってきたであろう友人が自転車に乗って、此方へと向かってきた。
その友人は俺のその様子から察してくれたのか、何も聞いてはこなかった。
それだけでも、少し救われた。だが、その後、同情されることが一番恐かった。
学校について、武道場へと行った。
そこには合格して嬉しそうな同級生達がいた。走り回ったり、皆、楽しそうだった。
その輪に俺は勿論、入ろうとは思わなかった。
家に帰り着き、親に申し訳ないと思った。
親は私立で頑張ればいいと、言ってくれた。
――さて、ここで俺からの質問だ。てめえは本当に公立に行きたかったのか?
行きたかったに決まっているさ。
――だったら、なんで泣かなかったんだ?
俺も泣きたかったさ。だが、周りに嬉し泣きしてる奴らがいるんだぜ? 居心地悪いに決まってる。
――お前は全てをパーにしたんだ。合格する為の塾。合格する為の参考書。合格する為の勉強。合格する為の時間。合格する為のお金。全て。
ああ。全てをパーにしたさ。“合格する為に”の目的だけはな。
――? それ以外に理由なんて無いじゃないか。お前は将来の為に勉強したとそう言いたいのか? そんなものは綺麗ごとだ。努力は必ず報われる。そう思っていたのか? お前は。
いや、努力が報われない人はたくさんいる。だけど――
――「だけど」なんだよ。
周りで努力してきた奴らが落ちてるのが気にくわねぇ。俺はそこそこの勉強しかしてきてないって自負してる。だから、不合格なのは自業自得なのかもしれない。だがなぁ……一日中、寝る間も惜しんで勉強してきた奴が落ちるのは気にくわねえんだよ!
――自分のことはどうでもいいと?
ああ。
――それこそ、綺麗ごとだ。
綺麗ごとだとしても、俺は――努力と比例しない世の中なんて認めやしない!
――現実とはそういうものだ。
分かってる。だけど、それでも――――それに縋りついて行くしか――
――前には進めないんだ。