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生きてる

「つっかれたぁ……」

「はわぁ……すっごい初任務だったねぇ」


 副隊長やラミルたちがドラゴンと闘った場所から意識不明者を運んで。

 今はナナナと二人で馬車の荷台で揺られている。

 そう、二人で……ラミルは気づいたらどっかに行ってたし、アルマセイカ隊長は『走った方が速いです』なんて言いながら城下街へと帰還していった。

 ……いや、自由か! 片や騎士たる自覚がない奴! 片やバケモンみたいな奴! 個性豊かな騎士団ですこと!


「ねー、ドラゴンと闘ったり、怪我人を運んだり……それに」


 死体も運んだ。


「……ラミルちゃんが闘った場所、焦げ臭い匂いが凄かったねぇ」

「……ね」


 あまりその話題に触れたくないのか、そもそも興味が無いのか、ナナナは思い出すようにそんなことを口にした。

 ……たしかに炎の魔法を使うドラゴンはいたようだ。いや、疑ってたわけじゃないけれど。

 ……焼死体なんか初めて見たなぁ。


「……ねぇ、ベルハちゃん。あのとき、アタシを護ろうとしてくれてありがとね」

「……ナナナこそ、ボクを護ってくれた」

「「……でも、二度とやらないでね」」

「「……あははっ」」


 寸分違わず声がハモった事に思わず笑って……その笑い声すらハモる。


「……はぁー、生きててよかったぁー!」

「うん、よかったよかった!」


 犠牲がある以上、こんな風に笑ってちゃいけない、なんて言う人もいるかもしれないけれど……今この場にいない人のことを考えても仕方ない。

 ボクたちは笑顔を浮かべて抱き合った。


「はぁー、生きてるーー!」

「うんっ、生きてる生きてるっ! ベルハちゃん、あったかいねっ!」

「ん……ナナナも、あったかい」


 今は鎧じゃなくて布の服を着ている。だからこそ、ナナナの温もりが伝わってきて……。

 腕を離すとナナナの可愛らしい顔が見える。

 瞳の中の十字架にはまだ慣れなくて、ボクの知らないナナナがいるようで少し寂しさを覚えるけれど。

 夕暮れに照らされて、その微笑みが絵画のようにも見えて。

 こんな絵画だったら全財産を投げ出してでも買っちゃうなぁ、いや、それよりもそのお金で本物のナナナと食べ歩きでもした方が楽しいかな、なんて考えが頭の中でグルグルと回る。

 ……恋人に適した身長差は十五センチだと聞いたことがある。

 ボクとナナナはちょうど十五センチ差だ。百七十七センチと、百六十二センチ……ナナナが上で、ボクが下。

 どうやら十五センチというのはハグやらキスやらがしやすい身長差らしく、なるほど心地良いわけだ。

 ……でも、ボクがナナナの恋人になることはないだろう。

 ナナナは何よりも鎧と筋肉を愛しているし、それに……。

 ボク自身がそうなりたくないから。


「……はわぁ、眠くなってきちゃったぁ」

「ん、それじゃ、寝よっかー。ボクたちは今日すっごく頑張ったからねー。この時間に寝ても誰も文句は言わないよー」


 荷台に積まれてあった毛布を一枚取ってナナナと一緒に包まる。


「えへへぇ、そうだよねぇ! はぁー、ちょっと小さいけどヌクヌクだぁー!」


 小さいからもう一枚、と言われないことにほんの少し安心しつつ、ナナナに肩を寄せる。


「それに、お日様の香りー……今日は良い天気だったからねー」

「はわぁ……村に居た頃を思い出すねっ。まだ三カ月しか経ってないけど、懐かしいや」


 二人で毛布に包まって寝る。ここ三カ月は寮の一人部屋で寝ていたからか、ベッドの上よりも心地良く感じて。


「うん、懐かしい……って、喋ってたら眠れないよねー?」

「んー、アタシはベルハちゃんと話せるなら寝るのも我慢するよぉ?」

「だーめ、我慢なんかしないでゆっくり寝なー。ボクも寝るからさー」

「はわ、わかったぁ。それじゃ、おやすみ、ベルハちゃん」

「……ん、おやすみ。ナナナ」


 ナナナの肩に頬ずりをして、目を閉じる。

 ──今日は久しぶりにぐっすり眠れそうな気がする。

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