第4話 聖女の微笑み
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声のする方を振り向くと、
そこには眩いばかりの美少女が立っていた。
ミルクティ色のふわふわの髪。
ぱっちりとした蜂蜜色の瞳。
整った顔立ち。
エレノアが高嶺の花のような美しさなら、
リリアはどこか親しみやすい、可憐な印象の少女だった。
「やあ、リリア。」
リリアは屈託のない笑顔を浮かべながら近づいてくる。
そして俺の腕を掴み、上目遣いで言った。
「レオニス、これから時間ないかな?
よかったらお茶しない?」
リリア。
この物語のヒロイン。
確かに可愛い。
容姿もまさにヒロインそのものだ。
だが――。
ヒロインって、こういう感じなのか?
俺は一応、この国の王太子だ。
普通はもう少し礼節というものを気にするんじゃないのか?
俺はふと、そんなことを考えた。
それに――
この屈託のない笑顔。
親しげな態度。
その姿は、前世の元彼女、梨香子を思い出させた。
梨香子も、こうやって笑いながら近づいてきた。
純粋そうな顔をして。
そして俺は、その笑顔にまんまと引っかかった。
別に、リリアが梨香子と同じタイプとは限らない。
なんと言っても彼女はヒロインだ。
本当に純粋無垢な少女なのかもしれない。
それなのに――
俺はリリアを、素直に受け入れることができなかった。
梨香子に似ているからか?
それとも、別の何かか。
うまく説明できない。
だが――
所謂、男の勘。
いや、元ホストの勘というやつだろうか。
俺は、リリアを警戒した。
そんな様子を見て、ルシアンが言った。
「相変わらず、リリアはレオニスしか目に入らないんですか?
僕達もいるんですが。」
少しおどけた口調だった。
「あっ、ごめんなさい。そんなつもりは……。
でも、私ったら。」
リリアは頬を赤くした。
その様子にアルベルトは愛想笑いを浮かべ、
カイルは怪訝そうに、どこか不快そうな表情を浮かべている。
「えっと……皆さんもよければ、ご一緒しませんか?」
リリアは慌てて付け足した。
俺は冷静に、攻略対象達の反応を観察する。
カイルはリリアに関心がない。
いや、むしろ少し嫌悪しているように見える。
アルベルトは特に好意的でも嫌悪でもない。
ルシアンは――
若干、好意的か。
「レオニス、だめかな?」
リリアはさらに距離を詰めてきた。
その瞬間。
俺の腕に柔らかい感触が触れた。
リリアの胸だった。
確かにこんなことをされたら、
王太子とはいえ思春期の男だ。
普通なら、少しは心が揺れるかもしれない。
だが、、、。
俺は生憎、元ホストだ。
女のそんな仕草一つで落ちたりはしない。
その時だった。
「リリアさん、はしたなくってよ。」
凛とした声が響く。
「殿方にベタベタするなど、淑女として感心いたしませんわ。」
エレノアだった。




