回復神法
「──二人でッ!」
「力を合わせればッ!!」
「ぐッ!!」
そしてボク達の視界に入ったのは、解放段階六の鎧を着た二人組の騎士と、苦戦するライドさんの姿だった。
「ベルハ……ッ! お前が魔物というのは本当だったのかッ!」
「信じたくないけど、そうなりゃ殺すしかないじゃんねッ!!」
「……あぁ」
覚える必要がなかったから名前は出てこないけど、一緒にトランプをした第一隊員だ。
「よぉ、苦戦しているようだなぁ兄弟ッ! どんだけぶっ殺したッ!?」
「仕方ねぇだろッ! 思ったより人間の数が多くてよ……半殺しが精々だぜッ!」
魔族達に応戦する者、戦意を喪失しているもの、四肢を欠損している者……。
ライドさんが言う通り、隊員の数が想定よりも多い。
……これは、第二隊員と第三隊員も居るな? また反ベルキアの洞窟への遠征に行っただなんて、嘘っぱちだったんだッ!
「オーガが二体、転移魔法使いが一体か……全力でかかるぞ、ルャギ!」
「りょッ!!」
ルャギ、と呼ばれた隊員とその恋人である隊員がレブドさんとライドさんに斬りかかる。
「ははッ! 一対一で俺らが負ける道理は……ねぇッ!!」
「ぶっ殺すぜぇぇぇぇッ!」
「あ、ヤバ……ッ!?」
「ルャギッ!? ……ちぃッ!!」
ライドさんがルャギの剣を弾き飛ばし、その胸を蹴り上げる。
ソレに動揺した隊員も剣を弾き飛ばされ……るが、レブドさんの腹に回し蹴りをくらわせるッ!
「ははッ! なかなかやるじゃねぇかッ! 殺し甲斐があるってもんだッ!」
「おいおいッ、大丈夫か兄弟ッ! すぐ助太刀してやる……よッ!」
「あ、ああああああああああアアアアアアアアアぁぁぁぁぁぁぁァァァァッ!!」
ライドさんが倒れたルャギの腹を踏みしめる。
何かが潰れる音と共に絶叫が響く。
「ルャギッ!!」
「心配すんな、お前もぶっ殺してやるか……な、なんだッ!?」
天から、何かが降ってきた。キラキラと光るコレは、雨なんかじゃなくて……ッ!
「神法ッ! 『ヒーリング』ッ!!」
「──アレ? あーし……そうだ、あーしはまだ死んでられないッ!」
「うおッ!?!?」
──パァンッ!!
音と共にルャギがパージしてライドさんを吹き飛ばしながら立ち上がるッ!
……は? 完全に内臓潰れてたでしょ? あ、有り得ないって……ッ!
「ルャギッ! こ、これは……ッ!?」
「──見事ですッ! ルャギさんッ! 小職達もいきますよッ!」
「「イェスマムッ!!」」
……は? 見間違いじゃ、ないよね?
五体満足のデミルエミル副隊長とそれに続く二人の隊員……片方はボクと同じ新兵で両脚を失ったはずのセラスじゃないか!
それに、気絶してた隊員たちも次々に起き上がって……ッ!!
四肢を欠損してた者さえ……ッ!
「おいベルハッ!! 信じたくはねぇが、とんでもねぇ回復女がいるようだッ! ソイツをぶっ殺すか足止めしねぇと埒が明かねぇぞッ!」
「コイツらの相手は俺らがやるッ! 無理をしろとは言わねぇが、頼んだぜッ!」
「う、うんッ!!」
神法使いということは、ビキニアーマーだ。ボクがどうこうできる相手じゃないと思うけど、ここは大きく頷く。
「ははッ! ありがとなベルハッ! 俺らの願いを叶えてくれてよぉッ!」
「俺ら、今最高に楽しんでるぜッ! それじゃあなッ!」
まるで今わの際のような言葉を述べながら、大勢の騎士と交戦を始めるライドさんとレブドさんの背を一瞥した後に、ボクは回復神法使いの元へ走る。
「──うふふっ、さあ、魔物達ッ! 回復神法使いは此処ですわよーッ!!」
同じく回復神法使いを殺しに来たであろう魔族を大槍で薙ぎ払いながら優雅に笑う長身のビキニアーマーが一人。
光を放つが如く眩い金髪は左右に結われていて。その黄金の鎧を引き立てる褐色の肌はまるでアイツを思い起こさせる……ま、まさかッ!?
「ワタクシはベルキア王国第一姫、ロマリエレナ・ベルキアッ! さあ、この首、獲れるものなら獲ってごらんなさいッ!」
眼にも止まらぬ速さで魔族達を蹂躙するロマリエレナ。
国を代表する、しかも主戦力の隣国の姫がこんなところにッ!?
たしかにラミルエルデの『ねえさま』に興味があるとは思ったけど、思ったけど……ッ! こんな形で会いたかったわけじゃないッ!!
「あら、貴女が噂の半人間? 自分の生に絶望して自暴自棄になったおバカさんッ!」
「……ッ!」
気づけば目の前に彼女が居て。ボクは咄嗟に蹴り上げようとするけど、容易に回避される。
「うふっ! つくづくおバカさんですわねッ! そんな攻撃、当たりませんわよッ!」
笑いながら振り下ろされる槍を転移魔法で回避し、もう一度転移魔法を使うッ!
「ニョロさんッ!! 目の前の女にッ!!」
「了解ニョロッ!!」
呼び出したニョロさんは即座に、広範囲に電撃を放つ。
光の如く迅速なソレは流石に回避できない……はずッ!
「うふふっ、おーっほっほっほッ!! 受けて……立ちますわッ!!」
すると、ロマリエレナは槍で電撃魔法を薙ぎ払って……。
優雅に一回転し、槍の先端から電撃を放ったッ!
「ベルハちゃん、危ないニョロッ!!」
「ッ!! ニョロさんッ!」
ニョロさんがボクを庇うように前に立って拡がる。
「大丈夫っ! 電撃魔法使いは当たり前のように電撃耐性を持ってるニョロ!」
「うふふっ、魔物同士の絆ってところかしら? 反吐が出ますわねッ!!」
「……ベルハちゃんッ! ここはニョロに任せるニョロッ!」
「や、そういうわけにはッ!」
「さあ、魔物共ッ!! 桜のように乱れ地れぃッ!」
「ッ!」
さっきまでライドさんとレブドさんが闘っていた方向からヤヨイザクラの声が聞こえる。
そっか、『あの砂』がある場所に移動できるなら、すぐに城へ戻れるよね。
もうダメだ、詰んでる。
泣きそうなボクの心を反映するように、今頃になって雨が降る。
どうせボクだけ生き残ったって意味ないから、ここでみんなの援護をした方が……。
「ベルハちゃんッ! 君には母親がいるニョロッ! ニョロたちにはわからないけど、親子にも絆ってヤツがあるんだニョロ!?」
「……ッ!」
「五月蠅い魔物ですわねッ! 邪魔ですわよッ!!」
ロマリエレナの猛攻を防ぎながらニョロさんは言う。
親子の絆……そんなモノはボク達にはない、と思ってるけど。
そう言われると、無性にママに会いたくなって。
「さあ、行くニョロッ!」
「うん、ありがとうッ!」
「こちらこそだニョロッ! それじゃあね! ベルハちゃんッ!!」
この後、ニョロさんは確実に殺されるだろう。けど、ボクは転移魔法を使ってサウカロ村へと向かった。




