宴会
「──おうっ、お帰りっ! その顔は……三人とも合格だったんだな!?」
「ええ、バッチリ合格してきました!」
「ボクは結構危なかったですけどねー、あはは」
「はわっ、でも合格は合格だよぉ!」
「はっはっはっ! そうかそうか! ……おーいみんなァッ! 騎士様三人がお戻りだぞぉーッ!」
門番のおじさんの呼び声に住人達がみんな駆け寄ってきて。
あらゆる祝福の言葉をボク達に捧げてくれた。
「ヒイロっ! おめでとうぅー! よかったわね、本当によかったわねぇ!」
レオナマインおばさんが涙ながらにヒイロを抱きしめる。
「ナナナー! お帰りなさいっ! アナタにとって良い結果になったなら良かったぁ!」
「うんっ! ホントに嬉しいよぅっ!」
ノノカクラネおばさんがナナナと抱き合う。
……と、なると、ボクも。
ちょっぴり期待しながら周囲を見回すと、ママが家から出てきて。
「ベルハぁぁーーー! よかっ、ホントによかったぁ……! ああ、よかったぁっ!」
「ちょっ、ママー!?」
強い強い強いっ! 想像してた倍以上に抱きしめる力が強いって!
たしかに期待はしてたけどさぁ!
「アナタは理想の娘よッ!」
「ちょっ、ママ……! そこまで言われると恥ずかしいったら!」
「ふふ、本当に、よかった……」
ヒイロたちの抱擁は終わったようで、気づけば彼女が涙ぐんで此方を見ていた。
いや、ヒイロだけじゃなくて、他の村人に、ナナナも……!
やだ! ナナナには年上のお姉さんっぽいところを見せたいっ!
「も、もうわかったから、ね? 一旦落ち着こ? その、続きは家でいくらでもされるから……いや、されたいからさ」
「……ええ、そうねっ!」
そう言って、ママはようやくボクから離れた。
これはこれで寂しいって言うのも、複雑な娘心だね。
「ははっ、今日は宴会だっ! 食べて飲むぞっ!」
「はわっ、ごっはん、ごっはんー!」
「ええ! じゃんじゃん食べていってちょうだいっ!」
「や、アンタが主催じゃないからねっ!? 主役ではあるけどさーっ!」
ヒイロにツッコミを入れつつ、ボクも村中のめでたい雰囲気に包まれて笑う。
「──ははっ、やっぱりカナネさんのところのパンは美味しいねぇ! 出来立てだとまた格別だわっ!」
「ベルハちゃーん、ギリギリで合格したんだってぇ!? いいじゃねぇか! ギリギリを生きるっつーのも、なんつーか、いいもんだよなぁ!」
「はは……」
「こぉら、アンタ! 主役のベルハちゃんに迷惑かけてんじゃないよ! ……さ、ベルハちゃん、ナナナちゃん達のところに行っておいで!」
「ありがとうございまーす!」
べろべろに酔っぱらった服屋のおじさんを、その奥さんがとっちめる。
ボクはありがたくナナナの元へ向かっ……。
「あっ、ベルハちゃんだぁー! んーっ!」
ボクを見るなり、キスしようとしてくるナナナ……この娘も酔っぱらってるー!
「ちょっ、ナナナぁ……人前でマズいってばぁ、そうじゃなくてもお酒の勢いでそういうことするのはよくないよー」
「あははっ、ごめんね、ベルハちゃん! ナナナったら調子乗って一気にお酒を飲んじゃって」
「これはこれで可愛いですけどねー……だからやめなってー!」
ちなみに、誰でもいいというわけではないみたいで、ノノカクラネおばさんかボクにしかしてこない。ちょっと優越感を感じる。ふふん。
「あら、ベルハはお酒、飲んでいないの? キス魔になった二人が大変なことになるところ、見たかったのに」
「冗談言わないでよ、ママ……」
そう、ボクも酔うとこんな感じになるらしい。十七歳の誕生日のときにナナナにキスをせがんでヒイロに止められてたんだって。
ヒイロに強く感謝することがあるといえば、コレだね。
まあ、そんなことがあったって聞いてから、ボクはお酒を飲まないようにしてる。
ナナナも同じだったんだけど、お祝いの雰囲気に当てられて飲んじゃったのかな。可愛いねぇ。ホント可愛い。女神様も認める天使だよアンタは。
「ねぇ、ベルハちゃーん! んー」
はぁーー、そんな可愛い顔を近づけられたら我慢できなくなっちゃうよぉぉー!!
