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試験

「今年も落ちたらどうしよう、今年も落ちたらどうしよう、今年も落ちたら……ッ!」

「はわ……何か声を掛けた方が良いかな!?」

「や、そっとしとこう」


 城下街の広場で、ヒイロが同じ言葉を繰り返している。

 それを心配するナナナと、放置するボク。どっちの方が彼女にとって優しい選択なのかな? ボク、少し冷たすぎるような……。

 でも、ここで声を掛けようものなら逆ギレされると思うし……うーん。


「──各人、村ごとに整列しているな? では、ただいまより入団試験を行う」


 ボク達の前に表れたのはビキニアーマー……や、それに加えて上胴と腰回りの装備を装着している女性だった。

 燃えるように紅いミドルヘアと、それに対照的な青い瞳。紅を基調にした鎧に青のアクセントが効いた鎧。露出された部分は鍛え抜かれていて。それでも、女性的な柔らかさと美しさは健在で……綺麗な人だと思った。少し雰囲気が険しいけども。


「ソマリウレノさん……!」


 さっきまで壊れていたヒイロがウットリとした声を挙げる。

 そっか、この人が……ボク達が受かったら教官になる人か。


「はわぁ、素敵な鎧ちゃんと筋肉……!」


 ナナナもウットリとした声を……ちょっと待って? この村だけ変な雰囲気になってないよね?


「周知の通りだが……騎士団の入団試験だからと言って体力や測ることはしない。ソレは後からいくらでもついてくるものであるし、健全なウァナヴェル人であれば、そこそこの体力は既に身についているはずだからだ」


 ボク達に限らずウァナヴェル人は子供の頃から農作業の手伝いを行っている。一部の例外を除けばソマリウレノさんの仰る通りだと言えるね。


「……全てはこの鎧で決める。女神様が御用意された、『審議の鎧』でな」


 ボク達の前には銀色の鎧がズラリと並んでる。

 女神様が用意した鎧、とは聞くけれど、実際はどんな感じで出来上がるんだろう?


「それでは、全員、鎧に触れろ。女神様に認められれば、ソレはお前たちに合わせたカタチとなる。二分以上経っても反応が無い者は不合格とする」


 その声を受け、ボク達は『審議の鎧』に触れる。


「わ、あ……!」


 遠くの方から声が聞こえる。早速鎧に選ばれたみたいだ。

 続々と聞こえる驚愕と歓喜の声。


「……あ。やった! やったわっ!」


 それは隣からも聞こえてきた。

 ヒイロ……選ばれてホントに良かったね。


「残り一分!」


 その声にやや諦めのような気持ちが沸き上がってくる。

 みんなもう選ばれてるんだ。今から変化なんて……。

 それに、ナナナだって選ばれてな──


「はわっ!?」


 ……え。

 思わずボクは横を見た。

 ナナナの鎧が変化している。

 ……そんな。ボクの鎧はまだ何も変化していないのに!


「ベルハちゃん、頑張れっ!」


 ナナナが小声でボクを応援する。

 が、頑張れって……こんなの、頑張りようがないじゃないか!


「ぅ、ぅぅ……!」

「残り三十秒!」


 止まない歓喜の声と、一部から聞こえる溜息。もしかしたら野次馬の声も混じってるかもしれない。

 それらがこんなにも重圧になるなんて考えもしなかった。

 ウソ、このままだとナナナと一緒に騎士団に入れない……?

 いやだ、そんなのいやだ!

 ボクはナナナと片時も離れたくないのに……ッ!


「残り十秒」


 だから、だから女神様、お願いします!

 ボクを、ボクを、選んでください……ッ!

 ボクは……ナナナと、ずっと一緒に居たいんです!


「……わ」


 らしくない祈りが通じたのか、ギリギリになってボクが触れた鎧が変化する!


「……終了!」

「……お、おぉ!」


 ボクが触れた鎧は黒く染まって形状が変化した後、粒子となって……ボクの身を包んだ。


「まず、鎧に選ばれなかった者たちへ。年齢さえ上限に引っかかっていなければ、是非また挑戦してほしい。既に来年度の受験申し込みもアチラで受け付けているのでな」


 その言葉を受けて二、三十名ほどの女性たちがソマリウレノさんが指さした方へと進んでく……中には泣いている人もいた。

 もしかしたら、ボクもあの中に……そう考えると喉がゴクリと鳴った。


「そして、選ばれた者たちへ。おめでとう、諸君らは今日から騎士団員だ……と、言ってもまだ三カ月の訓練が待ち構えているがな」


 隣からヒイロの嬉しそうな声が聞こえる……念願だったからなぁ。ボクもナナナと一緒に騎士団に入れて嬉しいよ!


「……ここまで来ておいてまさかいないと思うが、合格を辞退する者は後ほど私に申し出るように。騎士団は去る者を追わないが、退団後の鎧の着装と再入団は断じて認めん。深く考えて行動するように」


 そう、再入団は認められない。

 だからこそ、ナナナが合格した時点で、ボクは何としてでも合格しなければならなかった。


「訓練は一週間後に始まる。各自準備し、またこの広場に集まること。それでは、解散ッ!」

「……やったわね! 私たち、三人とも合格よ!」

「うんっ! やったやった!」

「あはは、ヒイロが合格して良かったよー。ホントに安心したー」

「うふふっ、ありがとっ! 本当は一年目の貴女達が合格しているのが少し悔しいけれど……それは言いっこなしよね。今日は沢山喜びましょっ!」


 少しだけ表情に陰りが見えたヒイロだったけれど、すぐに満面の笑みを見せる。

 本人に直接言うことか? とは思うけど、言わなきゃどっかで爆発するんだろうし、今こうやって笑い合えてるなら、どうだっていいや。


「はわぁ、三人で合格出来てホントによかったぁ」


 脱力したような声で改めてそう言うナナナ。

 ……うん、ボク達。合格したんだ。

 これからも、ナナナと一緒に居られるんだ。

 そう考えると口端が緩むのを止められない。


「さっ、早く村に帰りましょっ! みんなに報告しなきゃっ! ……あ、その前に城下街土産を買っておいた方がいいかしら!?」


 ヒイロ、わかりやすくテンションが上がってるなぁ。前回は土産なんて買ってこなかったでしょアンタ……でも、そうやって少し冷静になれてるなら安心だよ。


「うんうんっ、お土産買って帰ろーっ! アタシ、お饅頭を買いたいなぁ!」

「あらっ、それじゃあ私はケーキにしようかしら!」

「それじゃ、ボクは何かしょっぱいものでも買って帰ろっかなー」


 和気あいあいとした空気を楽しみながら、ボク達は城下街で買い物をして、村へと帰った。

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