迫り来る炎の中に見た。
半世紀にわたり共に歩んできた愛妻との、凄惨な老老介護。その果てに燃やした居間で待っていたのは、安らかな死でも、救いでもありませんでした。
炎の中で笑っていたのは、妻の皮を被った「ナニカ」。
長年愛した存在の恐ろしい真実と、絶望の火の海で繰り広げられる最後の抗いを描いたダークホラーSFです。日常の裏に潜む歪んだ愛と異形の恐怖を、どうぞ最後までお楽しみください。
深夜3時、老老介護の果てに居間へ火を放った。激しく燃え盛る黒煙の向こう、畳の上で横たわっていたはずの妻がゆっくりと立ち上がる。
炎の中で骨が軋む音を立て、彼女は笑っていた。
「ありがとう。これでやっと、あなたの肉体を奪えるわ」
迫りくる炎の中に見たのは、半世紀連れ添った愛妻の皮を被っていた、人ならざるナニカの真の姿だった。視界が真っ赤に染まる中、そいつは火をものともせず、僕の体を乗っ取るために歩み寄ってくる。
【了】
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
半世紀の介護の結末が「炎」と「異形による肉体の強奪」という、あまりにも救いのない形での開幕となりました。長年連れ添った妻の皮を被っていたナニカは何者なのか、そして炎の中で主人公はどのような運命をたどるのか。
愛と絶望、そして怪異が交錯する物語を、引き続き楽しんでいただければ幸いです。評価や感想などもいただけますと、執筆の大きな励みになります!