「ごめんねベルハちゃん、しばらくお水を飲ませておくから」
「や、ノノカクラネおばさんが謝ることじゃないですからー。じゃあボクは……」
ヒイロとでも話そうかな? 今日なら自慢話も聞いてあげないでもないよ。
「……おぉーいっ! モブゴブリンが二匹出たぞー! お楽しみのところ悪いが手伝ってくれっ!」
「……こんなときに、空気が読めねぇ魔物だなぁ!」
門番のおじさんの声が宴会場に響き、人々は傍らに掛けてあった農具やらを持ち出す。
「──ギギャギャー!」
「おうっ、悪いな! 力を貸してくれッ!」
「もちろん!」
二匹のモブゴブリンの攻撃を剣でいなしてるおじさんに村人が加勢する。
「よくも楽しい雰囲気をぶち壊してくれたなクソ魔物めッ!」
「死にやがれッ! ふてぇモブゴブリンがッ!」
「この、この……ッ!」
ボクも鎌で応戦して……。
「私に任せなさいッ! 『着装』ッ!」
それぞれのモブゴブリンを囲んで村人全員で袋叩きにしているときに、ヒイロの声が響いた。
彼女の髪の色と同じ紫色を基調としたフルアーマーの姿になって、モブゴブリンの前に立つ!
……そうか、ボク達はもう騎士団員だから、『着装』できるんだ!
「ちゃ、『着装』ッ!」
そう叫ぶと……気づいたら鎧を装着していた。
これが……審議の鎧!
「てえぇぇぇぇいッ!!」
ヒイロがどこかから持ち出してきた剣をモブゴブリンに振り下ろす。
モブゴブリンの抵抗……パンチも鎧に弾かれ、その頭がかち割れる。
よぉし、ボクもやるぞぉ!
「みんな! 下がってて! てりゃああぁぁ!」
モブゴブリンのパンチをガントレットで弾いて、顔面を思いっきり蹴りつけて……そして、倒れたところを首を切り裂いたッ!
「やるわねっ、ベルハ!」
「ヒイロこそ! てかその剣はどうしたのさー?」
「うふふっ、デルタベシアお兄さんからコッソリ買ってたのよ!」
「ああ、あの人か……」
妙に納得した。基本的に騎士しか使っちゃダメだもんね、剣。
「ヒイロちゃんもベルハちゃんもやるなぁー! おじさんたちも負けてらんねぇな!」
「なぁに馬鹿な事言ってんだいアンタ! 騎士様には逆立ちしたって勝てっこないさ! さ、二人とも、着装解除したら服が入用になるだろ? ウチの商品を持ってっておくれ!」
「え、いいんですか!? ありがとうございます」
「ありがとうございまーす!」
助かったー! このまま全裸になるかと思ったよー!
「……この死体はどうすっかな」
「またいつものところに置いとこう。気づいたら消えてるさ」
おじさんたちがモブゴブリンの死体の処理について話し合ってる中、ボクは騎士としての初戦闘にテンションが上がってる。
「ベルハちゃーん! ヒイロちゃーん! みんなー!」
今頃になってナナナが駆け寄って来る。
ああ、来るのがもう少し早ければカッコいいところを見せられたのに。
「ナナナー、酔いは覚めたー?」
「えへへっ、まだちょっと頭がふわふわしてるけど、大丈夫だよっ! 魔物が出たー! って聞いたら一気に覚めちゃってっ!」
「わはは、ナナナちゃんも立派な騎士になりそうだなぁ!」
「……じゃ、ヒイロちゃんとベルハちゃんはウチの服屋に来ておくれ。初めての着装だ。鎧を維持するのもしんどいだろう?」
「……あ、たしかに」
「言われて、みたら……!」
さっきまでテンションが上がっていて気づかなかったけど、ボク達の息は不自然なほどに上がっていて。
……って、このままだとみんなの前で裸を晒してしまう!
「行こうっ! ヒイロ!」
「ええ……! そうねっ!」
ボク達は急いで服屋へ向かった。




