ぎゅぴーーーーーーーーーーーーーっ!!
「──ふぅ」
「はわー、汗を洗い流すときって気持ち良いよねぇー!」
「うん、サッパリするよねー」
なんて中身の無い会話をしながら、身体を洗い流す。
「えーいっ! ……はわぁー、やっぱりお風呂は最高だよぉー!」
「こらー! お湯がもったいないし危ないから跳ぶなっていつも言ってるでしょー!」
浴槽にジャンプして入るナナナ……すっごく揺れてた。口ではこう言ったけれど、毎回やってほしいもんだね。好きな娘の乳揺れなんてみんな喜ぶんだから。
……少し前に、揺れてるとき痛くないのか聞いたらもうとっくに慣れたと答えられた。
ホントかどうかは確認しようがないけど、痛くないなら毎回やってほしいもんだね。好きな娘の以下略。
「はわぁ、ごめんなさーい! ベルハちゃんも早く入ろうよぉー!」
「ホントに反省してるー? ……はー、気兼ねなく足を伸ばせるって最高だよねー。デルタベシアお兄さんには感謝しなくちゃー」
「えへへっ、そうだねー!」
村のお風呂は少し前まで縦長のお風呂だった。一人ならそこそこスペースがあって、二人ならだいぶ窮屈なくらいの。
けれど、デルタベシアお兄さんが火を近づけると温かくなる岩を大量に仕入れて安値で売ってくれたおかげで、広々とした岩風呂が出来たワケだ。
「でも、アタシは前みたいにくっついて入るのも好きだったな! こーんな感じでっ!」
「わわっ!?」
ナナナに前から抱きしめられる。
ぎょえーーーーーー!!!!!!!!
たしかに前はこんな感じで入ってたけれどっ!!
こーんな広い浴槽でピッタリくっつくって!! 抱き合うってっ!!
ぎょえーー!! ぎょえーーが過ぎるって!!
ダメだってこんなのっ! 勘違いしちゃうでしょっ!?
ナナナの『好き』はきっと家族愛みたいなものなんだろうけれど、ボクのソレは違うんだってっ!
「えへへ、ベルハちゃん、ヌクヌクだぁーー!!」
「あ、あはは、そうだねー! ナナナもヌクヌクだよー!」
辛うじて返事をするけれど、もうヌクヌクを超えてアツアツだって! 暑すぎるって!
「……ベルハちゃん、アタシね、この日常が大好き。小麦のお世話をして、パンを食べて、寝て起きて。何よりもベルハちゃんが傍に居てくれて」
「……ナナナ」
おそらく茹蛸のようになっていたであろうボクの頭が少しだけ冷やされる。
ボクだってそうだ。この日常が何よりも愛おしくて、幸せだと思ってる。
「アタシ、騎士にはなりたかったけれど、ベルハちゃんと少しでも離れるのは嫌だったんだぁ! だから、ね? 一緒に試験を受けてくれるって言ってくれて、本当に嬉しかったよ! 来年は、絶対に一緒に受かるか落ちようねっ!」
「……うん、約束するよ」
アンタがそう言ってくれるなら、ママと喧嘩した甲斐もあるってもんだね。
「えへへっ、約束っ!」
「わ、わわ……っ!?」
ぎゅーーーーーーっ!
そんな音が聞こえてきそうな勢いでハグが強くなる。
ぎゅぴーーーーーーーーーーーーーっ!!
だからダメだって!! わざとやってんのこの娘!? いや、意思をもって抱きしめてくれてるんだろうけど!!
こんなことヒイロとか他の人にもやってたら、ボク、病んじゃうからねっ!?!?
「……ね、ベルハちゃん、キミからも、ぎゅってして?」
んぎゃぴーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
こんなことまで言われて理性が崩壊しないボクを誰か褒めてほしい!! いや、とっくに崩壊してるんだけど、襲わないという意味でねっ!?
「ぎゅ……ぎゅーーーーーっ!」
あまりの暑さにへにゃへにゃになりながらも、なんとかナナナを抱きしめる。
いいの!? ホントにいいの!? 今のボクは魔物に近いよっ!? このままじゃナナナが危ないんじゃないっ!?
ピピーッ! 興奮罪でボクはボクを逮捕するっ!! って、何考えてんだボクはーー!?
「えへへ、あったかいね……」
「ベルハちゃん、アタシ、キミのことが──ベルハちゃん!?」
「……へー?」
あれ、ナナナは何を言おうとしてたんだー? てか、鼻の辺りが熱いぞー?
「ベルハちゃんっ! 鼻血っ!!」
「……わ、ぁぁーー」
下を見るとナナナの胸の上にボクの血がポタポタと落ちていて。
ああ、汚しちゃって申し訳ないなぁ、なんて考えながら。
ボクは……。
「ベルハちゃんっ! ベルハちゃんっ!!」




