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玉座の間

「……まさか、こんなにも早く城の中に入れるなんて」

「はわぁ、ドキドキするねぇー!」

「二人とも、そう硬くならずに。別に怒られるわけじゃありませんからね」

「いやぁー、硬くもなりますってー。玉座の間ですよー?」


 明朝、城下街に戻ってきたボクたちを待ってたのはアルマセイカ隊長だった。

 そもそも彼女がボクたちを待ってるだなんて考えもしなかったから驚いたのだけど、『第一隊長が呼んでいるので玉座の間まで来てください』と言われたときはもっと驚いてしまった。

 玉座の間。名前の通り王が座る玉座がある部屋。つまり国王がいらっしゃるということで。

そこにはこの国最古の騎士、ウァナヴェル騎士団第一隊長のヤヨイザクラ隊長も居て王を守護しているという。

この国の騎士となったからには一度は入ってみたい部屋であるのは間違いないけれど、こう、あまりにも早すぎると怖くなるものなんだなー。


「はわぁ、ヤヨイザクラ隊長の鎧ちゃんと筋肉……どんな感じなのかなぁ。サワサワしたいよぅ!」

「ナナナ……絶対にサワサワしちゃだめだよー?」


流石にやっていい時とダメなときの区別くらいはついて……や、一昨日アルマセイカ隊長のビキニアーマーに釣られそうになってたなぁ!


「さわ、さわ……? なるほど、ソマリウレノさんから聞いた通りの鎧マニアですね。あの方も快く触らせてくださるとは思いますが、まあ、威厳というものがありまして。ワタシでよければ、後で好きなだけ触らせてあげますよ」

「へぁ!?」


 驚きの言葉に変な声が出る。

 この人、案外フレンドリーなの!?


「はわぁ! ホントですかぁ!? サワサワー!」

「あーとーでーって言ってるでしょー!? ストーップストーップ! ……本当にいいんですかアルマセイカ隊長!?」

「まあ、減るものではありませんからね……それと、『アルマ隊長』で構いませんよ」


 ……フレンドリーだ! この人フレンドリーだ!


「はわっ、アルマ隊長……! 良い人だぁ!」

「……さあ、話をしていたら着きましたね。この扉の向こうが玉座の間です。早速入りましょうか」


 ナナナがヒヤヒヤさせるからせっかくの城の内観をじっくり見れなかったけれど、建物の作りがしっかりしているだけで豪華絢爛というわけではないようだ。この扉だって鉄製の武骨なもので……。


「……失礼いたします」

「ぬわぁぁぁぁ! また負けそうじゃわいのおおおおおおおおおぉぉぉぉおうッ!!」

「…………」


 アルマ隊長がスッと扉を閉めた。

 え? さっきのはなに?? とんでもない叫び声が聞こえたんだけど。


「…………失礼いたします」

「ぬおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!! また王手ッ!! まだじゃわいのう! 我はまだ詰んでおらん……!」

「とっくに詰みだぞ……」

「……ヤヨイザクラ第一隊長。来客ですよ。一度入りなおしたのに何事も無かったかのように続けないでください」


 ……玉座の前で王様とちびっ子が将棋やってるーーーー!?

 あ、ちなみに将棋というのは、ヤヨイザクラ隊長のルーツであるトウグニシマという北東にある島国で作られたゲームで……うん、こんな風に説明してないと冷静になれないよ、ホントに。


「わっはっは! すまなんだ! もう一戦くらいできると思っておったら長引いてしまってな!」

「主に悪あがきのせいだけどな……というか、一昨日もそれで迷惑かけていただろ」


 王様が深くため息を吐いている。近づいてみるとその顔色が悪いように見える……もしかしてずっと付き合わされてた??


「あーあー、聞こえなーい……さて、新兵よ! 我こそがウァナヴェル騎士団第一隊長のヤヨイザクラ・ハルマチじゃわいのう!」


 ハルマチ。魔王を倒した『美輝刃』ハルマチ・サクラとファミリーネームが同じなのは偶然ではなく、彼女が英雄の娘だからだ。

 ヤヨイザクラ・ハルマチ。御年九十歳と聞いているが、どう見ても十歳いかないくらいにしか見えない外見だ……あと、王様への態度がすごい。悪い意味で。


「はわぁ! すごい! 下は見たことのない形をしている鎧ちゃんだー!」

「ふっふっふ、これはふんどしと言うんじゃわいのう」


 ヤヨイザクラ隊長のビキニアーマーは異様だった。胸部を覆う部分はアルマセイカ隊長と変わらないが、股を隠す部分は布のようなもので出来ていたからだ。


「ベルハちゃん見て見て! 筋肉も凄いよっ! バッキバキだぁッ!」

「わっはっは! じゃろじゃろ? これが九十年の鍛錬の成果よッ!」


 一見すると細い身体に見えるが、身体の全てが筋肉なのかと思うほど引き締まっていて。

 明るい雰囲気を纏っているが、ただものではないことがすぐにわかる。

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